『ためらい』
 松任谷由実

 
1980年(昭和55年)
 アルバム『時のないホテル』収録曲

 
 シャツのひじをつまむ歌詞。
今はちっともヘンだと
思いません。(花)
手をつなぐほど 若くないから
あなたのシャツのひじのあたりを 
つまんで歩いていたの

♪手をつなぐほど 若くないから
 あなたのシャツのひじのあたりを 
 つまんで歩いていたの♪

この歌、昔から好きでした、メロディが。
詩かメロディか、といわれれば、
私はメロディ派なんですが、
ときどきふと立ち止まって聴き入ると
「おおおっ!」と思うことがあります。
この歌もそう。
年とると手つなぐの恥ずかしくなっちゃうのかな。
でもヘンじゃない???
シャツの袖とかつまんでさー。
‥‥最初はそんな感想を持ちました。

ところで、今わたしは40代のシングルマザー。
先日高校の同窓会があり、
ある男子と仲良くなったんです。

彼、元サッカー部。純情系。
わたし、元帰宅部。早熟系。
クラスも違ったし、高校時代は
ほとんど接点がありませんでした。

同窓会からしばらくして、
初めてふたりきりで会うことになりました。
もうイイ歳こいた大人なんで
案の定そういう雰囲気になってしまったのですが、
高校時代は早熟でも現在は身持ちの固い私は
「ごめんね、友達としてしかつきあえない」
とお断り。
(スミマセン、彼は既婚です)
恋愛感情もなかったですし。
それからは、たまに一緒に公園をランニングという
「ともだちライン厳守」のつきあいに。

待ち合わせして、一緒に並んで走り、
自動販売機でスポーツドリンクを買って
飲んで少し話して
「じゃあまた」と別れる。そんな感じです。

話すことは、お天気の話だったり、
昨日のプロ野球の話だったり、
そこにある花や木のことだったり、
ほんとうに、たわいもないことばかり。

そうして、ともだちラインを引いて数ヶ月。
おかしなものですね。
今、わたしは、たまらなく
その一線を越えてしまいたい。

でもなんか、言えないんです。
言葉はおろか態度にすら出せない。
自分からメールも電話もできないし、
仕事中に彼の日焼けした腕とか、
笑ったときのしわとか、
髪の毛の感じとか思っていたりしてハッとします。
ランニング中、腕なんかが触れたりすると、
平静を保つのが大変です。

で、胸をよぎる、この歌。
♪あなたの腕のひじのあたりを、
 つまんで歩いていたの♪

今はちっともヘンだと思いません。
むしろ、よくぞ、つまんだ!と言いたい。
わたしだってつまみたい!

どうしたらいいのでしょうか。

ちなみに次のデートは、プロ野球観戦の予定です。

(花)

あああ、どうしよう。
またわたしたちの大好きなアルバム
『時のないホテル』が
出てきてしまいましたよ、シェフ!
シェフー!
ユーミンの歌詞がすばらしく、また、
この投稿もすばらしく、
(「わたしだってつまみたい!」の
 滑り込み書きがたまりません)
言いたいことがもう、たくさんあるんですが、
いやぁ、(花)さん、これは
「いかん、いかんよなー」のパターンですよ。
鼻血! バターン。

わー、出たー!
ユーミンをばりばりに聞いてたほうじゃないのに
『時のないホテル』はちょっと特別なアルバムで!
セシルの週末、も、雨に消えたジョガー、も、
よそゆき顔で、も、5cmの向こう岸、も、
もちろん水の影、も、そして、ためらい、も、
ねー‥‥(じんわり、去来)。

さてさて、スガノ鼻血物件ですね。
純情系サッカー部男子と
早熟系帰宅部女子!
接点なんて、まったくなかったはずのふたりが、
同窓会をきっかけに‥‥。
仕掛けたのはもしかしたら
彼のほうだったかもしれないけど、
いま、寄り添って行っているのは、
あきらかに(花)さんのほうですよね。
だってもと帰宅部の(花)さんが
「一緒に並んで走」って
「自動販売機でスポーツドリンク買って飲んで」、
次のデートは「プロ野球観戦」って!

「どうしたらいいのでしょうか。」

どうしたらいいんだろう?
好きになったこと自体は、
ちっともわるいことじゃない、そう思うけれど、
進むかとどまるか。
自分だったらどうするかなあって考えても
まったく答えがみつかりません。
親戚のおじさんなら「やめとけ」と言うけど。

結論が出ないままに次の人にパス!

わ、いや、あの、そうですね。
「いかんよなー」物件に関しては
あれこれ言う余裕がないのですが、
私、これだけは胸を張って言えます!

プロ野球観戦はいいぞー。
行ってらっしゃい、行ってらっしゃい。
白熱の投手戦とか、
終盤もつれるシーソーゲームとか見たら、
袖口つまむどころか、
メガホン叩きながら
「たのむぞーーー!」と絶叫、
みたいなことになって、
なにもかもスカッと吹っ飛ぶよ!

恋愛のモヤモヤなんて、
スポーツで吹っ飛ばすのさ!
‥‥とか言う体育教師的な人はよくいたけど、
ウソだよねぇ、そんなの。
吹っ飛ぶかっつーの。
ていうか、そもそもいっしょに走ったりしてるし。

(足もとに転がる、
 鼻血まみれの同僚を見つめながら)
読者の(花)さんという方から、
「どうしたらいいのでしょうか」
というご相談をいただきました‥‥。

武井さんがサッとパスしたように、
永田さんが野球の話でうやむやにしたように、
これはたいへん、むつかしいご相談です。

個人的なアドバイスとしては、
「どうぞそのまま」になります。
「ともだちライン厳守」のままで、になります。
だって‥‥
いかん、いかんよーー、やっぱり!
盛り上がってるのはわかるけど!

でも‥‥(花)さんのいまの気持ちは、
「どうしたらいいのでしょうか」と言いながらも、
一線を越える気まんまんですよね‥‥。

うーーーん‥‥いやぁ、あっぶない!
進むかとどまるか。
進むとすれば、
そりゃあイバラの道ですよ、(花)さん。
とどまることも、たいへんな決意だけど、
そっちの方がまだ傷がすくないと思います。
だから、ね‥‥。

恋することは自由。
人の恋路に口出しは無用。
そういうことは承知しているつもりでも、
ついつい親戚のおじさんモードで心配してしまいます。

結論を出せない無力さを噛みしめつつ、
鼻血まみれの同僚を助けおこしながら、
今回の「くちずさみ委員会」を
終わろうと思います(しゃがみこむ)。

ああ‥‥しっかりして‥‥
鼻血と土で、顔がドロドロだ。

‥‥スガノさんっ!(つよく頬を張る)

 

2012-07-28-SAT

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