糸井 |
北野映画に出てくる人は、人物だけじゃなくて、
ひとつひとつ行為も「本気」ですよね。
アクションシーンなんかでも、
振りつけっぽい動きがあんまりなくて、
いきなり「本気」が弾丸みたいに
ポンって飛び出す、みたいな。 |
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たけし |
ウン。 |
糸井 |
あれは、やっぱり発明ですよね。
観ると、いつも驚いちゃうもの。 |
たけし |
余計なこと、やんないんだよね。 |
糸井 |
そうそう。
あれは、考えて生まれた手法なんですか。
最初からできてましたよね。 |
たけし |
ウーン、あの、おもしろいのはね、
映画でアレをやるときに役立ってるのは、
オレ、漫才だと思う。 |
糸井 |
あっ、そうですか。 |
たけし |
っていうのは、オレ、
映画の悪口ばっかり言ってたからさ。 |
糸井 |
あーー、はいはいはい。 |
たけし |
映画のネタをやるときに、
水戸黄門からなにから、ぜんぶ悪口言うんだ。
サスペンスとか、
「なんで犯人は断崖絶壁で現れるんだ」とか、
「なんで全員自己紹介しちゃうんだよ」とかさ。
おかしいじゃねェか、って。 |
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糸井 |
あははははは。 |
たけし |
「なんで事件のニュースが流れるとき、
犯人は必ずそれ観ながら
ラーメン食ってんだよ」とかね。
「なんで逃げてる主人公のコースに沿って
足元に弾撃ってるんだ」とか、
そんなことばっかり言ってさ。 |
糸井 |
つまり、そこで映画を
「コノヤロー」にしたんだよね。 |
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たけし |
そうそう。
だから、自分で映画撮るときに、
それをやらなきゃいいっていう。 |
糸井 |
批評家の仕事を先にしてたんだ。 |
たけし |
ウン。先にやっちゃったの。
だから、やりやすい反面、
やりにくいってのもある(笑)。
やれなくなっちゃったから。 |
糸井 |
ああ、そのお約束を、
やっちゃいけないわけだから。 |
たけし |
ウン。それで、やらないで撮ったのが
わりかし好評だったんだけど、
そればっかり続けてくると、
ちょっと、いいのかなって思ったりもするんだ。
映画のウソもあるしな、って思う。 |
糸井 |
あーー、なるほどね。 |
たけし |
歳とってくると認めるようになってきた、
みたいなところがあるね。
若いときは「ありゃあウソだ」
ってことばっかり言ってたんだけど、
少し妥協してくるみたい。 |
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糸井 |
でも、それは、
ボキャブラリーが増えるみたいなことだからね。
妥協というよりは、
豊かになったということじゃないかな。 |
たけし |
ウン。 |
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(つづくぞ、コノヤロー) |