『つよがり』
 Mr.children

2000年(平成12年)
アルバム『Q』収録曲

彼の隣にいるとき、私は
大きく息ができていたのです。
     ミルク屋さん)

焦らなくていいさ
一歩ずつ僕のそばにおいで

大学生の頃、はじめて付き合った彼がいました。
付き合う前、よく言われていたのが
「〇〇さんってあんまり笑わないし泣かないよね」
という言葉。
付き合いはじめて言われたのが、
「最近、前よりも笑うようになったから嬉しい」
という言葉。

そうして付き合いはじめてしばらくたった頃、
「最近よく聞いてるんだ」と
彼が渡してくれたのがこの曲でした。

自分では気がついてなかったけれど
その当時の私は感情があまり表に出ない方で、
今思えば彼にずいぶん寂しい思いを
させていたんだと思います。

嬉しさも悲しさも素直に表現することがこわくて、
付き合うようになっても
友達時代からのニックネームのまま、
彼の名前をちゃんと呼んだことも
ほとんどなかった気がします。

でも、今もしその彼に伝えられるなら、
「ちゃんと感じていたよ」と伝えたいです。

平均的にみんな学生も
裕福な子が多くなってた世代だけど彼は貧しくて、
クリスマスに一緒に歩いて買って帰ったケーキを
フォークがないからお箸で食べて、
カップもないから
茶碗に紅茶を入れて飲んだこととか、
冬の朝、お風呂もなく、
お湯も出ない部屋に住んでいる彼が、
私が顔を洗うのに冷たいだろうからと
お鍋でお湯を沸かして水道のお水で割って
特製のお湯を作ってくれたことや、、、
この曲を聞くといっぺんに
タイムスリップしたみたいに
当時のあれこれを思い出します。

素直に泣いたり笑ったりできなかったけど、
〇〇〇くん
(名前、書けないけど、
 ちゃんと名前を呼んでる文字数で)!
あの頃、他の誰よりもあなたの隣にいるとき、
私は大きく息が吸えていたよ!

(すずめ)

やさしい彼氏ですね。
もう、いっつも思うんですけれども、
彼氏は、やさしい人がいちばんです。

そして、この投稿の盛り上がる部分は
彼がお湯の水割りをつくってくれる
ところですね。
ああ、もうなんて、
こころあたたまる‥‥。
けなげな気遣いにおぼれてしまいそうやー。

不器用な時期にのびのびできた人って
すごく貴重です。
いい思い出、いいなぁ。
ありがとうございました。

たぶん、ここに投稿してくださる方って、
「あの恋の思い出を書いてみよう」と思って
とりあえず書きはじめてはみるものの、
その後、どこの場面をどう書くかということを、
そこまで詳しく決めていない、
という人が多いんじゃないでしょうか。

だから、その人にとって、大切な場面だけを書くと、
すっと終わってしまうことが多い。
恋愛ドラマや漫画では欠かせないような要素を
あっさりと素通りして。

この思い出には、
出会いの場面も別れの説明もありません。
とにかくもう、「お湯の出ない部屋」の描写が
ほんとうに素敵すぎて。

あとはもう、彼への、いえ、
当時のふたりへの手紙のようです。
そして、それ全体が、読み物として、
大事な場面が足りないどころか
ああ、これで十分だ、と感じられる。
いいお話を読みました。
ありがとうございました。

「嬉しさも悲しさも
 素直に表現することがこわい」という不器用さは
(すずめ)さんのだいじな個性だと思うし、
「友達時代からのニックネームのまま」で、
「彼の名前をちゃんと呼ばなかった」ことも
べつに、なにもおかしなことじゃないと思うんですよ。
(友達時代からのニックネームのままの二人って、
 逆に素敵な感じがするくらいです。)
でもそれを(すずめ)さんが
こうしてちょっと反省ぎみに思い出しちゃう理由は、
それを彼が望んでいたから、
そして、そのことが当時から
よくわかっていたからなんですよね。

恋する彼には、もどかしかったのかな。
あんまり笑わないこと=嫌い、でも、
答えがもらえないこと=NO、でもないはずなのに。
往年の名曲「神田川」のやさしい彼って
こんな感じだったのかなあ、なんて
ちょっと時代をとばして思ったりしました。

〇〇〇くん、元気にしてるといいですね。

ああ、ほんとうに‥‥
(心の底から思う)やさしい話って、いいなぁ。
読んでいて、比喩的な表現ではなく、あたたかくなります。
両腕とか胸のあたりがじんじん熱をもつ。

スガノさんがよく言います。
今回のコメントでも言ってます。
「やさしいひとがいちばんや」

かつて、昭和の時代、
「好きな男性のタイプは?」
という質問に対する答えには、
「やさしいひと」
がとても多かったと記憶しています。
少女漫画に登場する男の子たちも、
歌謡曲で歌われる男の子たちも、
ふわふわっと甘くてソフトなタイプに
人気が集中していた気がします。

一方で昭和は、本能的な時代だと思うんです、とても。
動物的で野蛮なことがあちこちに残っている時代。
そういう景色を背景にして、女の子たちが、
「やさしいひとがすき」と言っている‥‥。
ニュアンスがすこし変わってきますよね。
「やさしくする」ことは、
動物的に求められる激しい行為なのかもしれません。
スガノさんも、良い意味でとても動物的な方ですし。

そういえば、
高倉健さんの主演映画『野性の証明』の宣伝文句で、
「男は強くなければ生きていけない、
 優しくなければ生きる資格がない」
というフレーズが流行ったのを覚えています。
(昭和53年の映画でした)

‥‥なんだか理屈っぽくなりました。失礼。
そういう理屈じゃないんです、この投稿の良さは。
「お湯の出ない部屋」のリアリティ。
お湯が出ないからこそ伝わるあたたかさのうれしさ‥‥。
大きく深く、呼吸できる人のとなりにいたいですね!

今回は、このあたりで。
次は水曜日にお会いしましょう。

2013-02-23-SAT

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