COOK
ダイニング部に
集合してくださーい!

なんか年末に「食あたり」になっちゃってから、
どうも調子が悪いねぇ。
ちょっと鍛えないとダメですね。
「アブラミ・ブラザーズ」じゃないけど、
ほんと運動してないですもん。
腹筋も背筋も腕立て伏せもぜ〜んぜんできない。
ダーリンさんに言わせると「嫁に行けない」ほど
これって、そうとうヤバイんだって。
だからね、腰を激しくクネクネとさせて踊る
「ベリーダンス」習うことにしたの。
あー、まぁこれで腹筋、背筋が鍛えられるかは
ちょっと分からないけど、
運動不足解消にはなると思うんですよ。
あの、妖艶でセクシーな踊りを修得して、
お嫁に行くんだぁ〜。

明日、みんなまた『かわはぎ』釣りに行くんだって。
月曜日のダイニングライブの食材調達にね。
わたしは今回も、体調不良ぎみ欠席なのです。
ちっ、わたしったらタイミング悪いよ。
あっ、でもこれって
「君は磯釣りのナウシカだから」
っていう磯の神様の嫉妬だわ、きっと。
月曜日のダイニングのために体力温存しときましょ。
前回のカワハギダイニングをご覧になってた方、
びっくりしたでしょ、変だったでしょ。
みんなでごはん食べ始めたのは夜の11時ごろなんて。
だけどねぇ、いくら「特別カワハギ料理人」だって
100尾以上のカワハギをお料理するのは
大変ですよ、時間だってかかるわけです。
わたし、不安です。

『カワハギ』
目が丸くクリクリで、おちょぼ口を前に突き出して
とぼけているようにも、ふてくされているようにも見える 表情。
体は平たく、ひし形で手のひらサイズ・・・
これは「たいやきくん」だ。
実際『カワハギ』にはツノがあるけど
でも、きっと「たいやき」のモデルは
『カワハギ』だと思う。

カワハギ

白身魚で、薄切りにしたお刺身なんかは、フグにそっくり。
淡泊でお上品な味です。食べると贅沢な気分になりますよ。
それから、なんと言っても「キモ」がおいしいの。
これは『カワハギ』の肝臓のことです。
薄ピンク色で濃厚で、口の中でとろ〜っと溶ける感じ。
あ〜ん、も〜たまらない!!
だから「海のフォアグラ」
なんて呼ばれることもあるそうですよ。
確かに、あんキモにも劣らないおいしいさですからねぇ。

『カワハギ』の旬は夏だっていうのと、
冬だっていう2つ説があるんですって。
でも、「キモ」についちゃぁ、今の時期がいちばん。
秋から冬にかけて大きくパンパンに
「海のフォアグラ」が育つんですね。
しかも、この「海のフォアグラ」ったら、
ビタミンAが豊富。
ビタミンAってお肌の老化防止に効くんじゃなかったけ?
目の疲れに効果的っていうことは確かです。
もちろん白身の部分にも
良質のタンパク質やタウリンがいっぱい。

『カワハギの薄造り』
せっかく、釣りたて新鮮なお魚ですから、
やっぱり「薄造りのお刺身」がメインですかね。
「カワハギ特別料理人」の包丁さばきはすごかったですよ。
ほんとに、2ミリくらいで
お皿が透けて見えるほどの超薄切り!
わたしには、あの技術は残念ながら、
まだ備わってないんですよ。
でも、練習練習。なんでも挑戦しないとね。
ただのわさびじょう油でも、
むちゃくちゃおいしいんだけど、
ここで、「キモ」の登場です。
湯引きした「キモ」をペースト状にといて、
それに好みで、おしょう油やお味噌やお酒なんかを足して
濃厚なつけだれをつくります。

『カワハギの唐揚げと骨せんべい』
ふんわりした白身と、カリッとした骨の唐揚げ。
骨は、170度くらいで、ひとまわりくらい小さくなるまで
じっくりと骨がやわらかくなるまで揚げます。
「やわらかく揚がったな目安」は、
最初勢いよく出ている泡が消えて油が静かになるまで。

『カワハギのお味噌汁』
ぶつ切りの身も「キモ」も入ったお味噌汁。
かつおのおだしと、『カワハギ』から出るおだし。
それだけで充分に「おいしいだろうな」
って想像できますよね。
そこへ、お味噌を溶き入れるんです。
あとは、お豆腐とネギをぱらっとやるだけ。

かわいい顔で、おいしくって、
栄養豊富な『カワハギ』は、ほ〜んと魅力的。
『カワハギ』?『皮剥』。
この名前は、皮がやすりのようにざらざらで堅いので
調理するときは、必ず皮を剥ぐことから、
ついた名前だそうです。
口→ツノ→腹ビレの順に切断しておくと
おもしろいように皮がペリペリペロンとむけちゃうのです。
バクチに負けて身ぐるみはがされることにひっかけた
『バクチうち』っていう別名なんてのもあるみたい。
『ハゲ』って呼んでる地域も。

