いつもくちびるに、季節の風とラブソングを。
こんにちは、恋歌くちずさみ委員会です。

あまずっぱい企画は、とっても好評!
たーくさんの、おたよりがとどいています。
みなさんの、
たいせつなたいせつな思い出の「恋歌」、
どんどん紹介していきますね。
なのでどしどし、おたより(メール)くださーい!

毎日のように聞いていた。
ぼくは、それですくわれていた。
(投稿者・むろしん)

『スローバラード』
 歌/RCサクセション

 1976年(昭和51年)
 

My恋歌ポイント

 悪い予感のかけらもないさ
 あの娘のねごとを聞いたよ
 ほんとさ 確かに聞いたんだ

YMOが大好きだった小6のぼくは、
中学生になって「いけないルージュマジック」で
はじめて清志郎を見た。
教授とチューしていた。
ユキヒロの箱根の野外ライブを録画したら
ついでに録画されたRCの「ようこそ」でしびれた。
ユキヒロ目当てで録画したそのビデオで
RCを何回もみた。バンドも始めた。
「ニーダコーゾー」みたいに叩きたかった。
高2のとき、片思いだった娘が彼女になった。
すごくうれしかったけど、
すごく不安でやきもちばかり焼いていた。
「YOU」でRCの特番やってた。
そんときの「スローバラード」の客席でアップになって
大きな口をあけて歌ってたあの娘に似ていた。
そのころは、毎日のように
「シングル・マン」を聞いていた。
ぼくは、それですくわれていた。
やけくそなぼくの、次のステップはピストルズ。
だんだんバンドに、はまっていった。
夜中の練習で、次の日のデートにも遅れた。
「バンドなんてきらい」と言われて。
でも初やきもちがちょっとうれしかった。
もう、RCはあんまり聞かなくなっていた。

クリスマスイブ、有楽町の高架下のスパゲッティー屋で
JRのCMみたいにずーっと待ったけど、
彼女は来なかった。

そんとき、たぶん、
「シングル・マン」聞いた。
泣いた。

20年も前の話かぁー。
あのころ大嫌いだったサラリーマンで4人家族なオレ。
久しぶりに、「シングル・マン通し」いってみるか。

十代、二十代でRCの
「スローバラード」を聞きまくった、
そんな経験のある人は、
多かれ少なかれ、
この歌にまつわるとくべつな思い出が
あるんじゃないかと思います。
繊細な男の子の、思いと諦めの歌。
それを清志郎があの声で、
叫ぶように、しぼりだすように、歌う。
たまらんなあ。たまらん坂だなあ。

というわけで(むろしん)さんのこの投稿、
「そう、そう、そうなんだよーっ!」
と激しく同感するひとが
たくさんいらっしゃるいっぽうで、
「よく‥‥わかんない」というひとも、
きっといらっしゃることかと思います。
「いけないルージュマジック」
「教授とチュー」
「ニーダコーゾー」
「YOU」「JRのCM」
そして「シングル・マン」。
ちかくにいる40代以上のひとに
訊いてみてねー。

メリー・クリスマス。

「シングルマン通し」っていう感覚、
若い人たちにどのくらい通じるんだろう。
その、アルバムを通しで聴くっていう感覚。

音楽データを何千曲も持ち歩いて
シャッフルで聴いたり、
そもそも1曲単位で買ったりしていると
「アルバムの意味」って
ほんとになくなっちゃいますからね。

もちろん、その意味が完全に
なくなりはしないのでしょうけど、
昔の「アルバム」はほんとうに
一曲目から最後の曲までが連なった、
ひとつの「アルバム」だったなあと、
投稿を読みながらしみじみしました。

大好きなミュージシャンの
新しい「アルバム」が出ると、
しばらくそればっかり聴いてるから、
「ある夏」とか「その冬」は、
思い出のBGMがぜんぶ
そのアルバムになっちゃうんだよね。

いま、通しで聴くとしたら、
なーんだろうなぁ。
おっと、しみじみモードですいません。

RCが視界に入ったときの衝撃は
忘れられません。
「夜のヒットスタジオ」でした。
夜の茶の間で、「ぽかーん」。
「シングルマン」はたしか
再販売されたときに買いました。
収録曲の「ヒッピーに捧ぐ」を
友だち(女子校時代)と
スキー場でリフトに乗って歌ったのが想い出。
(リフトの前後でお互い聞こえるように歌いました。
 しんしん雪の降る山に
 歌声が吸い込まれていくようでした)

ところスローバラードの作詞作曲は
忌野清志郎さんと「みかん」なんですよ。
この、「みかん」って誰や? ということになり
友だち(女子校時代)とともに
清志郎さんのインタビューを読みあさり
「みかん」は飼っていたねこだ、という
結論に至りました。
ほんとうかな?
清志郎さんの彼女のことかもしれないな。

悪い予感のかけらもないと思わせた
彼女のことかもしれないな。

こんなまっすぐな歌はあまり聴けないので
私らはとても勉強になります。

(むろしん)さんにとってそうであるように、
世の多くの40代にとってそうであるように、
「スローバラード」は
ぼくにとって特Aクラスでとくべつな曲です。
「冷静に」と自分に言い聞かせないと、
とんでもないことを書いてしまいそうなくらい、
そのくらい、まつわる思い出が多い曲です。

演劇に明け暮れていた青春の頃、
しんどいアルバイトの帰り道、
かならず、毎日‥‥ほんとにかならず、
くちずさんでいたのが、
「スローバラード」でした。
歩くリズムにちょうどよかったんです。
ウォークマンが欲しかったけど買えなくて、
仕方ないから自分で歌ってました。

ああ‥‥だめだ、
この曲の思い出を書き出すと、
このままグイグイ行数をかせいでしまう‥‥。

(むろしん)さんの、
「あのころ大嫌いだったサラリーマンで4人家族なオレ。」
という一行が、かっこいいいです。
背広の下にはいつだって「シングル・マン」の心。

クリスマスイブの日に、
この曲をここに載せられたことを幸せに思います。
ふたりで毛布にくるまって
カーラジオを聞くような恋愛のかたちは
いまはもう、ないのかもしれないけれど。

2011-12-24-SAT

最新のページへ
感想をおくる ツイートする ほぼ日ホームへ
(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN