『BEHIND THE MASK』 YMO (Yellow Magic Orchestra) 1979年(昭和54年)
どうしたいのか、 どうなりたいのか わからない ままだったのです。 (ちづる)
「俺の弟はどうでしょうか?」 そんなひとことで始まった長い恋。 もがいて、もがいて、30年経って、 やっとわかった「どうなりたかったのか」。 早い、遅いということは、きっと、なくて、 この恋に決着をつけるには、 それだけの時間が必要だったのかもしれないですね。 みんな否応なくおとなになって、 他愛ない会話のなかだけで生きていくことは、 とてもむずかしくなって。 「またあしたねー!」 と、もうなんの疑いもなく言えた頃は、 ほんと、かすんで見えないくらい、遠くて。 それでも、その風景や光景は、 (個人的な思いですけど) ぜったいに今の力になってると、 そう思うのです。 中学生のときにYMO。 まさしくドンピシャ、同世代です。 クラスにはYMOいいよね! なんて 話せる女子はいなかったよー。 うらやましいなー。
好きだった人に同窓会で再会。 そういう投稿、好きなんです。 投稿者の方の、それまでの、 おおげさに言えば「人生」をすこし感じ取れたりして。 さて、この投稿の同窓会はどうなのか? と読みました。 せつなくほのぼのと終わるのか、 それともスリリングな「焼けぼっくい展開」なのか、 果たして。 ちょっと、おどろきました。 (ちづる)さんが見つけた答えにびっくり。 くすぶりつづけたその気持ちの正体は‥‥ 「私は、あの頃に戻りたかったのです。」 たぶん、この答えは、 答えとしては不十分なのだと思います。 (ちづる)さんご自身も「建前なのかも」と おっしゃっていますよね。 でもぼくは、この一行が胸に響きました。 これは(ちづる)さんが自分を落ち着かせるための、 理屈のようなものなのかもしれません。 とはいえあの頃、脳天気にたのしかったことは しびれるほどにまぎれもない事実だったわけで。 ただただ「大好き」な気持ちも、まだ胸にあり。 そのあたりを気持ちがぐるぐると駆け巡る‥‥ そう、「もがき」ですよね。 そういう「もがき」は、たぶん、 誰のなかにもかたちをかえてあるのでしょう。 たいへんな「もがき」があるほどに、 その人の「味」や「厚み」が出るのかもしれません。 いずれにしても、 「決して、今が不幸せなのではありません。」 という一行に、「それがなにより」と感じました。
「恋歌くちずさみ委員会」 に寄せられる投稿には、 「ラスト3行の大どんでん返し」 「あっという間に経つ10年」など、 ここでしか読めない いくつかの際だった特長があるのですが、 今回の投稿に代表される 「それはそれとして別の人と結婚」 というパターンがぼくはけっこう好きです。 ひとつの物事を別の角度から見れば 必ずちがったふうに語れるように、 どこから見ても同じように見える まんまるの球体みたいな出来事って まず、ないと思うんです。 たぶん、「就職先で知り合った」 いまのダンナさんを主役にして 別の恋歌を鳴らすこともできる。 でも、この投稿と向き合ってるあいだは YMOの懐かしい曲が鳴っている。 「恋歌くちずさみ委員会」という 思い出の投稿コーナーがよいのは、 ふだんはあまり許されない、 「ちょっと個人的な角度」から ある出来事をとっくりと眺め、 そこに心ゆくまで浸ることが できるからではないかなと思います。
それにしても謎ですね、 お兄さんが 「俺の弟はどうでしょうか?」と書いたこと‥‥。 もしかして、弟が(ちづる)さんを好きなこと、 お兄さんは知っていたのかもしれませんね。 いや、そうでしょう。 なんとも思ってなかったような人が 急に視界に入ってきてピントがあう感じ。 「あれ? あれれれ?」 って、自分でもよくわからない気持ち。 あったなぁ、あったなぁ、 思い出してしまいました。 なにがきっかけになるかって、わかんないもんですね。 その弟が、30年以上ずっとつづく 印象深い人になるなんて。 ねー。 心の澱は浮かんだり沈んだり。 いつのまにか溶けて 「ミックスジュース」のように なっている場合もあります。 会わなきゃよかった、と思うことも あるのかもしれないけど、 いやぁ、全体的に見れば どんなふうに好きな人とも、会えてよかった、です。 人は宇宙の星々とつながってるんですよ。なんつって。 では、また土曜に。
2012-11-28-WED