そう、この『ハゲ』って呼んでる地域の『ほぼ日』読者の
数貫史子さんから変わった「『カワハギ』レシピ」を
メールで教えていただきました。
それは『塩焼き』。
「魚の塩焼きなんてふつうじゃん」って思うでしょ。
でもね、数貫さんったら
必ず皮をむいて調理しなきゃいけないっていわれている
『カワハギ』を「皮は剥かずにそのまま焼く」
なんて無茶いうんです。
くぅ〜、けど、これがね、すごいんだ。
堅い皮がアルミホイル代わりになって、
まるでホイル焼きしたように身がふっくら
おいしく焼きあがるっていうの。
なるほど、すごい、これは試してみたいでしょ。

なんか楽しくなってきた。
わたしは気合い充分、やる気満々です。
釣りご一行のみなさま、
わたしは200尾だって、がんばってお料理しますよ。
でも、なんかウワサによると、
海では北風がそうとう強く吹いてるらしい。
風速10メートルだって。うわ〜船揺れるでしょ。
みんな、船酔いしちゃうんじゃないの? ふっふっふっ。
まぁ、遠慮なく、た〜くさん釣ってきちゃってください。

1999-01-25-MON

「カワハギ料理のご報告」

やっぱりねー
ずいぶん、船酔いしちゃったみたいですね。
前日、釣りに同行できず悔しがっているわたしに、
「船の上から電話してやるよ」
って意地悪くいってたセイヒローさんなのに、
お昼過ぎにかかってきた電話は
船の上ではなく陸の上からでした。
「もう、海が荒れてむちゃむちゃ船が揺れて
何人か船酔いしちゃうし、とにかく寒くてやられました」
くっくっくっ・・・
みんな強風と雨にさらされて凍死寸前だったとか。
船の上は、地獄絵図のようだったらしいですよ。
あーよかった、行かなくって。

随分ダウンした方が多かったわりには、釣果90尾ほど。
すごい、立派ですね。
このカワハギ達をセイヒローさんと日活くんが、
釣ったその日のうちに内臓を取り出し、
しかも皮まで剥いてくれたので、
ダイニング当日には、半分くらい
カワハギの下ごしらえ完了してました。
ありがたいですよ、つらすぎる釣りのあとで
そうとうお疲れだったでしょうに。
たった1日でも、やっぱり鮮度は落ちるんですよね。
鮮度が落ちることによって
皮が剥きにくくなる、と同時に
皮と身の間のゼラチン質が悪臭のもとになって
カワハギが臭くなっちゃうんですって。
なるほど、だから魚屋さんで売ってるカワハギは
皮を剥いた状態のものが多いんですね。

大西部長

「カワハギ基本の下ごしらえ」
まずは、ここからです。
ぺりぺりぺろ〜んと剥ける、皮むき。
『じみへん』で
子どもがお金を払って、他人のかさぶたを剥いて
きゃっきゃっと喜んでる漫画があったのを思い出した。
実に、あの子どもの気持ちがよく分かっちゃった。
あー、この例えはちょっとちがうかなぁ、
とにかく、ちょっと快感なんですよ。

カワハギおろし中

1、 口ばし→ツノ→腹ビレの順に切断し、くちばしの端の皮を
  つまむと頭からお尻までいっきに簡単に皮が剥ける。

2、 ツノの手前から包丁を垂直におろして背骨を断つ。

3、 手で、頭部を引くと、キモの付いた頭部と身に
   きれいに分かれる。

4、 キモと内臓は人差し指で崩さないように取り出す。
  (内臓を潰しちゃうと、ムチャクチャ臭いです)

5、 キモと内臓を丁寧に分離させて、
  キモは血合いや汚れを洗い落とす。

6、 背骨に沿って包丁を入れて、身と骨を離せば3枚おろし、
  それの身の上下を分ければ5枚おろし。

7、 薄皮の端をつまんで包丁をねかせて薄皮をひく。

下ごしらえの方法はいろいろ。
先に頭部を切断してキモや内臓を取り出してから
皮を剥ぐっていうのもあるみたい。

たくさんカワハギ。

『薄造り』
フグの代用にもなるカワハギですから、当然『薄造り』。
5枚におろした身を、2ミリ程度の薄切りにする。
そう、フグ刺しのようにお皿が透けて見えるように。
でも、これが、ち〜っとも『薄造り』なんかじゃなかった。
わたしには、2ミリの薄さに切るような腕は
ないんですねぇ、今は。『薄造りっぽい』ってことで、
今回は許していただきました。

薄く切ろうと思うと穴が開いちゃったり、
穴が開かないようにと思うと、厚切りになる・・・
きゃーきゃーぶつぶつ言いながら、
『薄造り』と闘っているわたしを見てダーリンさんが
「あとは『たたき』にしなよ、味は変わらないんだし」
って。きっと気の毒に見えたんだわ。
「こりゃだめだ」って三行半だわ。
薄切りできないわたしのバカ!
でも内心「たすかったぁ」って思ったんだな、たしか。

