海の見える田舎の中学生だった私。
洋楽好きで大人の恋に憧れるスポーツ少女。
中学2年の秋に体育祭の応援団の練習で
一緒になった3年生の彼。
応援団長でちょっと浅黒い肌に大きな澄んだ目。
高校生のお兄さん達とバンドを組んでいるんだって‥‥
そんな噂も後押しし、
あっという間に激しく恋してしまいました。
厳しくて優しくてカッコ良くて。
一生懸命話しかけ、出来る限り彼のそばにくっついて‥‥
応援団の練習が永遠に終わらなければいい、と心から願い
毎日毎晩、片思いの切なさにずっぽり漬かっては
ため息をついていたキンモクセイの香る季節。
そしてとうとう体育祭も終わり。
夕暮れの校庭の隅で落ち込み涙ぐんでいる私に
「泣くなよ、練習が終わってもまた会おうな」
って言ってくれた。
1ヶ月の片思いが両思いに!
その瞬間はあまりにも嬉しくてまた号泣でした。
その後、田舎の中学生だった私たちは
特にデートするわけでもなく
親もうるさいので長電話もせず、
私の家の近くの海の見える公園で
日曜日の午後に会うようになりました。
家からは5分でしたが
彼の家からは歩いて20分以上の距離。
ブランコに並んで座って
ゆらゆらしながらたわいもない話。
大人と信じていた彼が
実は末っ子で甘えん坊だったこと、
カッコよいと思っていた彼の容姿に
彼自身がコンプレックスを持っていたこと、
色んなことを私に打ち明けてくれました。
だけどそんな胸のうちを聞くたびに、
だんだんと片思いの時思い描いていた
「大人の恋」とのギャップが大きくなっていき‥‥。
彼は本当にいい人でした。
何も悪くありませんでした。
なのにある日突然、彼の熱い感じに耐えられなくなり
私は公園に行かなくなりました。
本当に理由も何も言わず突然に。
その後何回か人づてに、
彼が日曜日の公園で待っているよ、
行ってあげなよ、と聞きましたが
結局行くことはありませんでした。
そしてそのまま彼の卒業まで
まったく話もしなかったのです。
今考えると
なんてひどいことをしてしまったのだろうと‥‥。
卒業式に彼の友達から
1本のカセットテープを渡されて。
その中に入っていた曲が「銀の指輪」でした。
思い出すと胸が痛くなります。
あの頃の自分は想像の中の恋と現実の恋をうまく
調整することが出来ませんでした。
その後会うこともなく、現在に至りますがどこかでこれを
見ていたら、「ごめんなさい」と‥‥。 |