いつもくちびるに、季節の風とラブソングを。
こんにちは、恋歌くちずさみ委員会です。

あまずっぱい企画は、とっても好評!
たーくさんの、おたよりがとどいています。
みなさんの、
たいせつなたいせつな思い出の「恋歌」、
どんどん紹介していきますね。
なのでどしどし、おたより(メール)くださーい!

負けたくなくて、
ラジオ文化、A面だけのオールナイト、
大人の恋には謎がいっぱい
(投稿者・ゆう子あい子りょう子けい子まち子かずみひろ子まゆみ)

『横恋慕』
 歌/中島みゆき

 1982年(昭和57年)
 

My恋歌ポイント

 夜更けでごめんね 泣いててごめんね
 これっきりでよすわ 一度いうわ
 好きです あなた

背伸びして頑張って
洋楽を聞いていた中学生時代。
大学生の兄姉がいる同級生が、
さだまさしや中島みゆきを
教室に流行らせました。
誰でも見れるテレビよりも、
ラジオに慣れた彼らが
とても大人っぽく見えたものです。
ラジオの世界はとても楽しそうで、
ちょっといやらしくて魅力的でした。
深夜なので眠くて眠くて、
せめてカセットをB面に変えるまで
一時間だけ頑張ろうとするのですが、
ボタンに指をかけたまま
寝ちゃう事もしばしば でした。
そのラジオで流れた曲だと思います。

横で寝てる彼を起して欲しいのとか、
今から行くわとか、
刺激的な歌詞にドキドキでした。。
「好き」という言葉は
あの頃の私たちにとって、
とても特別で
本当に大事な相手に
そっと伝える宝物みたいなものでした。
それなのに、恋を終らせる為に
「好き」を使うなんて!
と、友達と盛り上がりました。
自分だったらどうするか、
熱く語り合いましたが、
誰一人、言われる側の身にならなかった
(なれなかった)事はご愛嬌です。
ラジオ文化、A面だけのオールナイト、
大人の恋には謎がいっぱい。
恋を言葉で説明しようとしていた、
恋に恋していたあの頃。
新しい世界を覗き見て
戸惑っている私たちにとって、
みゆきさんは自由な大人のモデルであり、
大人の世界の案内人でもありました。

大人になったものの
幸か不幸かこの歌のような
シチュエーションには遭遇せず、
あの頃のシミュレーションは無駄になっています。
‥‥今のところ。

「おとな歌」が多い中島みゆきさんですが
この横恋慕もねえ、かなりおとなです。
横恋慕はよこれんぼと読むんだぞ君たち。
ステディのいる人に恋しちゃうみたいな意味だぞ。

 恋を終らせる為に
 「好き」を使うなんて!

けだし名言。そうなんですよ、
この歌の「好きです あなた」は、
別れのせりふなんです。
ああ、おとな。

ちなみに
(ゆう子あい子りょう子けい子
 まち子かずみひろ子まゆみ)
これは、同じく中島みゆきさんの
「あの娘」の歌詞ですよん。

中島みゆきのオールナイトニッポン!

♪パヤッパ パッパヤパ パヤッパ〜

いやー、「エコー希望」「握手券」
なっつかしいなあー。
「エコー希望」は、はがきにそう書いておくと、
みゆきさんがペンネームを読むときに
エコーをかけてくれるお約束のこと。
「握手券」とは、
おもしろいはがきを書いた人などがもらえる
プレゼントでした。
これさえ持っていれば、
みゆきさんに会ったとき握手してもらえるチケット。
もちろんみゆきさんにはたいてい会えないんだけど、
そのあたりのユーモアがたのしかったなー。
めちゃくちゃ明るいんですよ、
ラジオのみゆきさん。
曲がほら、真面目なおとな歌ですから、
そのギャップがまた魅力的でねー。

そしてそう、
高校生にオールナイトニッポンはやっぱり眠い。
でも聴きたい。
なので「カセットテープで録音する作戦」は、
ぼくもやってました。
120分テープだと片面で60分。
午前2時まで聴いて、あとは録音、
‥‥するつもりが寝てしまう、
というパターンまで同じでうれしくなりました。

あのころ使っていた大切なラジカセは、
色や形やボタンの位置まで細部にわたって覚えています。

深夜ラジオをテープで録る、
そういうことがあったんですねぇ。
いやはや、当方、
ラジオといえば兄が聴くもので、
その熱中ぶりに対して
「ふぅん」と憧れておりました。
4つ下の私は専らテレビっ子。
ベストテン番組に姿を見せず、
レコードジャケット写真だけのイメージで
中島みゆきさんとは
いったいどういう魅力で人を
あんなにもひきつけるのか、と
思っておりました。

みゆきさんの歌との出会いは中学のときの
『悪女』そしてこの『横恋慕』。
つらかったり悲しかったりするけど
なんだかとてもあかるい。
オトナの歌だったなぁ。

お別れのときに好き、というの、
最近そういえばそういう映画を観たよ。
憧れます。

それにしてもと痛感するのが、
くちずさみ世代の投稿のうまさよ。

この投稿にいたっては、
「人に語れるような恋の経験」
というものさえ、ないわけですが、
それでもこれほど読ませてしまう。

例によって仮説にすぎませんが、
諳んじるほど歌詞カードを見つめ、
深夜のラジオにひとりの世界を
じっくり大切に育んでいたような人は、
ことばをつむぐ基礎的な力が
いつのまにか身についていて、
真剣になにかを伝えようとするとき
それがふつうに発揮されるのかも。

じゃなくて、同世代だから、
いろんなキーワードが
共感を呼びやすいだけ?
いや、それだけじゃないような。

「恋を言葉で説明しようとしていた、
 恋に恋していたあの頃」
という名フレーズをかみしめつつ、
また次回。

2011-09-17-SAT
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