糸井 |
このあいだ、NHKで、大貫さんが、
アフリカのハイエナについて力説するのを
見ていたんだけど、あれはよかったなぁ。
ぜひ、今日も語ってほしいくらいです。 |
高畑 |
ぼくも、動物番組とかで、
そのへんの事情をよく見てるんですけど、
ぜひ、それは聞いてみたいです。 |
糸井 |
あの話、してよ! |
大貫 |
いやぁ……。 |
糸井 |
大貫さんが自分で思っている以上に、
すごくおもしろいよ。 |
大貫 |
うーん。
ハイエナは、ほんとに忌み嫌われていて、
どうしていつも悪者になっているのかと
思っているんですけど。 |
糸井 |
「ゴミを漁って笑ってる」みたいな
イメージで、語られてますよね。 |
鈴木 |
無茶苦茶ですよね、あれは。 |
大貫 |
そもそも、どうして動物を
悪いやつといいやつにするのかというのが
ありますけど。
それはそれとして。
ライオンは確かに、
人間ぐらいしか天敵がいないから、
ふだんも、足をこんなに開いて、
お腹を出して寝てますけど、
ハイエナのために、ぜひ言いたいのは、
「自分で狩りをしないで
落っこちているものだけを
食べているような生きもの」
ではぜんぜんない!ということです。
どちらかと言うと、ライオンが、
ハイエナの倒したものを横取りするというのが、
半分ぐらいはあります。
それで、ライオンもうまく生きていける。
ハイエナがいるから、
ライオンも生きていられるんですね。
ハイエナは、写真家や研究者の間で、
ほんとうに人気が高いんです。
ものすごく変わった動物なんです。
言えないようなこともいっぱいあるけど。 |
糸井 |
それ、何?
あとで教えてね(笑)。 |
大貫 |
たとえば、
オスとメスを見分ける場合、
体の部分では、ある1カ所ですよね。
ところがハイエナの場合
メスにも見た目は、同じものが付いている。
子どもを生んだ時、乳房が大きくなって、
それでメスだとわかるんですけど。
でも、メスの方が体が大きいので、
それもひとつの目安ですが。
それから、とにかく
においの動物で、
においをおたがいに嗅ぎまくるのは、
ほんとにすごい。
とにかくおもしろいんです。
どうして、
ハイエナに興味を持ったかというと、
その前に、ライオンをずっと
観察していたんですけれど、
ライオンとハイエナはとにかく仲が悪いんです。
ハイエナのことをきちんと見ないと、
ライオンのことはわからないので、
次の仕事の時は
ハイエナをぜひ観察させてほしいと、たのみました。
そしたら、ハマってしまって。 |
糸井 |
(笑)いいなぁ、この話。 |
高畑 |
音楽家としては、
ハイエナって、声悪いですよね。 |
大貫 |
声、いいですよ。
ものすごく色っぽいです。
エッチに近いですね、ハイエナの声は。
声の表現の種類がとにかく多いんです。
少なくとも、30種類以上の声がある。
それが、色っぽく感じるんですよね。 |
糸井 |
(笑)そうなんですか? |
大貫 |
ライオンよりも、ずっと色っぽいです。
夜のアフリカは真っ暗じゃないですか。
その夜に、ハイエナの
「キッキッキ!」というような声が
遠くから聞こえてくると、
なんか、ゾッとして、いい感じです。 |
糸井 |
(笑) |
大貫 |
だから、じっと、聞いてるんです。
闇の中の声を、耳をとぎすませて。
他にないんですから、たのしみが(笑)。
狩りをすると、ハイエナは、とにかく、
興奮して、キーキーうるさいんですよ。
あまりによろこびすぎて、
その声でライオンが来ちゃうの。 |
糸井 |
(笑)ハイエナって大きい? |
大貫 |
大きいですよ。
オスは体長110センチくらい。
メスは120センチ。
メスのほうが大きくて強い。
メスが実権を握っているんです。
いちばん強いメスから生まれた子どもが、
群れの中ではいちばん位が高いので、
成獣のオスよりも、その子どものほうが、
ちっちゃくても地位は上なんです。 |
糸井 |
それだけ詳しいのは、すごいなぁ。
ハイエナだけでも、こんなにあるんだよ。
これは、大貫さんに、
音楽、頼みたくなるじゃないですか。
やっぱり、大貫さんに頼んでよかった。
このハイエナの向こうに
広がる景色だとか、光だとか、
それを見た人と見てない人には、
すごい差があると思うよ。 |
大貫 |
今回のイメージソングは
いろいろ制約もあったので、
さらに時間があれば、
もっとできたと思うけれども
いまこれを
アフリカに持っていって聴いても、
少なくとも違和感のあるものではない、
っていう風に思っています。
アフリカには、いっぱい、
いろいろな音楽を持っていったんです。
CD、かけてみるの。
……合わないのが、あるんですね。 |
糸井 |
ある、ある! |
大貫 |
東京だったら、すごくいいのに、
アフリカの平原では、
見事に合わない曲が、あります。
すごくダサく聴こえたり、とか。
やっぱり、音楽の内包しているものが
大きいものじゃないとダメみたいですね。
それがなんか、アフリカで聴いて
「いいな」と思える作品の共通項じゃないかなぁ。
ちょっと、しゃべりすぎちゃった。
『キリク』の話を、してください(笑)。
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