『A HAPPY NEW YEAR』
 松任谷由実

 
1981年(昭和56年)
 アルバム『昨晩お会いしましょう』
 収録曲

彼はわたしの
巫女姿を見るためだけに、
地元へ来てくれました。
(投稿者・mina)

今年も沢山いいことが
あなたにあるように いつも いつも

26歳の私ですが、
恋歌くちずさみ委員会いつも楽しく拝見しています。
昨日の雪で、ふと思い出したので投稿させてください。

大学一年の大晦日、
神社で巫女さんのアルバイトをしていた私は
夜の10時から“出勤”の予定でした。
そんな2004年12月31日、外は雪。
わたしの住む町にもしんしんと雪がふっていました。

新年を迎えるのだから、
身も心も清めてから仕事に行こう、と
お風呂に浸かっているとき、聞いていたのがこの歌。
世界には私しかいないんじゃないかと思えるほど
静かに雪が降る大晦日の夜、
ひんやりしたお風呂場で
髪を洗いながらこの歌を聴きました。

大好きな彼もその頃はまだ学生で、
年末年始は実家に帰省中。
新年最初に逢う人、とはいかな いけれど
でも、気持ちの上では距離なんて関係ない。
今よりもっともっと幼くて、若くて、
何もかもに夢中でした。
そして三が日、故郷から戻ってきた彼は
わたしの巫女姿を見るためだけに、
地元へ来てくれました。
「バイトがあるから」といいながら、
往復2時間かけて5分の逢瀬。
嬉しかった。

それから何年もの時が過ぎて、いろんなことがあって…
お互い大好きなまま、辛い別れを迎えてしまったけれど
別の恋人が出来た今も、
凛と冷えた雪の日にこの曲を聴くと
大好きだった彼に、
今年も沢山いいことがありますようにと祈ってしまいます。

(mina)

なんて美しい投稿でしょう。

 大晦日
 巫女さんのアルバイト
 静かに雪が降る大晦日の夜
 ひんやりしたお風呂場
 往復2時間かけて5分の逢瀬‥‥

一枚の絵をながめているような、
そんな気持ちになりました。

「今年も沢山いいことがありますように」
と祈る、会わない人がいる。
それはほんとうに豊かな財産ですね。

静けさが伝わってくる投稿です。
季節外れはご愛敬。

なつかしさも、悲しさも、愛しさも、
静けさに包まれて雪の中。
いろいろとことばを足すのが
なんだか、ためらわれるような。

「世界には私しかいないんじゃないか
 と思えるほど静かに雪が降る」
というフレーズに、
酒井駒子さんの名作絵本、
『ゆきがやんだら』を思い浮かべました。

ほんとうにぜんぶが美しいです。
すばらしい恋歌、
すばらしい恋。

新年って、特別な静けさがあります。
節目のときに
好きな人に思いを募らせることも
ほんとうに、よくわかります!

ユーミンの『A HAPPY NEW YEAR』は
そんな自分の情景が
とてもよく思い起こされる歌。
きっと思い出のある人が
多いんじゃないでしょうか。

「往復2時間かけて5分の逢瀬。
 嬉しかった」

嬉しかったですよね。
自分がそうしてもらったかのように
読んでいて嬉しい。
ああー、いいなぁー。いいー!

ひんやりしたお風呂場のタイルとか、
最初のかけ湯の熱さとか、
曇る窓ガラスとか、
そんなことを想像し、また思い出しました。
「ひんやりしたお風呂場」って
なんだかものがたりがあるなあ。
暖房完備のバスルームじゃ、
こうはいかないものね。

『HAPPY NEW YEAR』は、
わかれうたではなくって、
恋人に逢いたくて、大晦日の街を急ぐ歌。
ユーミンの曲って
「あんなに夢中だったふたりなのにね」
というテーマが(私感ですが)
多いような気がしてるんですけど、
こういう「しあわせ」を歌ったうたも多いですよね。
けれども、(mina)さんの投稿を読んだあとは
なんだか、とってもせつない曲に思えてきました。
そういうのも、わるくない。

ではまた次の水曜に! 投稿もおまちしてまーす。

 

2012-05-12-SAT

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