北野武×糸井重里 たけし、コノヤロー。 新作『アキレスと亀』をとっかかりに。

第11回 オレが作品。

糸井 でも、たけしさんの目指す道が職人だとすると、
それは、チームプレーでつくる
映画とは矛盾するじゃないですか。
たけし ハハハハハ。
ウーン、それはねェ‥‥。
あのね、オレ、すっごいずうずうしいんだけど、
「北野武」とか、
「ビートたけし」っていうのが作品であって、
映画を見ることは、オレを見ることだ、
と思ってるような気がするんだよ。
糸井 あーーー。
たけし だから、映画をどうこう言う前に、
「もっとオレがすごくなりゃいい」
って思うときあるよ。
糸井 はーーー。
それは、仏像そのものですね。
たけし ハッハッハッ、
ずうずうしいとは思うんだけど。
糸井 いや、そのずうずうしさって、
ほんとはあるんでしょうね、みんな。
つまり「オレがアートそのものだ」って
ほんとは言いたいんでしょうね。
たけし ウン。
糸井 はーー。それはすごい考え方だなぁ。
すると、失敗作っていうのも、
ぜんぜん、痛くもかゆくもない、
ってことになりますよね。
たけし そーだね。ただ、そこがまた、
お笑いやってた人間の危険なところで、
「失敗作がいいに決まってるじゃないか」
って言うわけさ。
「失敗がなきゃ、ギャグになんないもん」
って言ったりするわけ。
糸井 ややこしいね(笑)。
たけし ややこしいこと言いだすんだ(笑)。
ただね、興行的なことでいうと、
外国で人気があって、
日本で人気がないっていうのは、
いちばんいい形かもしれないと思うね。
逆だったら、ソレ、
いちばんかっこ悪いだろうって思うから。
日本で有名で、外国で誰も知らねー、なんてさ。
糸井 ああ(笑)。
たけし 粋さとかっこよさでいったら、
日本でダメで外国でうけてるほうが
いいに決まってるんじゃないっていう。
だから、よく、オレの映画は、
「世界じゃ有名だけど、
 日本じゃ客が入らない」
って言われてるけど、
そっちのほうがかっこいいもん。
糸井 なるほどね。
みんな、過剰に言いますよね、
客が入らないってことをね。
たけし おかしいからね、ソレ。
でも、プロデューサーに言わせると、
それでも入ってるらしいよ。
「そんなに客が入ってないなら
 つぎの映画、撮れませんよ」
って言ってるから。
糸井 ああ、それはそうですね。
たけし 「毎回、毎回、そんなにだませませんから」
って言ってるから、
ちょっとは入ってるみたいね、お客さん。
糸井 (笑)
(つづくぞ、コノヤロー)

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2008-10-03-FRI


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