風に乗ってふんわりと
金木犀が香る時期がやってくると、
今でも鮮明に思い出す中学2年の放課後‥‥。
私は中学2年の時、
東京から地方の中学校への転校生となりました。
都会の生徒と違う素朴で純粋な同級生に
戸惑うばかりの、トッポイ学生でした。
前の学校で入部していたクラブが、
田舎の学校では人が集まらず
部員2名と言うまさに休止状態で、
放課後、他の同級生の部活を窓辺からぼんやり眺める
退屈な毎日がつづいていました。
いい加減そんな毎日に飽き飽きしていたある日、
音楽室から流れて来たのは
男子2名の見事なまでにハモる、
『君の瞳は10000ボルト』でした。
私はそっと音楽室を覗くと、
ひとつ上の先輩男子3人が、
ギター片手に演奏し2人が歌っていたのでした。
窓辺から差し込む夕日が3人を照らし、
紅潮しながら歌う瞳はキラキラ輝き、
とても格好良くて
ときおりふんわりと香る金木犀の香りに、
見ていて胸がキュンキュンしました。
今迄まったく名前さえ知らなかった先輩が、
私の放課後をカラーに塗り替えた瞬間でした。
10月、風に揺られ窓辺から香る金木犀に、
幼かった昔が愛しく思えます。
この曲を聴くたびに、
あの時の3人の輝く瞳が今でも鮮明によみ還ります。 |