『蒼いフォトグラフ』
 松田聖子

 
1983年(昭和58年)
 『瞳はダイアモンド』カップリング曲

 そう思ったのは
 またもや私だけでした。
 (1962生まれの
   「赤いスイトピー」世代)

次に誰か好きになっても
こんなピュアに愛せないわ
一番綺麗な風に あなたと吹かれてたから

昨日、大学時代にずっと片想いしていた彼と、
23年ぶりに羽田空港で再会しました。

18歳で出会い、19歳の時に告白したけれど、
やんわりフラれてから、
お互いの誕生日や、バレンタインに
学食で待ち合わせてプレゼントを渡すという
何とも可愛らしいことを続けました。
4年生になって、
卒業後は地元に戻る私を思ってくれてか、
伊丹空港にドライブしたのが初デートでした。
そのときの写真が、本当に笑っちゃうくらい
幼く若く純粋だったので、
『蒼いフォトグラフ』の歌詞が
ドストライクに私の心を切なくさせます。

卒業間近、サークルのX'mas partyに
2人で参加したり、
それなりに愛は深まっていたと
勘違いしてたのは私だけで、
つきあうことはできずに卒業してしまいました‥‥。

26歳のときに、やはりX'mas partyで再会し、
深夜のドライブまでしたのに、
「もしかしたら結婚するのかも‥‥」
と勘違いしたのは、やはり私だけで、
それから数ヶ月後、
「結婚しました」のハガキがいきなり彼から届き、
私の長い長い片想いが終わりました。

そんな彼と、Facebook上で
再会したのが今年の1月。
「今度、関東出張があるから会いませんか」
とメッセージをいただきました。
ずっとずっと想い出の箱に
大切にしまっていた彼が、
またリアルになる‥‥ドキドキ。

約束が決まってからの1ヶ月。
洋服選び、ネイル選び、
アクセサリー選びにときめいた日々でした。
そして、昨日、羽田発20時20分で
大阪に戻る彼と過ごす4時間弱の時間。

滑走路が見えるレストランに横に並んで座り、
出会ってから30年間の
忘れていた話、赤面話で盛り上がりました。

暗くなって、展望デッキの手摺の前で
滑走路を眺めているときに、
肩に手を回して
キスしてくれるかなと期待したのは、
またもや私だけで、
明るく笑いながら、
「伊丹、羽田やから、次は関空やな」
と、彼は出口に向かって歩き始めてしまいました‥‥。
搭乗口に向かう時間になって、
「これからもよろしくな」
と彼が言って、強く握手して別れました。
リムジンバスを待つ私に、
搭乗フロアの彼からメッセージがありました。
「お互い年はとったけど、
 雰囲気は、あの頃のままでした。
 また、会えると良いですね」
49歳になって再会しても、
引き続きプラトニック‥‥‥‥。
このまま純愛を貫くことこそが
美しさなのかもしれないと、
1日過ぎても、なお放心状態の私です‥‥。


(1962生まれの「赤いスイトピー」世代)

聖子ちゃんの『蒼いフォトグラフ』です。
この歌、お好きな方が多いのではないでしょうか。
松田聖子、松本隆、呉田軽穂、松任谷正隆の
ゴールデンチーム。
我々もまちがいなく合唱してしまう系の歌です。
前奏がチャーチャーチャーチャーチャッ!
っていうかんじなんですよね。

そんななか、いただいた
「昨日の出来事」までをつづった
この投稿です。
19歳のときに振られてから49歳までの
3度めの正直。30年ですよ?
もう、彼よ、すごい。
ミスター蒼いフォトグラフだよ。
ここまできたら、40年後も50年後も
「そう思ったのは私だけ」という
抜け出せないすごろくのような
すてきなエピソードが何層にも続いてほしいです!

わぁ。
キスするのか? 次はするのか?
こんど会ったらどうなっちゃうの?
なんて読んでおりましたら、
ついに、キスしないままに、現在に。

これまで恋歌委員会の投稿には
「なぜそこでキスをしちゃうかな男」が
かずかずあらわれてきたわけです。
そのたびにわれわれ「そこで、しちゃう?!」と、
運命のトリガーが引かれるのを
なすすべもなく見てきました。
そのキスは、恋の進展を、どうしたって、加速させる。
それは、終わりに向かうドライブだったりすることも、
しばし、ありました。
なにしろ突然のキスは「ブレーキ踏みませんよ」の合図。
そのことについていままで
男を責めてきた気がしますけど、
(1962生まれの「赤いスイトピー」世代)さんの
おたよりを読んで、ハッ。
男ばかりを責めてはなりますまい。
キスを誘うのは、女。
その魔法にかかるのが、男。
そういうことなのかもしれない、と。
ていうか、どっちでもいいんですよね。
恋を、どっちが仕掛けたかなんてね。

ところで、伊丹空港で初デート、羽田空港で再会。
そんなシチュエーションも、ドラマチックです。
そして、ふたりの関係、ぼくはとても素敵だと思います。

あの、失礼かもしれないんですけど、
この投稿が、読むたびぼくはおかしくて。
なんていうんでしょう、こう、
運命の曲がり角に差しかかるたび、
「ぽわわわわーん」と期待しては、
あっさり彼が帰ってしまう、
みたいなことがくり返されて、
ほんとうに、ほのぼのしたコメディを
観るみたいに笑っちゃうんです。

あっ、まさに、ラブコメを読んでる感覚?
とくに、26歳のときの
「もしかしたら結婚するのかも‥‥」
が、いいんだよなー。急に結婚て。
「プラトニック」と「純愛」という
ことばのつかわれかたが
微妙に自己中心なのもおかしい。

いや、このお話、ぼくはとっても好きです。
ありがとうございました!

(1962生まれの「赤いスイトピー」世代)さん、
あなたの投稿に
いつもにまして感情移入してしまいました。
その理由は、ぼく自身も
1962生まれの「赤いスイトピー」世代だからです。

ああ‥‥スガノさんが言った
「ミスター蒼いフォトグラフ」っていうのも、
武井さんが書いた
「なぜそこでキスをしちゃうかな男」という表現も、
おもしろいなぁ。
まさしく! だと思いました。
永田さんの「ラブコメっぽい」という感想にも
大きく首をたてにふります。
これ、主人公が男性だったら、
「フーテンの寅さん」みたいな
ハートフルな物語になりますよね、きっと。
それはそれで、いいなぁ。

というわけで、4人目のコメントは、
語り尽くされたあとなのでなかなかむつかしいです(笑)。

最後に、個人的な希望を。
どうぞこのまま何もない関係が続きますように‥‥。
どうぞこのまま。
勝手な希望ですが、どうぞこのまま。

たとえば、60歳になったときも同じように、
「羽田で4時間弱」を過ごせたら、
それはすばらしいことですよねー。

次回は、水曜日に。
ご紹介したいすてきな投稿は着実に、
ぼくらの手もとに届いています。
よろしければ、あなたの思い出も、ぜひ。

 

2012-07-14-SAT

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