『西部警察PART-IIテーマ
 「ワンダフル・ガイズ」』

 
1982年(昭和57年)

田舎の中学生だった
私たちには、
意思を確認しあった後の
その先がなかった。
  (投稿者・夢でしか会えない)

トランペットの
ファンファーレ的な合いの手

私の思い出の恋歌には歌詞がないので、
厳密にはこのコーナーでは反則かもしれないですね。

でも皆さんの投稿を読むうちに、
「あのころ」の甘酸っぱい思いが蘇ってきたので
メールします。

私の通っていた小学校では
4年生から部活動をすることを奨励されていました。
私が早速入ったのは鼓笛隊。
そして部活動では音楽だけでなく、
それまでほとんど意識したことのなかった
「先輩」「後輩」というヒエラルキーも
学ぶことになりました。
そして、私は1年先輩(5年生)の
トランペットを吹く男子のことを好きになりました。

それまでちょっといいな、
と思っていた男の子たちはクラスメートだったし、
告白やら両思いやらという
大事(おおごと)とも無縁でした。

それがトランペットの彼に恋した途端、
「好き」という感情は
自分が気づかないうちにあふれ出るもの、
そして自分では制御できない感情なんだ、
ということを、子供ながらわかり始めたのです。
みんなで演奏していても、
ついつい目がいってしまう彼の横顔。
トランペットは全部で10人前後いたと思いますが、
私には彼の音だけちゃんと独立して聞こえました。

とはいえ、そこはまだ小学生。
「好き」の次に何があるのか、
その感情をどう処理するのか、
まったく訳がわからず、
彼のトランペットを吹く姿を見つめるだけで、
彼の卒業までの2年が過ぎました。

そして私が中学生になったとき、
その学校の吹奏楽部に彼はいました。
今度はホルンを吹いていて、相変わらず格好良かった。
私も迷わず入部を決めました。
今度は演奏中にぼうっを彼を見つめるわけにはいきません。
「周りにばれたらやばい」という知恵がついてきたのと、
音楽に真剣に取り組むようになったからです。
それでも彼に恋する気持ちはまったく揺らぎませんでした。

彼が中学を卒業する直前、初めてデートに誘われました。
私たちの住む町から二人で電車に乗って、
プラネタリウムを見に。
これでお互いの意思の確認は
できたように思われたのですが・・・・
デートは一度きりでおしまい。
その後、何があったということもなく、
私(と彼)の感情も自然消滅してしまったようでした。

田舎の中学生だった私たちには、
意思を確認しあった後(いわゆる両思いというやつですね)
のその先がなかった。
ずっと一緒にいようとしても、学校やら塾やらがあるし、
自由になるお金も時間もない。
手をつないでも、
汗ばんだ自分の手のひらが恥ずかしいばかり。
後から自分が経験したどの恋愛感情にも劣らない
激しい気持ちがあったにもかかわらず、
中学生の私(と彼)には
1度デートに出かけることが精一杯だったのです。

それから5年ほど経ったある日。
私がアルバイトしていた喫茶店に、彼が偶然現れました。
私が彼に気づいたのは、
彼が帰るときに私がレジにいたから。
おつりを返す手がめちゃくちゃ震えました。
彼より一足先に、
ドアを開けて外に出る女性の後姿が見えました。


(夢でしか会えない)

うわー、名作!

彼がトランペットを吹いていたのは
小学生のときですから、
「西部警察」は小学校で奏でられていたのですね。
その小学校、シブい!
と、まずはそこに心をつかまれながら、

歌手名→わかりません
My恋歌ポイント→
トランペットのファンファーレ的な合いの手

の部分をげらげら笑って読み進めたら‥‥
なんとも誠実で一生懸命な、恋の思い出の投稿でした。

 「好き」の次に何があるのか、
 その感情をどう処理するのか、
 まったく訳がわからない。

当コンテンツでも何度かとりあげたテーマ、
「行き場を見つけられない幼い恋」が描かれています。

この投稿のすごいところは、
その思い出が「あまずっぱい」
ということだけで語られていないところでしょう。
「いい思い出です」だけではおさまらない、
当時のやりきれなさや、悔しさが、
まるで今のことのようにひりひりと伝わってきます。

 手をつないでも、
 汗ばんだ自分の手のひらが恥ずかしいばかり。

このフレーズそのものが、もう名作。

 後から自分が経験したどの恋愛感情にも劣らない
 激しい気持ちがあったにもかかわらず、
 1度デートに出かけることが精一杯だったのです。

ほんとうに、もどかしかったんでしょうねぇ。

そして、最後の一行‥‥。
小説のような読後感です。
うーーーん‥‥こりゃぁ名作だぁ。

ほんと、いい。これ。
何度も読み返したくなる。
で、読むたびに、違うところがじんとくるね。

そんなにいいのに、
上の方にスクロールすると、
渡さんと石原さんが
ドーーーンといらっしゃって‥‥。
しかし、すごいジャケットだな、これ‥‥。

投稿はほんとうにすばらしいです。
プラネタリウム、トランペット‥‥。
出てくる単語や風景がどれも瑞々しくて。

おつりを渡したとき、
彼は気づいたのかな。

そう、「恋歌」に寄せられる投稿は、
すとん、と終わってるからいいんですよね。
そういう事実を伝えようとしているだけだから、
そこまでの話は、そこまでで終わる。

それで、読んでいて、
切なさがこっちにうつる。
いいなぁ、これ。

その先がなかった、というところで
スクロールの手が止まりました。

そうか、その先がないと、
続かないんだ。
シェー!
知りませんでした、この歳になるまで。
意思を確認するだけで
ドラマも映画もハッピーエンドですが、
そうじゃない。
そこからどういう展開になるか、
進む方向はどっちなのか、
将来を語り合うのか。
そういうのがなきゃダメなんだね‥‥。

「後から自分が経験した
 どの恋愛感情にも劣らない
 激しい気持ちがあったにもかかわらず」
というところ、
歯がゆいったらありません。
小学生のころから見続けてきた人なのに。

大門、木暮警視。ライフル、ブランデー。
この音楽、うきうきして派手で
昔から好きでしたが、
今日からなんとなく、
とても切ないテーマソングに変わりそうです。

いい。いい!
恋に落ちてからの
「私には彼の音だけちゃんと独立して聞こえました。」
というあたりもいいし、
それが「西部警察」だったというのもいいし、
小中高、そしてそのあとの
恋のおわりかたも、いい!
(って言ったらなんだけど、いい!)

せつなく、そして、ほのかに、
ちょっと笑顔になる感じです。

インストゥルメンタルにまつわる想い出というと
刑事コロンボのテーマ曲を聞くと
床掃除をしなくちゃ! と反射的に思います。
(理由:掃除の時間のテーマ曲だったから。)
そういう想い出に比べて
このトランペットのとくべつなこと!

もし、この恋歌口ずさみ委員会に出てくる曲で
独自にプレイリストをつくってたら、
ユーミンのあとに「西部警察」が
出てくるかもしれないと思うと、
また、すごいなー。
そんな人はいないかな?

ではまた明日!

 

2012-04-30-MON

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