「カワハギ料理のご報告」
やっぱりねー
ずいぶん、船酔いしちゃったみたいですね。
前日、釣りに同行できず悔しがっているわたしに、
「船の上から電話してやるよ」
って意地悪くいってたセイヒローさんなのに、
お昼過ぎにかかってきた電話は
船の上ではなく陸の上からでした。
「もう、海が荒れてむちゃむちゃ船が揺れて
何人か船酔いしちゃうし、とにかく寒くてやられました」
くっくっくっ・・・
みんな強風と雨にさらされて凍死寸前だったとか。
船の上は、地獄絵図のようだったらしいですよ。
あーよかった、行かなくって。
随分ダウンした方が多かったわりには、釣果90尾ほど。
すごい、立派ですね。
このカワハギ達をセイヒローさんと日活くんが、
釣ったその日のうちに内臓を取り出し、
しかも皮まで剥いてくれたので、
ダイニング当日には、半分くらい
カワハギの下ごしらえ完了してました。
ありがたいですよ、つらすぎる釣りのあとで
そうとうお疲れだったでしょうに。
たった1日でも、やっぱり鮮度は落ちるんですよね。
鮮度が落ちることによって
皮が剥きにくくなる、と同時に
皮と身の間のゼラチン質が悪臭のもとになって
カワハギが臭くなっちゃうんですって。
なるほど、だから魚屋さんで売ってるカワハギは
皮を剥いた状態のものが多いんですね。
「カワハギ基本の下ごしらえ」
まずは、ここからです。
ぺりぺりぺろ〜んと剥ける、皮むき。
『じみへん』で
子どもがお金を払って、他人のかさぶたを剥いて
きゃっきゃっと喜んでる漫画があったのを思い出した。
実に、あの子どもの気持ちがよく分かっちゃった。
あー、この例えはちょっとちがうかなぁ、
とにかく、ちょっと快感なんですよ。
1、 口ばし→ツノ→腹ビレの順に切断し、くちばしの端の皮を
つまむと頭からお尻までいっきに簡単に皮が剥ける。
2、 ツノの手前から包丁を垂直におろして背骨を断つ。
3、 手で、頭部を引くと、キモの付いた頭部と身に
きれいに分かれる。
4、 キモと内臓は人差し指で崩さないように取り出す。
(内臓を潰しちゃうと、ムチャクチャ臭いです)
5、 キモと内臓を丁寧に分離させて、
キモは血合いや汚れを洗い落とす。
6、 背骨に沿って包丁を入れて、身と骨を離せば3枚おろし、
それの身の上下を分ければ5枚おろし。
7、 薄皮の端をつまんで包丁をねかせて薄皮をひく。
下ごしらえの方法はいろいろ。
先に頭部を切断してキモや内臓を取り出してから
皮を剥ぐっていうのもあるみたい。
『薄造り』
フグの代用にもなるカワハギですから、当然『薄造り』。
5枚におろした身を、2ミリ程度の薄切りにする。
そう、フグ刺しのようにお皿が透けて見えるように。
でも、これが、ち〜っとも『薄造り』なんかじゃなかった。
わたしには、2ミリの薄さに切るような腕は
ないんですねぇ、今は。『薄造りっぽい』ってことで、
今回は許していただきました。
薄く切ろうと思うと穴が開いちゃったり、
穴が開かないようにと思うと、厚切りになる・・・
きゃーきゃーぶつぶつ言いながら、
『薄造り』と闘っているわたしを見てダーリンさんが
「あとは『たたき』にしなよ、味は変わらないんだし」
って。きっと気の毒に見えたんだわ。
「こりゃだめだ」って三行半だわ。
薄切りできないわたしのバカ!
