Ｍｙ恋歌ポイント

　生きたまま蝋人形の如く
　震えて眠れ　明日はもうないさ

高校２年生のバレンタイン。
５年以上片想いしていた男の子に
チョコを渡すことを決心しました。

友達に協力を頼み、お昼休みに、
彼を理科実験室前に呼び出してもらいました。
緊張のあまり膝はガクガク震え、
手は痛いほど冷たくなっていました。

「来てくれてありがとう」と言った私の声を、
頭上のスピーカーから校内放送で流れてきた
『蝋人形の館』が掻き消し、
彼に「は？」と聞き返されました。
出鼻をくじかれ意気消沈した私は、
（なぜ、今日のこのタイミングで
　『蝋人形の館』‥‥）と放送部を呪いつつ、
「これもらってください！」と、
チョコを押し付けるように彼に渡して、
教室に逃げ帰りました。

20年以上経った今でも、
テレビでデーモン閣下のお姿を拝見する度に、
複雑な気持ちになります。
ダメもとで、自分の気持ちに
区切りを付けるための告白だったので
（案の定、振られました）、
デーモン閣下は何も悪くないのです。
悪くはないのですが‥‥。

蛇足ですが、この時協力してくれた友人には、
今でも恋愛相談をしています。
私のすべての恋愛を知る、唯一の人間です。

ごめん、これ、
何度読んでも笑っちゃうわ。

わざわざバレンタインスペシャルとして
特別更新しながらこの脱力感。
「恋歌くちずさみ委員会」というコンテンツの持つ、
無駄な奥深さととんちんかんな余裕を
見せつけた気がいたします。えっへん。
どうだ、ここの読者はセンスがいいだろう。

ぐしゃぐしゃに泣ける話も、
全身の力が抜ける話も、
当人にとっては、大切な恋の思い出。
みなさんもぜひ加わってください。

しかも理科実験室前、
ガクガク震えている（みけん４１）さん。
見ばえとしてはすでにホラー調ですよ。
そして、中学からずっと、ずーっと
想い続けてきた人を前にして、
閣下にかき消されてしまった声。
なぜ、このタイミングで！
なんでやねん！

バレンタインデーには
女性がこういった羽目に陥りがちですが、
男性にはこんな「チクショー！！」な体験
いっぱいあるんでしょうね。

しかし今日はバレンタイン。
勇気をふりしぼる女たちに、幸あれ。

ほら、恋の思い出ってさ、
多少の自己演出を加味して、
へっぽこな事件なんてなかったことにして、
うつくしく、せつない記憶に
変換するなんていう、
都合のいいところがあるじゃない？

「そのとき、頭上のスピーカーから
　わたしがリクエストした
　“夜明けのMEW”がかかったのです」

‥‥とかに、したかったですよねえ。
それを許してくれない、この事件。
強制的な告白のＢＧＭ、
しかも、蝋人形の館、って‥‥。
そんなとんでもないタイミングを
なぜ笑いの神は高２の（みけん４１）さんに
与えたのでしょう‥‥ああ‥‥
恋の神様が居眠りしてたとしか
思えないです。

でもその結果、そんな親友ができて、
よかったじゃないの！　ね。

蛇足ですが、ではじまる最後の３行に、
あ、と思いました。
このかたがいちばん書きたかったのは
ひょっとしたらここなのかも、と。
いや、もちろん単なる推測なのですけれど。

おおきくこころが傷ついたときには、
友だちの存在がどれだけ心強いか。
つらくてつらくて仕方がなくても、
「なんで蝋人形の館やねーん！」
と笑い合うことができれば、だいぶたすかります。

恋愛のお話には、
友情のお話がしばしばセットになりますね。
どちらもだいじ。
とちらもいちばんたいせつなことのひとつ。

（みけん４１）さんには、
そんなに長い期間、ずーっと仲良くて、
恋愛相談をし続けている親友がいるんですね。
それって、すごいことだと思います。
バレンタインにチョコを渡そうとした瞬間に
「お前も蝋人形にしてやろうか！」
というシャウトが聞こえてくるのと同じくらい
希有なことだと思います。すばらしい。

というわけで、本日バレンタインデー、
とくべつな更新をお届けしました。

次回もおたのしみに。
次回は、えーと‥‥水曜日だから、明日だ！
みなさん、明日お会いしましょう！！