不正解、食べられません!
カバノアナタケ食不適

川のせせらぎ、木々の葉を揺らす風、鳥の鳴き声、
小さな音が集まって存在感を増す虫の羽ばたき……。
森は、大小さまざまな音で満ちていますが、
自然が奏でる音は、基本的に心地よく感じます。

阿寒の森の素晴らしいところは、逆に、
まったく音が聞こえない体験もできるんです。

自 然の音のことを書きましたが、
それに加えて、科学の発達によって、
日常生活ではいろいろな人工音も確実に聞こえます。
そう考えると、無音なんて、逆に、
人工的にしかつくりだせないと思うほどです。

無音は、冬の積雪期に、森へ入ると体験できます。
もちろん、たまに、遠くの国道を走るトラックの音や、
飛行機が飛ぶ爆音が聞こえてきたりもしますが、
それをやりすごすと……。
……。

まるで雪に包まれるとでも言うか、
夜ならば星が流れる音が聞こえてきそうなほど、
まったく音がしないんです。

街の監視カメラが放つ音ですら聞き分けるような、
神の領域に達する耳を持つ知り合いのピアニストが、
阿寒の森の無音に、心の底から感動してました。

冬は、きのこファンにとっては不毛の季節ですが、
冬ならではの森歩きの楽しさがあるので、やはり、
森へ出かけてしまうわけです。

「旬」のきのこが少なくても、
我々には1年中姿が見られるかたいきのこがあります。
氷結した阿寒湖のほとりに生えている、
太いダケカンバに、きのこ発見!

写真ではわかりづらいかもしれませんが、
ほぼ真ん中に写っている、雪まみれの、
焦げた跡のようなひび割れた黒い塊が、きのこ。
カバノアナタケです。

カバノアナタケは、
シラカンバ(白樺)やダケカンバ(岳樺)などの、
樹幹から発生します。
カンバ類の穴から発生することが名前の由来です。

幹上に10〜20cmときに50cmにもなる菌核を形成。
表面は黒色で石炭状、内部は黄褐色で木質。
子実体は背着性、つまり、背中で基物とくっつき、
淡褐色〜褐色で、樹皮下に形成されます。

枯枝や折れた枝から侵入し、
幹の心材部を広い範囲で白色腐朽させるので、
いわば、シラカンバ類にとっての、がん、ですな。

食不適。

まあ、表面はかたいし、中はぼろぼろ崩れるし、
食用にはとても向きません。
でも、生命の神秘を考えるにはいい教材かと。

それにしても、
きのこそのものの音を楽しむことは、
今のところ、まだできていませんが(笑)、
広い世界では、
きのこに電極を刺して電気的信号を計測したら、
まるで言葉のようなパターンがあり、
きのこが会話をしているのではないか、
なんていう研究も進んでいるらしいです、はい。

このコンテンツでは、
				きのこの食毒に触れてますが、
				実際に食べられるかどうかを判断する場合には、
				必ず専門家にご相談ください。