『勇気100%』
 光GENJI

 
1993年(平成5年)

 言わずにいたら、
 絶対後悔する。
 そう思いました。
 (投稿者・はちまきの
      おにいちゃんファン)

まだ涙だけで終わる
ときじゃないだろう

今日は私の誕生日です。

長いこと付き合っている
彼氏には申し訳ないのだけれど、
年に数回だけ、初恋の人のことを思い出す、
大切な日でもあります。

彼は、幼稚園時代からの幼なじみです。
当時は、毎日毎日2人で遊んでいました。
幼稚園ぐらいの頃って、
「好き」ってどういうことかも分からないくせに、
「○○くんが好きー」なんて言ったりしますよね。
でも私と彼とは、一切そんな気配のない、
本当にただの遊び友達でした。

小学校に入って、
彼は低学年の男子特有のやんちゃさを持ち始め、
別々のクラスになったこともあり、
何となく距離を置くようになりました。

4年生になって、久しぶりに同じクラスになって、
席が隣同士になったとき、
何の前触れもきっかけもなかったけど、分かったんです。
「あぁ、私、この子が好きだ」って。

中学に入って、私と彼は同じ吹奏楽部に入りました。
お世辞にも、音楽的センスがあったとは言えない彼。
でも私は知っていました。
家で楽譜を読んだり、
古いオルガンで音を取ったりしていること。
祖母が、彼のおばあさんとの井戸端会議で知ったことを、
逐一私に教えてくれるのです。
祖母にとっては、ただの近所の子どもの話でも、
私にとっては貴重な情報。
誰も知らない彼の努力を知っていることが優越感でした。

でも、告白しようなんて思いもよらなかった。
だって彼、背が私よりずっと小さかったんです。
勉強も私の方がずっとできたし、嫌だろうなって思ったから。
このまま、淡い片思いのままで、仲間のままでいたかった。
今思えば、逃げていただけなんですけど。

そうして私は、思いを告げないまま卒業し、
彼とは別々の高校に進学しました。
高校に行ったら、
きっとステキな出会いもあるだろうと思っていました。

でも、2年経っても誰のことも好きにならなかった。

下校途中にばったり会った彼は、
高校にいるどんな他の男の子よりも、
鮮やかに見えました。

「彼が好き」確信しても、告白する勇気は持てなくて。
『勇気100%』は、そんな頃、
偶然高校の友達から借りたCDに入っていた曲です。
そうだ、言わずにいたら、絶対後悔する。
まだ涙だけで終わるときじゃない。
そう思いました。

それからの私はもう必死でした。
付き合えなくていい、とにかく思いを伝えたい。
中学の部活の演奏会に、
後輩への差し入れと称してお菓子を作って行って、
余ったふりして彼にあげたり、
バレンタインには彼の家までチョコレートを持って行って、
でも渡す勇気がなくてポストに入れて帰ったり。
今思えば、彼の家族はみんな私のことを知っているのに、
今でも思い出すだけで赤面してしまいます。

そんな必死のアピールの末、
振られるのは分かってたけど、思い切って彼を呼び出して、
告白して、やっぱり振られて、
私の8年間に及ぶ初恋は終わりました。

もう誰も好きになれないんじゃないか、なんて思ったけど、
不思議なことに、振られた4ヶ月後には、
あんなに誰にも惹かれなかった高校で、
好きな男の子ができました。

私に、人を好きになる自信を与えてくれた彼。
今でも、年に2回、
お互いの誕生日に携帯メールを送り合う仲です。

でも、そんな関係を「素敵だね」と言ってくれる彼氏の元に
私は帰るのです。

(はちまきのおにいちゃんファン)

8年間に及ぶ初恋が終わった4ヵ月後に、
誰も好きになれなかった高校で、
好きな人ができた。

こういうメールを読むと、
振られることすら、なにか、
健やかな営みの一環であるような気がします。

ストレッチすることで、
ひとの本来の動きを取り戻す、
とでもいうのかな。

誕生日に書かれた素敵な恋歌メールを
どうもありがとうございました。
いや、しかし、光GENJIの曲が
ここに登場するとは思いませんでした。

自分たちがくちずさんできたかどうかよりも
そこに添えられている思い出のほうが、
この場では、重要ですね。

『ガープの世界』っていう大好きな小説のなかに
こんなシーンがあるんです。
主人公ガープは、奥さんとなる女性と
大学時代に知りあうんですけれど、
のちに(ずいぶんあとに)しみじみ言うんです。
きみともっと早く知りあいたかったな、と。
こどものころから見ていたかった、
きみのむねがふくらんでいくのを見たかった、
というようなことを、ロマンチックに。
奥さんは「そのかわりしわくちゃのおばあちゃんに
なっていくのが見られるわ」なんて言うんですけど。

ガープほどじゃないにせよ、
誰かを好きになったときって
同じような気持ちになります。
どんな学生時代だったんだろう。
どんな子供時代だったんだろう。
知りたくて知りたくてたまらなくなる。

だからかな、(はちまきのおにいちゃんファン)さんの
この投稿を、ずっとうらやましい気持ちで読みました。
光GENJIがローラースケートをはいて
TVのなかでくるくる、きらきら、
踊ってた頃を思い出しながら。

超・ちなみに、ですけど、
背の高低差で別れちゃう関係を描いた名曲に
ユーミンの「5cmの向う岸」というものもあります。
これまたせつなく素敵な曲です。

ごぞんじ、『忍たま乱太郎』のテーマソング。
うちの子がまだちいさいころ
いっしょによくみた番組なので、
恋歌ではないですが歌詞がつるつると出てきます。

光GENJIのほかにも、
いくつかのグループにカバーされていますよね。
調べてみたらことしは、Sexy Zoneが歌っていました。
すごいことです、19年も歌い継がれているなんて。

(はちまきのおにいちゃんファン)さんの投稿、
ずっとあたたかい気持ちになりながら読みました。
現在の彼氏の寛容さも含めて、あたたかい。

そして、
助演女優賞は、おばあちゃん!
彼の努力をそっと教えてくれたおばあちゃんの存在。
孫の恋心に気づいていたかもしれないわけで。
しみじみ、いいなぁ〜、と。
そんなおばあちゃんの出演もまた、
この物語にあたたかさを与えていると思いました。

わたくしも、子育て真っ最中のときに
『忍たま乱太郎』を毎日観ていました。
個人的に、なぜかこういうストレートな
勇気出せ系の歌にすごく弱いのです。
(例:ブルーハーツの「人にやさしく」
 中島みゆきさんの「ファイト!」など)
ですから、慣れない時間を過ごす毎日、
幼な子をだっこした夕方、
この歌に勇気づけられていました。
ありがとう、と言いたくなる歌を、
いまのいままで
光GENJIの歌だと知らなかった。
へーーー、であります。

お誕生日に思い出す初恋の人、すてきですね。
きっと幼なじみだからこそでしょう、
ちいさいころのままの親しみがずっとつづく。
うらやましいなぁ。
やさしい彼氏がいらっしゃるのも、もう
読んでいてうれしい。
彼氏はやさしいのに限るよ。
勇気出してよかったですね!
お誕生日、おめでとうございました!

それでは、また次の土曜日に。
みなさまの投稿、たのしみにお待ちしています!

 

2012-06-20-WED

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