早朝、博多を出発し行橋駅へ。
みやこ町のイベントの前に、
学芸員の木村さんに案内をお願いして山の方へ向かいます。








 
いきなり
行橋駅から南西の方向に車で約15分ぐらい。

大きな池の淵を廻り込み、
さらに山の斜面をすこし登ったところで
車を降りました。

この先には古代の山城で
『御所ヶ谷神籠石(ごしょがたに こうごいし)』
と呼ばれる遺跡があります。


ちょっとこわかった
 
こ、こんにちは。
は、ハニワのみこちゃんです。
なぜすこし動揺しているかというと
車がすこし揺れたのでした。
スソさんのカバンの中にいるみこちゃん、
割れるかと思った!

でも、もう大丈夫!
さあ、スソさん、いっしょにまいりましょーー。
遺跡へ、ゴー!






 
登ります!
傾斜がキツイ!

石がごろごろ…

道はどこに?

昨日このあたりは雨が降ったそうで、
ところどころぬかるんでいます。


ひとり古墳部の
これぞ三原色!
 
土の「茶色」、植物の「緑」、石の「灰色」。
これが、
ひとり古墳部の三原色と呼ばれているのよ。
(そう呼んでいるのは
 みこちゃんだけかもしれないけれど)

今回もみごとな三原色だわ〜。
この配色を見ていると、心がやすらぐの。
景色と一体になったような気持ちよ‥‥。


 
おやっ
仏様?

ここは修験者の人たちの
神聖な場所でもあるようです。


さし色
 
三原色のなかに、
ぽつんと、さし色のように、
お花のピンクとイエローが‥‥。
かわいいなぁ。




 
おー
「中門」に着きました。

目の前に大きな石の壁が立ちはだかっています!

崩れているところもあるらしく
手前には大きな石が
ごろごろころところがっています。


あぶない!
 
スソさん、あぶないよ。
もしも、ころがってきた石がぶつかったら、
みこちゃん割れちゃうよー。






 
近づくと
これは、排水溝でしょうか?
小さめの切石を丁寧に組んでいますね。

博多から同行した藤野さんが、
石をそっと触っています。

みちさんは穴を覗いています。
あ、頭がすっぽり入りそう〜〜。

小さく見えたけど、切石もでかい!


だから、あぶないよー。
 
あわわわわ! 頭がすっぽり!

ねえねえ、スソさん、
石があぶないから別な場所へ行こうよぉ。


 
へー
なんと、この山城は7世紀後半頃に造られたとか。

標高246.7mのホトギ山の山頂から
北斜面の尾根を土塁や石の壁で囲み、
その外周は3kmもあるそうです。

この「西門」のほかに6つの門があるということ。

人力で、よくこんなに大きな石を
大量に積み上げたものですね。


はやく、離れようよー。
 
石が、こわいわ。
割れちゃったら、
スソさんといっしょに
古墳部にこられなくなっちゃうのよ‥‥。


 
いい眺め〜
もうすこし登ったところで振り向くと、
山の間からうっすらと
ふもとの街が見えています。

晴れていたら、周防灘も
見えるのかもしれませんね。


ホッ
 
よかったー。
こわかったね、石。
石がこわかったね、スソさん。

‥‥わあぁぁ、すてきな景色。
いい空気。
わあああぁぁぁ‥‥‥‥。






 
おや?
さらに奥へと歩いていくと、
傾斜が緩やかになって、道も広がってきました。
門のような建物がありますね。

景行神社だそうです。

景行天皇が、ヤマトタケルに
熊襲征伐を命じたときに
立ち寄ったと伝えられているそうです。

え!? ここまで来た?

祠のまわりには大きな石があって、
これはどうやら建物の柱の礎石だったとか。

周辺から須恵器や
土師器片が出土しているそうです。

ここが山城の中心部で、
祭祀の場があったのでしょうか。


カッコイイ‥‥
 
スソさんが推理をしているわ。
太古の昔に思いを馳せて
推理をしているスソさんの表情が、
みこちゃんは大好きなの。


 
ここは!
さらに奥への道があるそうですが、
今日はここまで。
別の道で戻ります。

みちさん、ヒールの靴がぐしゃぐしゃです!
大丈夫ですか?


大丈夫ですかーー!?
 
大丈夫ですかーー!?
ヒールで山は無謀なのよー。
みんなー、大丈夫ですかー!?
気をつけてくださいねー!!
‥‥という、みこちゃんの叫び声は、
みなさんには聞こえないのです。
それは心の叫びだから。




 
え??
木村さんが地面の何かを指差しています。

イノシシ? 足跡が??

ここでイノシシが
毛についている寄生虫を取るために
寝転がって身体をよじらせた
跡があるとおっしゃっています。

すごい! 木村さん!

ただのぬかるんだ穴にしか見えません!


イノシシ
 
みこちゃん、イノシシはしってるわ。
だって昔っからいたもの。
おこらせると獰猛になるけど、
やさしいどうぶつなのよ?
こわい?
みこちゃんは石のほうがこわいです。


 
や、やばいです
え? 昨日ぐらいの跡?!
イノシシはまだ近くにいるかもしれませんよ!

