糸井 |
その、たけしさんの視点っていうか、
お客さんへの意識っていうのは
おもしろいですねぇ。
そこは漫才をやってたころから
ずっと変わってないわけですね。 |
たけし |
ウン。だから、なんていうんだろ、
客いじりって、
マァ、あんまりやっちゃいけないんだけど、
お客ってすごい変なところがあって、
「オマエなんかいらねェんだよ」って言うと、
笑うときあるじゃない。
「今日の客は、せこい客だな」って
悪口言えば言うほど笑う、みたいな。 |
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糸井 |
うん、うん。 |
たけし |
それは、
笑わせる自信があるから言えるんだけど。
たんに「なんだ、コノヤロー」に
なっちゃマズイわけで。 |
糸井 |
ああ、つまり、お客さんとの関係性ですね。 |
たけし |
そうそう。
だから、映画もそうで、
観てる人と映画の状態がよけりゃ、
どっちに行ってもうまくいくんだけど、
失敗すると、つーっと離れる。 |
糸井 |
それは、やっぱり、
いったん両者が外れると、
外れっぱなしになるんですか? |
たけし |
なる。なるなる。
戻しようがなくなるときがある。 |
糸井 |
それは、つくってる自分だけの力じゃ
なんともなんないんですか。 |
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たけし |
なんともならないネェ。
なんだろうねェ、アレ。 |
糸井 |
はーーー、そういうもんなんだ。
だってさ、映画って、何ヵ月も、
へたしたら何年もかけて、
じっくりとつくってるわけだから、
途中で、おかしくなりそうだと思ったら、
「ちょっとこうしておこうかな」って
やればできそうな気がするんですけども。 |
たけし |
ウーン‥‥。 |
糸井 |
できない? |
たけし |
アタマっから撮り直しだね。
やるんだったらね。 |
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糸井 |
はーー。 |
たけし |
映画撮ってて、途中まできて、
「オイ、マズイぞ、変な方向行ってる」
って思って、
「こっちこっちこっち」って直すとさ、
観てるほうにも、その
「マズイマズイ、こっちこっち」がわかるから。 |
糸井 |
ああ、なるほどね。 |
たけし |
だから、そういう目で観てると、
「あ、直しやがった」
っていう映画は、あるのね。 |
糸井 |
バレちゃうんだね。 |
たけし |
ウン。バレちゃう。
だから、オレは、わりかし、
変な方向行っても、
そのまま行っちゃおうっていう。
修正すると、逆にヤバいなってとこもある。 |
糸井 |
つまり、こういう作品もあります、
って考え方をするわけだ。 |
たけし |
ウン。
直したいっていや、
微妙に直したかったりもするんだけど、
「もーいいや」っていうのが、ある。 |
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(つづくぞ、コノヤロー) |