『また会おね』
 矢野顕子

 
1980年(昭和55年)
 アルバム「ごはんができたよ」に収録

繰り返し大声で歌いながら、
島の中の好きな所を自転車で
走りました。
(投稿者・Ryoko)

わたしがここに いたことさえも
色褪せるでしょう かなしいけれど

中学校を卒業するまで島で暮らしていました。

その頃の私にとっては文字どおり
島での生活がすべてでした。

好きな先輩と交換日記をしたり、
1回だけのデート(?)で
隣町の神社に行きました。
帰りにたい焼き屋さんによって、
ぽつぽつ話してる途中
なんだかトイレに行きたくなってしまい、
でもトイレに行きたいと言えなくて
「用事を思い出しましたっ」
と言って、猛ダッシュでうちに帰ったこと。

その先輩とは、
10年後の祭りの日にまた浜で
再会しようと約束したと思うんですが、
すっかり忘れていてそれきりになってしまいました。

仲の良かった友達と、
ピコピコバッチがほしくて
富士カセットを一所懸命買った事とか、
夏休み毎日泳いだ海。

この歌を聞くと
あの一瞬一瞬をすごく思い出します。

高校に進学するとき、
クラスで私だけ家庭の事情で
島を出ることになりました。

みんなより先に合格が決まり、
なんとなくまだ受験中の周りから
疎外感を感じました。

そして、なんとなくもう二度と
島には住むことがないんだと思いました。

島の中の好きな所を、
「また会おね」を繰り返し大声で歌いながら、
一人で自転車で走りました。

30年がたって、
今は日本から遠く離れた所に住んでます。

島に戻って暮らすことはなかったけど、
去年15年ぶりに家族と訪ねてみました。

何もかもが鮮やか過ぎてびっくりしました。

よくわからないけど嬉しくて泣きたくなりました。

島はいい。

でもやっぱり今の私の居場所じゃない、
しっくりはまらない自分が
ちょっとさみしかったです。

(Ryoko)

矢野顕子さんの曲、
「恋歌」初登場です。
「また会おね」は
一時、よくコンサートの最後に歌われた、
恋歌というよりも、
さよならの歌、おわかれの歌。
誰かとさよならをするらしい主人公が
住み慣れた街を出るときの歌。
あかるくて、でもかなしい歌。
ぼくも個人的に大好きな曲です。

(Ryoko)さんのエピソードにも
ほんのり恋の話はあるけれど
「島に、さよなら」という
その風景が、とってもいいなあと思いました。
あったかくて、せつなくて。
きもちのいい潮風が吹いてきそう。

もしも自分の
最後のお別れ会をするとしたら
なんの曲で送り出してほしい?
と訊かれて、
「また会おね」かなぁ、と
答えたことがあります。
そのくらい好きな歌。

ちなみに、その会話はとしました。
シェフの曲もちゃんと憶えてますからね、
もしわたしのほうが長生きしたら
あの曲流します、ちゃんと実行します。

恋が中心であとはどうでもいい、
という感じではなく
恋が全体にまざる感じ、
とてもいいなぁと思います。
よく考えたらだいたい、そうですよね。
親とか友達とか動物とか学校とか場所とか、
いろんな関係の中に
恋の別れがあったりするんですもん。
そんで、いちばんせつない別れが
恋の相手であるのも確か。
だって、かなりの確率でもう戻らないから。

このまざりぐあいが、
「また会おね」には
すばらしく描かれている気がします。
そして、今回いただいた投稿にも!

スガノさんが悲しい話をしている。
でもそうか、
ぼくはそのとき、どの曲を流してほしいだろう?
ちょっとそれは時間をかけて考えて、
まわりの人に言っておこうかな。

(Ryoko)さんの、島のお話、
とても、とてもいいです。
せつなくて、キラキラで。

先輩は、10年後のお祭りの日に、
その浜に来たのでしょうか、どうなのでしょうか。
‥‥どちらでもいいことなのかもしれません。
その約束そのものが、美しいです。

多感な時期を過ごした場所のことを
とくべつ大事に思う気持ちは
転校の多かったぼくにもちょっとわかります。
数年前、その場所を訪れたとき、
(Ryoko)さんと同じ気持ちになりました。
泣いてしまうほどうれしいのに、
いまの居場所ではないというさみしさ。

場所に対する想いの強さは、
個人的には恋愛と同じくらいに大きく
自分のなかにあります。
その場所を思うだけで胸がキューッと切なくなる、
「場所ロマンス」とでも言いましょうか。
ああ、熊本のあの場所、今度いつ行けるかなあ‥‥。

ぼくも転校が多かったので
切なくてさわやかな投稿を共感をもって読みました。

ぼくはむしろ、お別れをしなかったんですよね。
人に対しても、場所に対しても、
お別れの儀式が苦手でした。

お別れの儀式のすぐあとに続いていく
そこでの「日常」が、許せなかったんですね。
子どもじみてますけど、ほんとに子どもでしたから。

だから、「別れる際には深く考えないようにする」
という方法を編み出して、
じつは、いまもそれを続けています。
そういう「くせ」をつけちゃったんですね。

でも、この投稿を読んで、
しっかりお別れしておけばよかったかな、
とも思いました。
どうも、ありがとうございました。

好きなアーティストなんだけど、
なぜかあのアルバム持ってない、
っていうような1枚ってありますよね。
矢野さんの『ごはんができたよ』はそれです。
今度、買おう。
スガノのその話を聞いたら、
聴かないわけにいかないよ。

たくさんの人のいろんなきっかけになる投稿、
まだまだ、お待ちしてます。

 

2012-04-25-WED

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