糸井 |
じゃあ、はじめよっか。 |
小林 |
ぼく、ほとんど酔っ払いじじいだね、これ。
こういうひとなんだけどさ、
お芝居している時だけは集中しているってところに、
お芝居の面白みがあると受け取ってください。
だらだら生きてる奴が、
少し緊張する時間をもらっているというのが
いいんですよね。あははは。 |
糸井 |
いいねえ。もう、まとめに入ってるよ。
ぼくは、薫ちゃんというと、
お好み焼き屋に暮らしてたのが思い浮かぶなあ。
うちの若いスタッフなんか、それに憧れてる。 |
小林 |
お好み焼き屋は、
住むというだけならすごく快適だったけど、
お店だから、ぼくの都合は2の次で、
客の都合で営業時間が延びたりする。
12時頃に帰っても、まだ店が開いてて、
俺の座敷を使って飲んでるやつがいるの。 |
糸井 |
はははは。 |
小林 |
俺も高円寺界隈をまわって、
「もう夜中の2時近くになってるからいいかな」
と思って帰ってみると、まだいる。
明日が芝居の本番という日なのに。
3時までねばられたときはさすがに困った。
裏から入って、ちょっと気配を与えてね。
店のオーナーに、帰ってきたよと。 |
糸井 |
俺だよと(笑)。 |
小林 |
でも「きみ、ビール飲む?」なんて言われました。
明日本番という時だったので、焦りましたよ。
次の日にはテントとかを立てないといけないのに。 |
糸井 |
その時の芝居、設営からはじまっていたんだあ。
おもしろいなあ、お好み焼き屋の話。
ここにいるメンバーは、そういう貧乏話、好きよ。 |
小林 |
そうですかねえ。
当時はあまりにも貧乏すぎたから
自分が貧乏だという自覚さえ、なかったけど(笑)。 |
糸井 |
(笑)お金がなくて、
あんまりたくさんのお酒を飲めないから、
少しだけの量でも酔えるように、
お酒を飲んでそこらへんを走ったりしてたよね。 |
小林 |
クマちゃん(篠原勝之さん)が、
「1杯でも、500メーター走ればまわるんだよ」
とか言ってましたもん(笑)。
頭痛くなったりしないと飲んだ気がしないから。
ワインでも日本酒でも、悪いお酒を飲んでたよね。 |
糸井 |
(笑)ひとり無口なやつがいてさ、
「お前サービスしないで大事な酒を飲んでる」
って、クマちゃんに怒られた(笑)。
冬の寒いなか、外に出されて。 |
小林 |
それ俺んちで飲んでた時だった(笑)。
そいつは、飲めば飲むほど無口になるやつで、
もう酔っ払っちゃってて、
漫画の「のたり松太郎」状態になっちゃってて、
「なぬ。おらのすっことに文句あっか」って。
そしたらそいつ、2月のみぞれの降る夜に、
クマちゃんに「この野郎」って、
パンツ一丁で部屋から出されちゃったの。
しばらくして、さすがに、
「みぞれ降っているし、あいつ大丈夫かなあ」
と思って外を見てみたら、そいつ、
そこに置いてあった自転車を体にかけてたの。 |
糸井 |
あはははは。 |
小林 |
もう、おかしくておかしくて。
たぶん本人は、酔いながらも、
「寒い」というイメージがあったんだろうな。
寒いと毛布とかをかけたくなるじゃないですか。
だから自転車をかけ布団にしてた(笑)。
でも「もっと寒いよ」というイメージだったなあ。
自転車をのっけて、うーって言いながら寝てた。 |
糸井 |
そいつ今、何やってるんだろうなあ(笑)。
(つづく) |