『愛は勝つ』
 KAN

 
1990年(平成2年)

友人の前で、
遠距離恋愛の辛さを
口にしたことは
ありませんでしたが‥‥。
 (ちぇ)

どんなに困難で
くじけそうでも

2年間の遠距離恋愛を経て
結婚することが決まったとき、
高校時代の友人たちに披露宴の余興で
何か歌ってもらうように頼んだところ、
彼女たちが選んだのがこの歌でした。

当時、流行物や
みんなが「いい」というものに背を向け、
マイナーなものに密やかな情熱を傾けることを
アヴァンギャルドだと勘違いしていたわたしは、
この歌もサビ
(「必ず最後に愛は勝つ〜」)くらいしか
知りませんでした。

披露宴直前に帰省した彼と
独身最後のドライブをしたのは義弟の車。
「最近の流行曲ばっかり入ってるらしいけど」
といって聴いたカセットテープの中に
この曲も入っていて、
わたしは初めてフルコーラスで聴きました。

携帯もFAXもない時代のことです。

寮暮らしの彼から電話が来る水曜日の夜10時は
待ち遠しくてたまりませんでした。

わたしが便箋に3枚も4枚も手紙を書いても、
彼からの返事はたった1枚。

それでも土曜日に
郵便屋さんのバイクの音が聞こえると
玄関まで飛んで行ったものでした。

彼に会いに行ったあと、
最終便に乗るために
羽田空港まで行ってから食べた鴨南蛮は
すごくおいしいはずなのに涙のせいで喉を通らず、
離陸した飛行機の中では窓側の席でしくしく泣き通し。

同じころに遠距離恋愛をしていた
友人が結構いたのですが、
みんないろいろな事情で終止符を打っていました。

そんなことが次々と思い浮かび、
「どんなに困難でくじけそうでも」という一節では、
たまらずに涙があふれていました。

くじけないでよかったと思いました。

友人たちの前で遠距離恋愛の辛さや寂しさを
口にしたことはありませんでしたが、
みんな、ちゃんとわかっていてくれて、
そしてこの歌を選んでくれたんだなと思ったら、
それもうれしくて。

離れていた時間を取り戻すかのように
いつもいつも一緒にいた新婚時代。

あれから21年経ちましたが、
いまだに、いつもいつも一緒にいるのが
当たり前の夫婦になりました。

友人たちともよい関係がずっと続いています。

「愛は勝つ」
この歌のこのタイトル、
前回もそうでしたけど、
ほんとに、すごいなぁ。
愛は勝つんだなぁ。
いやぁ、こうでなくちゃ。愛は勝ってほしい!

2年間、辛かったことでしょう。
お友だち、わかってくれていたんですね。

鴨南蛮の涙の味、
結婚式のあたたかい友人の歌。
ありありと味わえるその風景から、
なんと、21年!
これからもどうぞ
ずーっとずっと、いっしょにいてください。

すばらしい、すばらしい!
読み進めるうちにぐいぐいと心つかまれ、
最後の方では熱いものがこみあげてくる投稿でした。

「離れていた時間を取り戻すかのように」
ずっと一緒にいるだなんて、
なんてすてきなご関係でしょう!
いまではそれが
ごくごく自然なありかたになられているわけですね。
はあ〜〜〜〜。
静かにずーっと保たれている、恋愛関係‥‥。

冷やかしとしての言い方ではなく、
言葉本来の意味として、
うかがったこのお話に対して、
「ご馳走様でした」
という気持ちです。

起ち上がって、拍手!
さぁ、みなさんも、頭の中で!

この「恋歌くちずさみ委員会」には
「ラスト3行のどんでん返し」という
名物ともいえる独特の文体がありますが、
今回の投稿も、違った名物が炸裂しています。

それは、
「さらっと10年くらい過ぎちゃう」こと。

カセットテープとか、携帯がないとか、
節々でけっこう昔の思い出だなとは思ったのですが、
ラスト4行のところでさらっと、
「あれから21年経ちましたが」ですからしびれます。

いろんな意味で、大人の場所ですね、このページは。
いま一度、愛が勝ったことに
しみじみと拍手を贈りながら、着席します。

遠距離恋愛実行中のみなさん、
はげまされるよね?

書き手の(ちぇ)さんが
羽田空港から帰路についたということは
彼が東京に行き、(ちぇ)さんは地元に残ってた。
飛行機じゃなければ、会いに行けない場所。
携帯もFAXもない時代、
連絡手段は手書きの手紙か、
「水曜日の夜、
 かかってくるはずの、
 寮からの電話」。
遠距離恋愛も、いまとは、まったく、
事情がちがったんでしょうね。

いまの遠距離恋愛は、
ネットとケイタイのおかげで
こころの距離はずっと縮まったのかな。
かえってもどかしさもつのるのかな。
そういうものは、変わらないのかな。
ほんとうに恋をしているときは
どんなに近くにいても
もっと近くにいたいと思うものだから、
1メートルだろうが400キロだろうが
離れていることには変わりないのかもしれないですね。

いちばん頬が緩んだのは
「離れていた時間を取り戻すかのように
 いつもいつも一緒にいた新婚時代」というくだり。
うれしかったんだろうなー!!
そしてそのうれしさがいまも続いていること、
とっても素敵だと思います。
それから、泣いて食べられなかった鴨南蛮。
そういう食べ物のドラマ大好き!
きっと好物なんですね。今も、かなあ??

それではみなさまよい週末を。
次回は水曜日です!

2013-03-09-SAT

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