ある日のこと。
「スソさんは何に触りたいですか?」
と尋ねられたので
「それはやっぱり土偶ですかねー。」
と答えてみました。

数週間後、電話がかかってきて、
「土偶に触ってもいいというところが
 見つかりましたーー」
「えっ!本物?」
「はい、もちろんです。青森へ行きましょう。」

こうして、
青森へ行くことになったのです。




 
早朝
もう桜は散ってしまった4月のある日、
朝5時27分。
ちょっと肌寒いです。
バスで羽田空港に向かいます。

羽田空港に7時に集合です。


 
飛行機でひとっ飛び
青森空港に到着しました。
じつは、
着陸時に揺れてすごく怖かったー。

あっ! 雪が残ってる!

うそーーっ。


 
ワゴン車に
車へ小走り!

さ、さ、さむっ〜〜!

スタッフのかたたちと
ワゴン車に乗り込みます。
運転手さん、
今日一日お世話になります。

と皆でごあいさつ。

そうです。
今日はひとりじゃないんです。

ワタクシもおります。
 
うおっほん。うおっほん。
スソさん。スソさん。
ワタクシのことをお忘れか?
ワタクシは前回スソさんの家に届いた
ミミズク土偶です。
名を健太郎ともうします。
ミミケンとよんでいただけたら幸いです。
二代目スソさんのかばんの中の
土人形でございます。
みなさま、以後、
お見知り置きください。


 
空が広い
まだ、葉っぱが出ていない
リンゴ林を抜けていきます。

この先もしばらく何にもなさそうー。

では、ここで朝ご飯を調達しましょう。

ミミケンのサイズ。
 
うぉっほん。うぉっほん。
スソさん! スソさん!
ワタクシは、身長が12センチの
素焼きの土人形です。
ある程度もろくできておりますので、
かばんを置く場所にご配慮を願います。


 
ステキ!
見つけました!
(ていうか、教えてもらいました)
隠れた青森名物、イギリストースト!
イングリッシュトースト!

うっすら甘い
白いクリームがはさまっていて
なんだか懐かしい味でした。


 
ややや
グレーの景色が続いていたので
ぼんやり眠気に襲われていると。。。

空港から1時間ぐらい走ったでしょうか。
小さな街の中に入っていました。

あっあれは!

ここで降りましょう!
歩いて近づきたいです!

いそがないで!
 
ああ! スソさん!
いまにも走り出しそうですが、
もうしあげましたとおり、
ミミケンはけっこうデリケートな素材です。
スソさんが走ったりすると、
かばんのポケットにはいっている
iPhoneに頭が当たるのです。
ゆっくり! ゆっくり!
二代目はすぐに粉々になって、
土に返ることになってしまいます。






 
わーーー
これ、これ、これです。

JR木造駅(きづくりえき)の
「しゃこちゃん」。

ほんとに、でかいわー。

土偶の誇り。
 
駅舎が土偶とは。
ミミズク土偶のわたくしは
種類は違うといえども、
たいへん誇らしい気持ちになります。


 
あっ踏切が鳴ってる
赤い電車ですよ!

「スソさんはてっちゃんですか?」

「いえ違いますけど..つい」

夜、電車が来ると、
しゃこちゃんの目が赤く光るそうです。




 
さて
駅に入ってみましょう。

さすが。
 
じぶんもこんなに
おおきくつくっていただけたら
どんなに光栄なことだろうか‥‥。
さすが遮光器土偶さんです。






 
あちこちに
「しゃこちゃん」こと、
遮光器土偶が
並んでいます。

やっぱりお土産の目玉。
街のシンボルだもんね。

いいなあ。
 
遮光器土偶さん、大人気ですね。
わたくしである
ミミズク土偶は
足元にもおよばないのでございます。

ああ、それにしても‥‥。
おいしそうです!
その「しゃこちゃんせんべい」を
ひとかけいただきたい!




 
駅ですから
次来るときは、電車に乗って来たいなー。
あ、でも本数少ないから注意しないとね。


 
さあて
出発しましょう。

駅前通りを抜けていきます。
歩いている人がひとりもいませんねー。




 
資料館に到着!

「つがる市縄文住居展示資料館」のことを
カルコっていうんですが、
Kamegaoka archeology collectorsの
頭文字をとった略語だったのねー。

あっ
ウィンドウの中に
遮光器土偶が立っています。
両足?!
これはレプリカですね。

ご説明いたしましょう!
 
