『涙くんさよなら』
 坂本九

 
1965年(昭和40年)

朝早く登校する彼に合わせて
頑張って登校していた私。   
(新米ばあちゃん)

涙くんさよなら さよなら涙くん 
また逢う日まで

中学2年の時好きになった同じクラスのY君。
病弱で色白で運動神経は良かったY君。
昼休み、校庭でハンドテニス
(地面に線だけ引いて手でテニスボールを打つ)
をしている時、かっこよかったY君。
朝早く登校する彼に合わせて頑張って登校していた私。

3年になってクラスは分かれてしまって
毎日のように彼のクラスに顔を出していた私。
そんなある日、彼が引っ越すことになってあわてた私。

同じように彼を好きだった友達と二人で
強引に住所を聞き出したっけ。

彼が転校した後
私は『涙くんさよなら』を口ずさんでいた。
それまであまりその歌は好きじゃなかったのに
どうしてなんだろう。

彼を好きだった女子は多くて
何人もが手紙を出していた。
私の出した手紙の内容が他の女子に伝わっていて
一気に熱は冷めたけれど
その時一緒に住所を聞き出した友達とは
60になった今も行き来している。

(新米ばあちゃん)

静かで、クラシックな、恋の思い出、
と思って読んでいたら、
最後の一行で年齢の言及があり、
おまけに投稿ネームが「新米おばあちゃん」。

しかし、その思い出の描写の
なんと瑞々しいこと!

中学生の方から真剣な恋のメールが
届くこともあれば、
このように年配の方からも
いきいきとした投稿が届くのが
この「恋歌くちずさみ委員会」の
すばらしいところです。

校庭でやる遊びや、連絡をとる手段は、
時代によって少しずつ変わっていくものの、
恋そのものの切なさやもどかしさは、
変わらないものですね。

そして、BGMは『涙くんさよなら』。
坂本九さんといえば
『上を向いて歩こう』と
『見上げてごらん夜の星を』が有名ですが、
この曲もすばらしいです。
イントロのストリングスがたいへん印象的。

ほんと、最後の1行まで、
まさか60歳になられているとは思いもよらず。
だって、すごい鮮度ですもん、この思い出!
みずみずしいです。すばらしいです。
もっとも、いまの60歳って、
数字よりもじっさい、すごく若いですよね。
(新米ばあちゃん)さんも、
きっとそうなんだと思うな。

そういえば「自分のおばあちゃん」に
恋の思い出って聞いたことがなかったなあ。
戦争のことや、なくした家族のことは
いろいろ聞いたけれど、
恋のことは、なかったなあ。
もう聞くことができないけど、
きっとあったんだろうな。
もし訊いてたとしても‥‥
照れて答えてくれなかっただろうなあ。

さて、九ちゃんです。
九ちゃん! 九ちゃん!
ぼくらの年代で「きゅうちゃん」といえば
高橋尚子さんより先に坂本九さんが浮かびます。
ぼくは1966年の生まれですが
この、1965年の「涙くんさよなら」も歌えます。
個人的には「一人ぼっちの二人」も好きです。

ハンドテニス? ハンドテニスかぁ。
というところで、ふと思ったんです。
もしかして、のどかな土地か
昔のことなのではないか、と。
そうしたら、50年くらい前のこと。
はわわわ!
投稿うれしいです、ありがとうございます。

自分の話をさせていただいていいでしょうか。
わたくし、一生でいちどだけ
ラブレターを書いたことがございまして。
それを、その彼は、照れくさかったのか
まわりの男子といっしょに読みやがったんですよ。
一瞬にしてゲンメツ、興ざめ、
バカ男、金輪際顔も見たくない! と思いましたけどね。
男子というのはね〜、ほんと〜〜に、
どうしようもないです!

ところでそのとき、なぜラブレターを
書くことになったのかというと、
数年間片思いしている私を見て、同じ部活の友達が
「私も彼を好きになった。
 私も告白するから、彼の誕生日に
 いっしょに手紙を書こう」
と誘ったからです。
友達といっしょになって
手紙つきのプレゼントを渡すなんて
ホントはいやだったけど、
これを逃すと気持ちを打ちあけることもないだろうと
自分で納得したうえで、手紙を書きました。

でも、その友達が彼にしたためた手紙は
「スガノさんがずっと好きなようなのでよろしく」
という内容でした。

いただいた投稿で、
その友達のことを思い出しました。
はわわわわわ。
会いたいなぁ、どうしてるかな。

ややややや! なんということ。
今回はふたつの投稿を読んだ気分。
スガノさんのコメントにまで、ぐっときてしまいました。
だってスガノさん、
それってば、当コンテンツ名物の
「最後数行のどんでん返し」じゃあないですか。
ちょっと感動しちゃったよ。
なんて粋なともだちでしょう。
すばらしい思い出をありがとうございました。

‥‥と、同僚に感謝してる場合じゃないですね。
(新米ばあちゃん)さんの投稿があったから、
うちの同僚もそのことを思い出したわけで。
ありがとうございました。

60代女性の瑞々しい思い出が、
40代女性の甘い記憶を導き出し、
そのふたつを読んだ50代の男性(山下)が感動している。
世代を貫いて流れる曲は、
坂本九さんの『涙くんさよなら』。
‥‥いいなぁ‥‥いい! ぜんたいてきに、いいっ!!

すべては、みなさんの投稿のおかげです。
いつも、毎回、感謝。
それでは。
次回は、土曜日にお会いしましょう。

2013-03-27-WED

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