たたき。

『キモだれ』
「海のフォアグラ」を使ったお刺身の付けだれ。
「キモ」って響きを聞くだけで、
あの独特な香りがしてくる感じです。
かわいらしい薄ピンク色で
とろ〜んとした食感、濃厚な味わい。
新鮮だからこそ味わえるおいしさですね。

1、 キモに熱湯をかけて湯引きする。
  生の味を大切にするなら表面の色が白っぽくなる程度、
  そうでないなら、少し長めにお湯をかける。

2、 湯引きしたら、さっと氷水にさらして、水気を取る。

3、 ボールに移して、とろ〜っとなるまで
  泡たて器でかくはんしてキモペーストをつくる。
  (かくはんしてると、泡立て器にキモのまわりの
  膜や血管が絡み付いてくるので、きれいに取り除けます)

4、 別々のお皿におしょうゆ、お味噌、お酒、あさつきを盛る。   

お好みに合わせてキモペーストに調味料を混ぜて、
カワハギのお刺身に付けて食べます。わたしのお薦めは、
キモペーストにお味噌とお酒を溶いたもの。
まったりと、舌に絡みつくような味わいは、
たまりませんよ。
でも、これは「ちょっとしつこいな」って方もいたので、
いろいろ試して自分のお気に入りの味を探して下さい。

きも。

どうもわたし失敗したような気がしてるんですよ。
『キモペースト』が2層になっちゃったんです。
熱湯をあまりに長くかけすぎたために、
キモの油が分離しちゃったのか、
冷水にさらしたあとの水気取りが不十分だったために
水がキモの油と馴染まなくて水が分離しちゃったのか、
とにかく、あれは明らかに変だった。
ゲストの皆さんからも、「あれ〜?」って声が。
このあとには(この間と違う)って聞こえてきそうな
不信感を含んでましたね。
そのときは、「なんか分離しちゃったんですよねぇ、
キモって油が多いんですね。」なんて見たそのままを
述べて、なんとな〜くごまかしちゃったんです。
ゲストの皆さんごめんなさい。失敗しました。

『カワハギ鍋』
皮を剥いたカワハギの身のぶつ切りと、
ハクサイ、しいたけ、ネギ、にんじん、くずきりを
たっぷりのかつおだしと、昆布だしで煮込む。
これを、もみじおろしとポン酢で。

かつおだし、昆布だし、それでここにカワハギから
むちゃくちゃいいおだしが出るんですよ。
ポン酢はもちろんだけど、お好みでお味噌を
溶き入れるってのがとっても好評でしたね。
煮込んだカワハギはお刺身の食感とは違って
やわらかいけど、シコシコした歯触りが
なんともうれしい。

なべ。

『骨煎餅』
三枚におろした骨を揚げます。
カリカリっとして、カルシウムたっぷり。
塩こしょうで食べるのも、スナック菓子のようで
おいしいけど、あっさり食べたいなら
ポン酢ともみじおろしで。

1、 骨はペーパータオルでしっかり水気をふき取り、
   塩こしょうをふっておく。

2、 揚げる直前に片栗粉をまぶす。
   (背ビレと尾ヒレも開いて溝の部分にも
   しっかりとまぶして下さい。うすることで、
   ヒレまでパリパリおいしく食べれます。)

3、 170度くらいの油でひとまわりくらい
   小さくなるまでじっくり揚げる。

4、 最初勢いよく出ている泡が小さくなって、   
   油が静かになったら揚がった証拠。
   ペーパータオルに取って油をきる。

骨煎餅には、小さいカワハギの骨の方が
むいている気がします。
たくさん食べれるってものじゃないし、
見た目がお上品な感じがいいですね。
それから、片栗粉をまぶしてから揚げるまでに
時間をおくと、どんどん水気が出て、
粉の付き方がまだらになっちゃうのです。
そうなると、きれいには揚がらない。
片栗粉をまぶすのは、くれぐれも揚げる直前に。

あれだけ、キモは『海のフォアグラ』と呼ばれていて〜
と、さんざんキモの素晴らしい味を豪語していたのに、
よりによって、そのキモを台無しにしちゃうなんて。
みんな「おいしい、おいしい」って
お料理ぜんぶ平らげてくださったけど
ほんと、とんだ失敗をしてしまいましたよ。
『キモペースト』が2層になってしまった原因を考えて
今後同じ失敗しないようにしなくっちゃ。
いや〜、ほんとカワハギのもともとのおいしさと、
鮮度に、ずいぶん救われました。
あの、尖った口にチュッとしちゃいたいくらいです。
それから、なにより拷問のような釣りに耐えて、
食材調達に出かけた皆さんに感謝です。
でも、わたしは行かなくってよかった。

1999-01-29-FRI

 

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