なぜ、スソさんが土偶が
「両足」だからレプリカだと
判断したのかということについて。

亀ヶ岡遺跡から出土した
遮光器土偶は左足がかけているのでございます。
なので、両足があって亀ヶ岡遺跡の土偶の
形状をしているのならば、
それはレプリカであると
判断ができるわけなのでございます。




 
ジャーン!
これが、亀ヶ岡石器時代遺跡から
明治22年に出土した
遮光器土偶です。

遮光器とは、「雪メガネ」のことで、
イヌイットなどの北方民族が使っているものを
大英博物館で観た人類学者の坪井正五郎氏が
この土器に名付けたのだそうです。

これは、縄文時代の晩期に作られたもので
高さは34.8㎝あります。

でもでも実は、これもレプリカなんです。
本物から型を取っているから、
そっくり!

本物は
上野の国立博物館で展示されています。

なんで後ろ姿? 横?
それは、上野ではこんな風に
後ろ姿や横を見ることはできないから

というのは言い訳で、
ガラスに自分が映ってしまい
うまく撮れなかったんです。

「片足がないのは、やっぱり
 わざと壊したのですか?」
と案内してくださっている
学芸員の佐野さんに
お聞きしたら、

「手とか足とかは壊れやすい部分なので
 自然に壊れたりしたのかもしれません。
 2000年以上も
 土に埋まっていたんですからね。」
というお答えが返ってきました。






 
2階へ
資料館の2階には、
つがる市の遺跡から出土したものが
展示されています。

底の尖った
縄文時代早期の土器や、
細長い円筒型の
中期の土器があります。

縄文時代の長さ。
 
縄文時代というのは、
江戸時代や鎌倉時代などのように
何百年単位の時代ではございません。
なんと、一万年以上も続いた長い時代です。
土器の形式から6期に
分けられているのでございます。
6期とは下記のとおり。
草創期(約13000年前〜)
早期(約9000年〜)
前期(約6000年前〜)
中期(約5000年前〜)
後期(約4000年前〜)
晩期(約3000年前〜)
ちなみに、わたくし、ミミズク土偶は、
後期後半から晩期前半に
生まれたといわれております。






 
ほうー

そして、
縄文時代晩期の亀ヶ岡文化圏を代表する
土器も並んでします。

遮光器土偶の身体にも同じような
文様が入っていますよね。

亀ヶ岡文化圏とは?
 

縄文時代の晩期、
つまりは約3000年前からはじまる時代に
北海道渡島半島から東北地方にかけて
盛んだった文化のことなのです。
その中心がこの遮光器土偶が出土した
亀ヶ岡遺跡や是川中居遺跡です。
この文化の影響をうけた土器は
このほか日本列島の各地で
見つかっているそうでございます。
ちなみに、わたくし、ミミズク土偶は、
関東出身だったような気がします。





 
縄文時代の漆(うるし)
籃胎漆器(らんたいしっき)と呼ばれている
漆の器もありました。

植物の繊維を編んで、ベースの器を作り
その両面に漆を塗って、さらにベンガラで
文様を描いているのです。

この文様も土器と同じです。
よほど大事な何かを
表しているんでしょうね。




 
さらに
土偶です!
ついに遮光器土偶の本物です!

白くて小さいなー
かわいいー

こっちの土偶は‥‥
ちょっとコワイ感じがするのはなぜ?

まわりの人たちが
パーツしかないからかな〜

やっぱり片足がないし。
壊されたみたいって、
どうしても思ってしまいます。

片足問題。
 
土偶はよく足や腕などが
欠けた状態で発見されることが多くあります。
儀式などで故意に欠けさせたのではないか
という説などもあるのでございます。
ちなみに、わたくしミミケンは
欠けた部分はないのでございます。


 
こちらも
板状で、しかも胴体のみの土偶。

立体になる以前のものですかね。

首は取れちゃったのか、
それとも折ったのか‥‥。

ちょっとこわい。
 
ミミケン、こう見えて
こわがりなので、
仲間の土偶の
胴体だけというのも
すこしこわいです。
ぶるる。


 
さんかく
IMG _6976.jpg

土器の破片かと思いましたが
そうではなくて
わざわざ三角に作った土製品らしいのです。

目的はわからないそうです。

土偶の流れで見ると
身体をあらわしているようにも
見えますが…どうなんでしょうね。

次回をお楽しみに!
 
この資料館にももちろん
本物の土偶がありましたが、
さわれる土偶はここにあるものでは
ないそうでございます。
お昼休憩をはさんで、
さわれる土偶のある場所へ向かいましょう!

 
2015-08-02-SUN
 
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