幸災楽禍(こうさいらくか)という言葉があります。
意味は、他人の不幸を喜ぶこと。
あまり褒められたことではありませんが、
フィールドを歩いていると、
そんなシチュエーションにも遭遇するわけです。
森を歩くのはとても気持ちいいですよね。
いわゆる、森林浴ってやつで、
健康を維持しつつ、心も平穏になります。
この効果をもたらすのが、木々が発散する香り、
フィトンチッドだと言われています。
フィトンチッドとは、植物が傷ついたとき、
菌やウイルスの侵入を防ぐために放出する、
殺菌力がある揮発性物質です。
つまり、樹木に襲いかかった不幸が、
人に癒しや安らぎを与える、と……(笑)。
蜜の味、ならぬ、爽やかな香りです。
そして、そして、ぼくは、今回ご紹介するきのこ、
ブナハリタケの不幸を待ち侘びているんです……。
なぜなら、粘菌のブドウフウセンホコリは、
このブナハリタケを好物としているから。
ブナハリタケは、ある日突然、
橙色でネバネバで血管のような姿の粘菌に覆われ、
どんどん食べられてしまうのです。
(周囲を悲鳴代わりの悪臭が漂います)
そして、数日後、「ネバネバの血管」は、
ブドウの房のような姿(子実体)に大変身!
ブドウフウセンホコリの経過観察をすると、
粘菌という単細胞生物の生の営みに、
生きものの不思議さを感じずにはいられません。
ブナハリタケがどろどろに溶けているのに!
さて。
前置きが長くなってしまいました。
きのこの話をします!
ブドウフウセンホコリは、もとい(笑)、
ブナハリタケは、秋に、ブナなど広葉樹の、
倒木や枯死部に重なり合うように発生します。
傘はおおまかには半円状で、径3〜10cm、白色。
上部は平滑で、下面は白色の針が無数に密生。
水気に富んだ柔軟な肉質です。
食。
香りが強く、そのため、常に小さな虫が、
付いたり、周囲を飛び回ったりしています。
そのため、食べるときには、
茹でこぼしや、塩漬けなどの手間が必要なようですが、
お味はなかなかよろしいとか。
ぼくはブナハリタケを食べるつもりはないので、
見つけたら、ブドウフウセンホコリの発生待ちです。
他人の不幸は蜜の味、なんて言葉を、
しみじみと思い出しながら……。