でも内心「たすかったぁ」って思ったんだな、たしか。
『キモだれ』
「海のフォアグラ」を使ったお刺身の付けだれ。
「キモ」って響きを聞くだけで、
あの独特な香りがしてくる感じです。
かわいらしい薄ピンク色で
とろ〜んとした食感、濃厚な味わい。
新鮮だからこそ味わえるおいしさですね。
1、 キモに熱湯をかけて湯引きする。
生の味を大切にするなら表面の色が白っぽくなる程度、
そうでないなら、少し長めにお湯をかける。
2、 湯引きしたら、さっと氷水にさらして、水気を取る。
3、 ボールに移して、とろ〜っとなるまで
泡たて器でかくはんしてキモペーストをつくる。
(かくはんしてると、泡立て器にキモのまわりの
膜や血管が絡み付いてくるので、きれいに取り除けます)
4、 別々のお皿におしょうゆ、お味噌、お酒、あさつきを盛る。
お好みに合わせてキモペーストに調味料を混ぜて、
カワハギのお刺身に付けて食べます。わたしのお薦めは、
キモペーストにお味噌とお酒を溶いたもの。
まったりと、舌に絡みつくような味わいは、
たまりませんよ。
でも、これは「ちょっとしつこいな」って方もいたので、
いろいろ試して自分のお気に入りの味を探して下さい。
どうもわたし失敗したような気がしてるんですよ。
『キモペースト』が2層になっちゃったんです。
熱湯をあまりに長くかけすぎたために、
キモの油が分離しちゃったのか、
冷水にさらしたあとの水気取りが不十分だったために
水がキモの油と馴染まなくて水が分離しちゃったのか、
とにかく、あれは明らかに変だった。
ゲストの皆さんからも、「あれ〜?」って声が。
このあとには(この間と違う)って聞こえてきそうな
不信感を含んでましたね。
そのときは、「なんか分離しちゃったんですよねぇ、
キモって油が多いんですね。」なんて見たそのままを
述べて、なんとな〜くごまかしちゃったんです。
ゲストの皆さんごめんなさい。失敗しました。
『カワハギ鍋』
皮を剥いたカワハギの身のぶつ切りと、
ハクサイ、しいたけ、ネギ、にんじん、くずきりを
たっぷりのかつおだしと、昆布だしで煮込む。
これを、もみじおろしとポン酢で。
かつおだし、昆布だし、それでここにカワハギから
むちゃくちゃいいおだしが出るんですよ。
ポン酢はもちろんだけど、お好みでお味噌を
溶き入れるってのがとっても好評でしたね。
煮込んだカワハギはお刺身の食感とは違って
やわらかいけど、シコシコした歯触りが
なんともうれしい。
『骨煎餅』
三枚におろした骨を揚げます。
カリカリっとして、カルシウムたっぷり。
塩こしょうで食べるのも、スナック菓子のようで
おいしいけど、あっさり食べたいなら
ポン酢ともみじおろしで。
1、 骨はペーパータオルでしっかり水気をふき取り、
塩こしょうをふっておく。
2、 揚げる直前に片栗粉をまぶす。
(背ビレと尾ヒレも開いて溝の部分にも
しっかりとまぶして下さい。うすることで、
ヒレまでパリパリおいしく食べれます。)
3、 170度くらいの油でひとまわりくらい
小さくなるまでじっくり揚げる。
4、 最初勢いよく出ている泡が小さくなって、
油が静かになったら揚がった証拠。
ペーパータオルに取って油をきる。
骨煎餅には、小さいカワハギの骨の方が
むいている気がします。
たくさん食べれるってものじゃないし、
見た目がお上品な感じがいいですね。
それから、片栗粉をまぶしてから揚げるまでに
時間をおくと、どんどん水気が出て、
粉の付き方がまだらになっちゃうのです。
そうなると、きれいには揚がらない。
片栗粉をまぶすのは、くれぐれも揚げる直前に。
あれだけ、キモは『海のフォアグラ』と呼ばれていて〜
と、さんざんキモの素晴らしい味を豪語していたのに、
よりによって、そのキモを台無しにしちゃうなんて。
みんな「おいしい、おいしい」って
お料理ぜんぶ平らげてくださったけど
ほんと、とんだ失敗をしてしまいましたよ。
『キモペースト』が2層になってしまった原因を考えて
今後同じ失敗しないようにしなくっちゃ。
いや〜、ほんとカワハギのもともとのおいしさと、
鮮度に、ずいぶん救われました。
あの、尖った口にチュッとしちゃいたいくらいです。
それから、なにより拷問のような釣りに耐えて、
食材調達に出かけた皆さんに感謝です。
でも、わたしは行かなくってよかった。
|