もしかしたら、今回ご紹介するきのこが、
写真のどこに写っているのかわからない、
という方がいらっしゃるかもしれません。
写真のまん真ん中に写っている、
真っ白な物体がきのこなんです、はい。
雪とトドマツの葉っぱを除けば、
きのこは真ん中に写っている白いやつに違いない、
などと、消去法できのこの見当をつけた人は、
なかなかするどいですな(笑)。
ちなみに、真ん中の白いきのこの上にある、
茶色と深緑色が混じったようなものは、
おそらく、落葉ではないかと思われます。
さて。
きのこがどこに写っているかを確認したところで、
このきのこ(回文だ!)の名前が、
マツノネクチタケだと思い出してください。
漢字で書くと、松根朽茸。
そう、きのこが生えている黒っぽいものは、
トドマツの倒木の根っこの部分なんです。
まあ、雪に覆われちゃっているので、
何が何やらわかりませんよね。
マツノネクチタケは、トドマツやエゾマツなど、
針葉樹の根本や根の上から発生します。
年々大きく成長する多年生のきのこなので、
春夏秋冬、1年中見ることができます。
きのこは形が定まらず、
幅5〜18cm、厚さ0.5〜2cm。
表面はビロード状、無毛で、環紋とシワがあります。
初めは黄褐色〜赤褐色で、
古くなるにつれ汚栗褐色〜黒色に変化します。
背中の部分で、基物とくっついているので、
見えている表面部分から胞子を放出します。
よく見てみると小さな小さな孔がたくさん。
マツノネクチタケは生きている木に寄生して、
根株心材部を白色糸状に腐らせていきます。
腐朽材は年輪に沿ってはがれるようになり、
さらに腐朽が進むと、海綿状に。
かつての調査によれば、
雌阿寒岳山麓にある雌阿寒温泉付近において、
トドマツでは200本中53%が、
アカエゾマツでは100本中20%が、
マツノネクチタケの腐朽木だったとか。
樹木が枯死することはないみたいです。
食不適。
まあ、固くて、とてもじゃないけど、
食べられるようなきのこではありません。
食べないで姿を愛でましょう、
と、言いたいところですが、
まあ、こんな形のきのこなので、
じっくり観察しようと思う人は少数でしょうねえ。
そうそう、阿寒湖周辺でいうと、
樹木が倒れてしまう原因の第一は、風です。
しかも、台風ではなく、
真冬に低気圧がどんどん発達して、
ものすごい嵐になるんですね、これが。
毎年、春になると、新たな倒木のために、
森の様相が結構変わるんですよ。
自然の力、恐るべし。