今回ご紹介するツキヨタケは、
日本でいちばん、と言えるほど誤食が多い、
毒きのこの中の毒きのこだと言えましょう。
とはいえ、何を隠そう、
ぼくはこのツキヨタケが大好きなんです。
食べるのが好きなのではありませんが……(笑)。
例年であれば、10月中旬になると、
阿寒湖の紅葉がほぼ最盛期を過ぎ、
東北地方の北部、あるいは山間部の紅葉が、
見頃になってくるので、ぼくは、
北海道から東北地方へと移動します。
まず、真っ先に向かうのは、
青森秋田県境に広がる白神山地。
森の主役は、もちろん、ブナです。
阿寒の常緑針葉樹林に慣れた目からすると、
はらはらと葉を落とす落葉広葉樹の森は、
とても新鮮に感じるんですよね。
二兎を追うものは一兎も得ず、ではありませんが、
白神山地の紅葉とツキヨタケの時期はややずれていて、
紅葉最盛期の森を堪能しようとすると、
ツキヨタケの最盛期には少し遅いんです。
ですから、毎年、
ピチピチのツキヨタケとはあまり出会えないのが、
ちょっとだけ残念なんですよね。
いつかじっくりと撮影したいと思っています。
なんせ、ツキヨタケ、という名の通りに、
夜に発光するきのこなんです、これが!
さて。
ツキヨタケは、夏から秋にかけて、
ブナなどの広葉樹の倒木や枯木から発生。
多数重なり合っていることもしばしばです。
傘は半円形〜腎臓形で、長径10〜25cm。
最初黄橙褐色でやや濃色の小鱗片がありますが、
成熟すると紫褐色〜暗紫褐色となり、
ややロウ状の光沢を帯びます。
傘の肉は厚くて白色です。
ヒダは淡黄色のち白色で、幅が広く、
柄に向かって長く伸びています。
暗いところで目を凝らすと、薄っすらと、
蛍光色に発光するのが確認できます。
柄は太く短く、傘の真横に付き(まれに中央にも)、
ヒダの付け根との境目に隆起した不完全なツバが。
シイタケ、ムキタケ、ヒラタケに似ているので、
これらと間違えて誤食してしまう例が多く、
2023年も10件以上の中毒が報告されています。
食後30分〜1時間ほどで、
嘔吐、腹痛、下痢など胃腸系の中毒を起こし、
ひどい場合には痙攣や脱水症状が出て、
ときに死亡することもあります。
ツキヨタケの特徴としては、
柄の肉の内部に暗紫色〜黒色のシミがある、
とされていますが、不明瞭な個体もあるので、
やはり、要注意です。
同定に自信のないきのこは、
自分で食べないのはもちろん、
絶対に人にあげないようにしましょう。