怖いから、はやく退散しましょう!


あ・・・・
 
‥‥スソさん?

 スソさーーん。

   スソさーーーーーーん‥‥。




 
水?
ここはちょっと、何か不思議な場所ですね。

何の場所?

看板が倒れています。




 
ふたたび
列石が現れました。






 
「西門」です
左右に石が組まれていて
真ん中が崩れていて、石はなくなっています。

ここにも大きな門があったのですね。
門は谷間を利用して造っていたようです。


 
ふわーーーー!
さらに降りてくると池がありました。
御所ヶ谷住吉池です。

はー、ほっとしました。
イノシシに会わずにすみました。






 
ほほうー
このような山城は北九州と瀬戸内海沿岸に
造られたそうです。

ヤマト政権は百済を救援するために、
唐・新羅と戦って(663年白村江の戦い)
破れたあとに山城を造り
唐や新羅が攻めてくるのに備えたと
考えられています。

幸い、攻めてこなかったので、
山城は使わないままだったのでしょう。

この御所ヶ谷神籠石の山城は
中でも大規模で、
残された土塁や石塁の工事方法からみても
城としての完成度が高かったようです。


 
さてさて
山を降りて
みやこ町の体育館へやってきました。

イベントの前にお昼ごはん!
みやこ町のお弁当はすっごくおいしいのです〜。


 
いよいよ
会場には
子どもを連れたお父さんお母さんや
おじいちゃん、おばあちゃんが
三々五々集まってきています。






 
これは?
土偶や土版、土笛を造るための道具が
準備されています。

貝、使いたいなー!








 
あっという間に
始まったと思ったら、1時間もすると
子どもたちは造り終わって遊び始めました。

大人のほうが、あれこれ考えたり
迷ったりしていて手が遅いようです。

自由でのびのびした作品がずらりと並びました。


 
あっ!
山城を案内してくださった木村さんは
土笛造りが得意だそうです。

土笛を造った子どもたちが集まっていました。

イベントは楽しく終了。




 
雨の夕暮れ
藤野さんの車で北九州空港へ。

あれ? このナビ‥‥
わたしたち、海にダイブ!!


 
数週間後
みやこ町から、焼かれた土偶が届きました。

子どもたちの作品の方が
ほんとに自由で良かったなーと反省。
玄関にでも飾りましょうか。

おしまい。
(次回は能登へ


スソさんへ
 
みこちゃんです。
たぶん届かないと思うけど、
スソさんへ、心のお手紙を書いています。

「イノシシが怖いから退散しましょう!」
急いで山をおりるスソさんのかばんから
みこちゃんはポロリと地面に落っこちました。
あのあとスソさんは
お昼ごはんを食べて、
土偶づくりができたんですね。
よかったです。
今回の古墳部も、
たっぷりたのしくてよかったです。

みこちゃんはあれから
しばらく山の地面で空を見上げていました。
最後にスソさんといっしょに見た、
景色のことを思い出していました。
きれいだったなー、きもちよかったなー。

しばらくすると、
「フッ、フッ、フッ、フッ」という
あらい息づかいが聞こえてきました。
イノシシです。
イノシシはみこちゃんをじっと見つめると、
ぱくりと口にくわえて、
ずんずん獣道を歩き、
そこからいちばん近くにある
ちいさな古墳まで運んでくれました。
大きな鼻を器用につかって、
みこちゃんを土に埋めるとイノシシは
「フッ、フッ、フッ、フッ」と
山の中に姿を消しました。
イノシシはおこらせると獰猛になるけど、
やさしいどうぶつなのよ?

スソさん、
古墳のそばはとても居心地がいいです。
スソさん、
もういっしょに古墳部に行けないのは、
すごく悲しいけれど、スソさん‥‥
いままでいっぱいありがとう。
たのしい思い出をいっぱいありがとう。

かわいい土偶ちゃんがやってきましたね。
これからはそのこを古墳部に
連れていってあげてください。
じゃあね、スソさん、
ありがとう、ありがとうスソさ‥‥
わーーん! わあーーーーん!
悲しいよぉ、スソさーーん!

‥‥いっぱい泣いたらすっきりしました。
ハニワはハニワらしく、
心安らかに古墳のそばで過ごします。
しずかに、たのしく。

読者さん(ていうのかしら?)のみなさんも
ありがとうございました。
どこかのちいさな古墳で
もしもちいさなハニワを見つけたら、
それはみこちゃんです。

じゃあね。
スソさん、みなさん、さようならーー。
ハニワだから、
思いきり手を振れないのが残念(笑)!

※編集部より
 担当編集者の引き継ぎにともない、
 (たまたま同じタイミングで)
 みこちゃんが同行する
 「スソさんのひとり古墳部。」は、
 本シリーズでラストとなりました。
 次シリーズを、ぜひぜひおたのしみに!!

 
2015-06-14-SUN
 
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