糸井 |
どうとでもとれるようにつくった
『アキレスと亀』ですけど、
観た人の感想としては
どういう声が多いんですか。 |
たけし |
ウン、いまんとこ、夫婦愛が多いの。 |
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糸井 |
ああ、やっぱりラストですよね。 |
たけし |
そーだね。
「ラスト泣きました」って言う人が多いから。
「ありがとうございます」って思うんだけど。 |
糸井 |
後ろ姿がいいんですよね。
後ろ姿って、やっぱり強い。
どんな顔してるか、わかんないぶんだけ、
観る側の「オレの気持ち」が入りますよね。 |
たけし |
ウン。想像させるから。 |
糸井 |
そうそうそう。 |
たけし |
それはね、オレの映画って、みんなそうだね。
言葉が少ない。ぜんぶ想像させる。 |
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糸井 |
うん、うん。 |
たけし |
説明すればするほど、客が離れる場合あるから。
あの場面でもね、
カメラが、前に回った瞬間に、客離れるから。 |
糸井 |
ダメでしょうね。 |
たけし |
ところが、ふたり、後ろ姿で歩いていくと、
なんか、観てるほうが、
ふたりの笑顔を勝手に想像してくれて、
いい映像を入れてくれる、みたいな感じでね。 |
糸井 |
それはだから、
「お客さんといっしょにじゃないと
映画作れませんよ」って気持ちが
はじめからたけしさんのなかにあるんですよね。 |
たけし |
ウン。なんていうんだろ、
ま、カメラの位置ってのは、
お客の位置でもあるんだけど、目の位置が、
カメラの後ろだけだと個人的な映像になる。 |
糸井 |
あー、なるほど。 |
たけし |
逆に言えば、その撮ったフィルムを
また、前から見るとか、後ろから見るとか、
位置関係、変えたりするのを意識しないと。
カメラの後ろだけだと、個人的な映像、
監督だけの映像になる。 |
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糸井 |
うーん、そうだね。
それ、「映画を撮るぞ」っていったときから
そんなことを考えてたわけ? |
たけし |
ウン、そーだろうね。 |
糸井 |
そんな感じ、するわ。
どうしてそんなことができたんだろうね。 |
たけし |
やっぱり、だいぶ漫才やってるからじゃない? |
糸井 |
あぁーー。 |
たけし |
漫才やってるときに、
漫才師は客席の顔見てるふりしてるけど、
自分は客の向こうに
(漫才を観ている客の後ろ側、
という手振りをしながら)
いるわけだから。 |
糸井 |
そうか、そうか。 |
たけし |
それで、
客が息のんだ瞬間にしゃべれるわけだし。
「よしなさい」ってツッコまれたときは、
こんなおかしな形になってるけど、
客席からどういうふうに見えてるかって
いつも気にしてるし、センターマイクを挟んで
どの位置にいるかって、たいてい気にするから。
客からの見栄えばっかし考えてやるから。 |
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糸井 |
つねに、「客の向こう側の視点」があるんだ。 |
たけし |
ウン。そーじゃないとダメで、
あまりにも夢中になると、
客は何言ってるかわかんなくなって、
本人がのってるだけで、
ぜんぜんおもしろくないってことになる。 |
糸井 |
じゃあ、たけしさんが
漫才から映画に行ったっていうのは、
お客さんから距離を置いたんじゃなくて、
ますますお客さんとの関係を
深めちゃったっていうことですね。 |
たけし |
ウン。そうそう。 |
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(つづくぞ、コノヤロー) |