阿寒の森で見られる代表的樹種は、
何と言っても、トドマツでしょう。
トドマツは、日本では北海道だけで生育。
海岸近くから標高の高いところまで分布し、
広葉樹やエゾマツなどと主に混交林をつくります。
北海道では最も多く見られる樹種で、
天然林と人工林を合わせると、
北海道内総蓄積の約4分の1を誇り、
針葉樹だけの蓄積なら約半分を占めるとか。
つまり、トドマツは、阿寒、というより、
北海道を代表する樹種なんですねえ。
森を歩いているとき、
トドマツの葉っぱをちぎって香りをかぐと、
スッキリ爽やか、思わず深呼吸したくなるような、
得も言われぬ素晴らしい香りがします。
そんなトドマツの天敵は、強風ときのこ!です。
冬に台風並みに発達した低気圧がもたらす強風は、
森のトドマツを根こそぎ倒してしまう凄まじさ。
生きた木に寄生して養分をちゅうちゅうするきのこは、
真綿で首を絞めるようにトドマツの命を縮めます。
しかし、別の考え方をするなら、
強風もきのこも森の活性化に役立っています。
いわゆる「間引き」が行われるために、
大木亡き後に次世代の樹木が育っていくわけで。
自然のメカニズムは素晴らしいっすねえ。
さて、今回ご紹介するきのこは、
トドマツの天敵、その名もトドマツ癌腫病菌です。
名前からして、もう……(笑)。
トドマツ癌腫病菌は、初夏から秋にかけて、
トドマツの幼齢木の、幹、枝、倒木の表皮に発生。
ときに、天然生成木の樹幹や枝にも見られます。
きのこは短い柄を持った杯状〜皿状で、
外側は白色、内側は黄橙色。
群生〜散生します。
「お皿」の経は0.5〜5mm、高さは0.2〜1mmほど。
小さなきのこですが、鮮やかな色なので目立ちます。
トドマツオオアブラムシの集団寄生、
樹皮が傷ついたときなどに発生(発病?)します。
食不適。
なんせ、小さいっすから。
いくら集めても食べた気がしないでしょうね(笑)。
ちなみに、写真をご覧いただくと、
小さな黄色いきのこの周りに、というか、樹皮全体を、
緑の植物のような物体が覆っています。
遠くから見ると、トドマツの模様のように思えますが、
これは、植物と菌類の共生体である地衣類です。
この生体や形状がまた、面白く、興味深いのですが、
詳しくお話するのは、また、別の機会にでも。