ほぼ日 |
ええと、「古墳」がお好きということで。 |
スソ |
‥‥理解にくるしみますよね(笑)。
この前も、ひとりで小山を眺めながら
思ったんですよ、
はたからみれば、これ、おかしな人だよなあって。 |
ほぼ日 |
あ、もう実行されたんですね、ひとり古墳部。 |
スソ |
ええ、ことしの夏に。
いったい何がたのしいんだろうって
感じだったと思いますよ、人からみれば。
炎天下で女がひとり、小山を見上げて、
「これだー、 5号墳」って、うなずいてる。 |
ほぼ日 |
(笑) |
スソ |
果たしてこれをレポートして、
みなさんはよろこんでくれるんでしょうか? |
ほぼ日 |
大丈夫です。
古墳をたのしんでいるスソさんの様子が、
とても興味深いので。
‥‥古墳は、昔からお好きだったんですか? |
スソ |
そうですね、昔から。
小学生の低学年ぐらいのころから
地方に伝わる民話や風土記なんかを
読むのが好きでした。 |
ほぼ日 |
そんな小さいころから。 |
スソ |
そのころちょうど、ホラーブームで、
漫画の 『恐怖新聞』や 『漂流教室』を
読んでいました。
ふしぎだったり怖いことが好きだったんですね。
そういう背景があって、小学校の高学年になると
『古事記』とか 『日本書紀』を
読むようになったんです、ふしぎなお話として。
といっても、子ども向けの、
『古事記』と『日本書紀』なんですけど。 |
ほぼ日 |
わかりやすく編集された。 |
スソ |
ええ。でも、子ども向けとはいっても、
やっぱりややこしいんですよ。
たくさん神様がでてくるし、
親子や兄弟や夫婦関係もややこしい。
なので自分でノートをつくって、
血縁図みたいなものを書いたりしていました。 |
ほぼ日 |
すごい(笑)。 |
スソ |
そのころは、そうやっていろいろ読みながらも、
「神話というのは架空の話」って思ってたんです。
でも、それが、
「もしかしたら本当にあったのかも」
と思うようになった、きっかけがありまして‥‥。 |
ほぼ日 |
本気になったきっかけが。 |
スソ |
|
ほぼ日 |
え? ああ、はい、漫画家の。 |
スソ |
そうそう、諸星大二郎の
『暗黒神話』という漫画があるんですよ。
日本の諏訪と出雲と九州の何カ所かをつなげて
旅をしていく話なんですけど、
その主人公の男の子が体に傷跡があるんですね。
男の子が横たわると傷跡の並びが
出雲や諏訪の場所と一致する、みたいな、
そういう設定なんです。 |
ほぼ日 |
へえ〜。 |
スソ |
主人公の男の子は
ヤマトタケルの生まれ変わりで、
その子が剣と 勾玉と鏡をその旅の中で得て、
最後は、なんていうんでしょう‥‥
現世じゃないところに飛んでっちゃうんです。 |
ほぼ日 |
はあ〜。 |
スソ |
あの世とこの世のこととか、
ふしぎな話がたくさんでてきて、
しかもそれがなんか、リアルで、
もうすっかり夢中になって。
|
ほぼ日 |
「古墳好き」になったのは、
漫画の影響だったわけですね。 |
スソ |
漫画に出てくる土器の本物を見に
博物館を訪ねてみたいとか、
そういうことが将来の夢になりました。 |
ほぼ日 |
その漫画を読んだのはいつごろで? |
スソ |
大学生のころです。
将来は仕事をしながら、休日になると
諏訪だったり、出雲に行ったり、
九州の 馬頭観音を見に行ったり、
そういう生活に憧れていたんですよ。 |
ほぼ日 |
渋い大学生です(笑)。
実際、社会人になってからはどうでした? |
スソ |
ええ、それなりにいろいろと。
最近は大勢で出かけたりしてますが。 |
ほぼ日 |
あ、そうそう、そうでした、
スソさんは「古墳部」の部長さんなんですよね。
その「古墳部」についても教えていただけますか。
どうやってできた集まりなのか。 |
スソ |
『四月と十月』という美術雑誌の企画なんです。
“画家のノート”というテーマの雑誌なんですけど、
そこの記事ページで
「古墳部活動記」というレポートを
5年くらい書いてるんです。 |
ほぼ日 |
発起人はスソさんなんですか? |
スソ |
発起人‥‥発起人はだれなんだろう?
最初は私が『四月と十月』の編集長に
諸星大二郎の『暗黒神話』のことを
熱く語ってたんですけど‥‥。 |
ほぼ日 |
そこでもやはり『暗黒神話』が(笑)。 |
スソ |
編集長が「何かそれおもしろそうだね」って。
じゃあ「古墳部」っていうのを作って、
みんなで行ってリポートしたらたのしいかも、
と話が進んだんです。 |
ほぼ日 |
あ、それはもう、
やっぱり発起人はスソさんです(笑)。 |
スソ |
そうなんでしょうかねえ、いちおう部長ですし。 |
ほぼ日 |
部員は何名くらい? |
スソ |
1回目は4人で行ったんですけど、
いまは14人くらいになることもあります。 |
ほぼ日 |
たとえば、どんな古墳に行かれたんですか? |
スソ |
ああ、九州の装飾古墳はすごかったです。 |
ほぼ日 |
そうしょく古墳? |
スソ |
古墳の中に宇宙人みたいな絵が描いてあったり、
渦巻き模様が描いてあったり。
鮮明に、5色ぐらいの色で。
そんな装飾があるから、装飾古墳というわけです。
懐中電灯をぶらさげて、こう、しゃがんで
岩のトンネルみたいな場所に入っていくと、
保護ガラスはあるんですけど、
そこからこうやって覗くと、絵が見えて、
それが、ものすごいんですよ。
原始的な、生々しいっていうか、
太古の人が描いた絵で、ほんとにすごくて、
『暗黒神話』の、あれが渦巻き模様か! |
ほぼ日 |
(笑)また諸星大二郎。 |
スソ |
漫画に出てくるんです、装飾古墳。
あの渦巻き模様の、ほんものがー! って。 |
ほぼ日 |
感動ですね。 |
スソ |
感動ですよ。
岡山では出土品でカイコのかたちの棺桶をみたり。 |
ほぼ日 |
カイコ? 繭(まゆ)のかたちの棺桶ですか。 |
スソ |
いや、幼虫です、イモムシ。
ナウシカのオームみたいな。
これがまた諸星大二郎の世界で。
で、その棺桶は陶器なんですよ。
そんな大きい陶器をどうやって焼いたのか
いまの陶芸家もよくわからないそうで、
もう、そういうのを見てるとドキドキして‥‥。
ああ、ごめんなさい、
話しはじめたらとまらないんです(笑)。
まあ、そんな感じで10回ほど、
古墳部でいろいろとみてきました。 |
ほぼ日 |
そんなに濃い活動をしながらも、
さらに「ひとり古墳部。」もやりたい、と。 |
スソ |
そうですね、ひとりで。 |
ほぼ日 |
単独でも活動したいと思ったのは、なぜでしょう?
大勢で出かけるほうがたのしそうですが。 |
スソ |
いや、まあ、それはそうなんですけど、
ええと、どう説明したらいいのか‥‥
|
|
(後編へと続きます) |