いつもくちびるに、季節の風とラブソングを。
こんにちは、恋歌くちずさみ委員会です。

あまずっぱい企画は、とっても好評!
たーくさんの、おたよりがとどいています。
みなさんの、
たいせつなたいせつな思い出の「恋歌」、
どんどん紹介していきますね。
なのでどしどし、おたより(メール)くださーい!

手を繋いで
毛布にくるまって寝ました。
(投稿者・ひとつ下の彼女)
 スローバラード
 RCサクセション

 1976年(昭和51年)
 
My恋歌ポイント

 市営グラウンドの駐車場
 あの娘と手をつないで
高校時代、自慢の彼がいました。
彼は同じ高校の一つ年上で
中学も一緒でしたが目立っていて人気者で
ちょっと不良だった彼に
声をかけるなんてことはできませんでした。

高校生になってすぐ
通学の電車で彼から声をかけてくれました。
「同じ中学だよね? 顔見たことある」と
すごくうれしかった、
憧れの先輩が私のことを知っていてくれた。
それだけで満足だったのに
その後お付き合いすることになるなんて
夢にも思いませんでした。

毎日一緒に帰りました。
いろんな人に妬まれました。
先輩や同級生、下級生からも。

中学のころからバンドをやっていた彼
高校でもダントツに上手で
文化祭のメインイベントは彼のバンドのライブでした。

一つ年上ということは
先に彼が卒業してしまいます。
卒業後もつきあってくれるかとても不安でした。

彼の卒業式から数日後の夜、彼から電話が。

車の免許を取った彼が車で来てくれました。
どうしてもしたいことがあると言う彼。

それは市営グラウンドの駐車場で私と寝ることでした。
お兄さんのお下がりだというスポーツカーの後部席で
手を繋いで毛布にくるまって寝ました。
私は涙がとまらなくて、
彼に何度もありがとうと言いました。

平凡だった中学時代、
でも高校生活は彼のおかげで薔薇色でした。

高校を卒業して、バンドが忙しくなる彼。
携帯電話など、ない時代です。
どんどん距離ができていきます。
寂しさも限界となり、
いつも相談にのっていてくれた同い年の男の子を
好きになってしまいました。

私から心が離れるなんて
自分でも信じられませんでした。

彼は現在有名アーティストのサポートメンバーとして
活躍しているそうです。
やはり私とは住む世界の違う人でした。

あの夜、ずっと繋いでいた手の感触。
今でもはっきりと思い出せます。
素敵な青春をありがとう。

よく、このコーナー宛にいただくメールに、
「いつも、YouTubeなどで、
 テーマとなっている恋歌を検索し、
 聴きながら読んでいます。」
と書かれているのですが、
この投稿はもう、ぜひとも、
『スローバラード』を聴きながら、どうぞ。

というか、読みながら、
流れてくるでしょう? あの声が。

そして、そんなふたりの別れが
彼女の心変わりからはじまるところが
ドラマやマンガとは違うところですね。

「卒業後もつきあってくれるかとても不安でした」
というのが、なんだかいいなぁ。
訊きたいことも訊けない関係が
高校時代のおつきあいを経ても
続いたということでしょう。
純愛です! うらやましい。

市営グラウンドに
連れていってくれたというのはつまり、
彼にとって理想の彼女だったのでは
ないでしょうか。
清志郎さんの歌詞には、そんな
「理想の女性」がたくさん出てくる
気がします。

思い出深いすてきな一夜ですね。

心が離れるなんて
自分でも信じられなかったという、
その気持ち。
どうしたらそれを
ずっとつかまえておくことができるのか、
考えたことがあるけれど、
ほんとうに難しいですよね。
たぶん、できない。
思い出は消えない‥‥って思いたいけれど、
たとえば最初に味わった胸の痛みは、
あとからじゃ、ぜったいに再現不能。

ところで、スポーツカーの後部席。
せまっ!
あ、その狭さが、
「スローバラード」ぽいねえ。

免許をとった彼は、
どうしても「スローバラード」をしてみたくて、
市営グラウンドの駐車場で二人で毛布にくるまりたくて、
相手に(ひとつ下の彼女)さんを選んだ。
それだけたいせつに想われていたということですね。
そして彼は、RCにもすごく夢中だった。
ぜんぶひっくるめて、
すてきな青春の思い出です、いいなぁ。

それにしてもあらためて、この歌詞のすばらしさ。
「もう、愛しかない」
そう、
「もう、愛しかない」んですよ。

‥‥(安物のアコギを手にとる)。

A   F#m
D E  A E7
A   F#m D
E  A  A7 ‥‥‥‥

思わず、ぎこちなく弾いてくちずさみました。
心だけはこもっていたと思います。
家族は迷惑そうにしていますがおかまいなしです。

それでは、また次回。

だれもがひとつは持っている
かけがえのない物語に、恋の歌を添えて。

2012-03-21-WED

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