高校生の私がはじめてつきあった男の子は
生徒会長で、目立つタイプの
いわゆる「モテる」人でした。
同じ大学付属系列の男子校と女子校で、
私も女子校の生徒会にいたことから
普通になかよくなりました。
でも、友達だと思っていました。
当時の彼は、別の学校に
取り巻きがいるほどだったし、
ガールフレンドはたくさんいるって噂だったから。
そんな彼が、別に美人でもなく目立ちもしない私と
つきあいたいって、本気だって、
彼の親友経由で伝わってきたときも
「そんなの嘘だろう」
「そうやって女の子を口説いてるのか(笑)」
と、本気にしてませんでした。
そうしたら、今度は
「好きな子ができたからって、
ガールフレンドを全部切ったらしい」
という噂が。
そして、本人に告白されました。
うぶな私が、このシチュエーションで
恋に恋する状態になってしまったのは
しかたないですよね?
それからしばらくは、本当にバラ色でした。
何せ相手は百戦錬磨(多分)、
行ったことのないようなお店にエスコートしてくれたり、
さりげないプレゼントもくれました。
この人のこと、私、好きになったんだ‥‥と思い、
ついうれしくなってはじめてしまいました。
何って?
そうです、手編みのセーター。
内緒でがんばって編んで、
もう少しで仕上がるというとき、
彼に知られてしまいました。
そうしたら。
なんと、彼は逃げてしまったのです。
いまならなんとなく理解できます。
手編みのセーターっていろんな意味で
重ーい、ですよね。
こちらが逃げるうちは追ってくるけれど
追われると逃げたくなる、
そんな恋の駆け引きなんて、当時の私は知りません。
毎日のようにかかってきていた電話が
ピタリと止まりました。
具合でも悪いのかと心配して、勇気を出して電話しても
体調が悪いから出られないと、
お母さんに取り次いでもらえませんでした。
携帯電話なんてないころです。
お互いの家に電話して、
家族に取り次いでもらっていたのです。
何日かが過ぎ、はっきりと
「フラれる予感」を感じ取った私は、
突拍子もないことをしました。
やんわりと取り次ぎを断ろうとしていた彼のお母さんに
「具合が悪くても、
こちらの用件は5分で済みますから
彼を電話口に出してください!!」
と、言い放ち、
しぶしぶ出てきた(と思われる)彼に向かって
「もう、メンドクサイことをするのはやめて、
これからは会うのをやめましょう。
それだけだから。じゃあね」
と、電話を叩き切ってしまいました。
その夜はいっぱい泣いて、
毛糸を全部ほどきました。
でも、私はフラれたんじゃない、
もうやめようって、自分で言ったんだ、
あの人は、自分の周りにいないタイプだった私に
あの人なりの理想を夢見ていただけなんだ、
そう、きっと
「私の幻を愛したの」だ、と思っていました。
この曲の歌詞のように。
カウンターパンチが効いたのか、
彼はその後、私の家に何度か電話をかけてきました。
けれど、私は絶対に電話に出ませんでした。
そうして、この恋は終わりました。
杏里のこの歌を聴くと、
ふたりとも幼かったなあ‥‥と
ほろ苦い気持ちとともに、思い出します。
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