My恋歌ポイント
黒いジャケット 後ろ姿が
誰かと見えなくなっていく
20年前、大学生。
大好きでしかたのない
ボーイフレンドがいました。
ひと目見たときから忘れられなくて
わたしからの猛アタックの末、
つきあうことになりました。
いつも一緒に居たくて、
あちこちくっついてくる私に
彼は戸惑い気味でしたが
若いふたりは、あっという間に
なかよくなれました。
離れたくない一心で、学校にも行かず
ふたりで街中をうろうろして、
ふたりでご飯を食べて
ふたりでくっついて眠りにつきました。
そんな日々を何年も過ごしているうち
彼はギャンブルを覚えて
全く学校へ行かなくなってしまいました。
そしてとうとう、私のほうが先に
卒業することになってしまいました。
「卒業しても、変わらないから」
そう言ったのは私のほうなのに。
社会に出て、責任ある仕事をこなしている
同世代の男の子に、違う魅力を感じたりして。
そうしたら急に、大好きだった彼のことが
子どもじみて思えてきたのです。
勢いで出てしまった「さようなら」に
5分も経たないうちから後悔して
彼の後姿を追いかけてみたけれど
彼は振り向いてはくれませんでした。
若かった私は、彼の立場になって
ものを考えることが
できなかったんだと思います。
それから10年、彼のうわさを耳にしました。
髪の長い女の人と、
街を歩いていたというのです。
トレードマークだった、黒い革ジャンを着て。
大好きだったあの街で、まだ暮らしてるんだ‥‥
一緒に選んだあの革ジャン、まだ着ているのね。
それからまた10年経って
このコンテンツで、彼のことを思い出しました。
あのせつないイントロは、思い出の入り口です。 |