さてさて。
写真をもう一度じっくり見てみてください。
何というか、きのこの写真なのですが、
とても情報量が多い写真ではないかと。
この木は北海道を代表する樹木、トドマツです。
表面をびっしりと緑色の物体が覆っています。
「きのこの話」の読者なら、もうおわかりですね。
そう、菌類と藻類の共生体、地衣類です。
(樹木に寄生しているわけではありません!)
このトドマツの表面をじっくり観察してみると、
付着している地衣類は少なくても5種類以上。
ルーペを使うと地衣類の複雑さがよくわかります。
家主である菌類部分と共生している藻類部分が、
はっきり分かれて見えたりします。
あと、きのこの上の方に、大きな穴がありますが、
これは、日本最大のキツツキ、クマゲラの食痕。
穴を縦に長く大きく空けるのがクマゲラの特徴です。
大きく頭を振って嘴をがんがん突き刺して穴を空け、
樹木の中にいる昆虫などを捕食した跡ですね。
ただし、キツツキが穴を空けたせいで、
このトドマツが枯れてしまったわけではありません。
木を枯らしたのは虫や微生物などで、キツツキは、
そこに虫がいるから食べに来ているわけです。
そして、もちろん、
この写真を見たきのこファンは、
ハナビラタケを注視するわけです、はい。
ハナビラタケは、夏から秋にかけて、
針葉樹の根元、あるいは、切株から発生。
立枯木とはいえ、幹から発生しているのは、
ちょっとだけ珍しいかも。
きのこは径10〜30cmと、けっこう大型です。
白色〜クリーム色のうねりくねった花びら状薄片が、
無数に集まったような塊です。
根元は太く短く、まれに長い柄状に。
ひらひらの花びらの裏側から胞子が落ちますが、
本質的には裏表の区別はないのだとか。
針葉樹の地中の根の傷から侵入して、
根の芯材を腐朽させ、さらに上方に向かい、
樹幹芯材部を褐色立方状に腐朽していきます。
食。
さっぱりとした風味、茎ワカメのような歯切れで、
山と溪谷社「日本のきのこ」解説子によれば、
ぬたや和物、ピクルス、強火の炒めものがいいとか。
ぼくは、もっぱら、見て写すのみですが……。
それにしても、地衣類はいいですよね。
真冬のきのこロスを埋めてくれるだけではなく、
枯木も美しく彩ってくれるし、なにより、
きのこと同じ菌類だし。
今年は、さらに、地衣類を見つめたいと思います。