『糸』
 歌/Bank Band
 (中島みゆきさんのカバー)

 
2004年(平成16年)
 アルバム『沿志奏逢』収録曲 

どこにいたの!?
というほど
会いたかった人は
 (KYU)

どこにいたの 生きてきたの
遠い空の下 ふたつの物語

二十代の後半、行く先のない恋をしていて、
ちょっと心がお疲れ気味だったころ、
会社の先輩の誘いで、飲み会に参加しました。

みんな高校の同級生で、まるで同窓会のような会。
そんな中、一人だけ連絡先を交換した彼がいました。

素朴で人懐っこい性格と、終わらない会話が楽しくて、
気が付けば、毎晩電話をするほどに仲良くなっていました。

ただ、前述した彼が気になって、あきらめきれなくて、
どちらを選べばいいのかと、悩んでいました。

ある時、彼がおすすめ! と教えてくれたのが『糸』。
絶対いいから聞いてみて! というので、聞いてみた途端、
涙がでてきて、そうだったのか! と気が付きました。

どこにいたの!?
というほど会いたかった人は、
毎晩電話で話してる、彼のほうだったな、と。
出会えていなかった人生さえ、いとしく思えるほどでした。

この曲を聴くと、
「ほんと今までどこにいたんだよ」と、
彼と笑いあった日々を思い出します。

そんな彼は、今私の横で、
そっくりな息子と一緒に眠っています。

(KYU)

タイプの異なる
ふたりの異性のあいだで気持ちが揺れ、
最終的に選んだのは、
「いつもいっしょにいた人」だった。

ここに寄せられる恋の思い出のなかで、
こういうパターンの選択、
多いように思います。
なんというか、自分の理想がどうあれ、
毎日、たのしく、ラクに、
会っておしゃべりできる相手。
そういう人とのほうが
よりよい関係が続きやすい。

ある意味それは、理屈じゃなくて
からだとか本能が、
その「居心地のよさ」を
選んじゃってるのかもしれませんね。

『糸』はもともと中島みゆきさんの曲。
彼がおすすめしてくれたのは、
Bank Bandのカバーバージョンの
ほうだったんですね。

「糸」いい歌ですよねえ。しみじみ。
人と人が、出会えたことをよろこぶ歌。
同じ時代に生まれていることだってふしぎだし、
同じ国や場所にいることだって謎。
ましてや巡り合うことは奇跡!
「糸」は、恋をしている人が聴くと、
かなりずしーんときちゃうと思います。
素朴で人懐っこい彼は、
この歌に託して、自分の気持ちを伝えたんですね。

ちなみに、Bank Band以外にも、
いろんな人がカバーしてます。
福山雅治さん、岩崎宏美さん、平松愛理さんとか。

長くこのコーナーを続けていると、
おなじみのフレーズやたのしいパターンが
あれこれと出てくるものですが、
今回のような投稿の終わり方、
これも、
ナイスなパターンのひとつになっていると思われます。

「そんな彼は、今私の横で、
 そっくりな息子と一緒に眠っています。」

ね。
おだやかな、ハッピーエンド。
たいせつな思い出が綴られた素敵な投稿ばかりですが、
とりわけぼくはこのタイプの終わり方が好きです。
今が静かに幸せな日々だからこそ、
過去をすっと振り返って書きとめることができる‥‥
その温度で書かれる文章がぼくは好きなのだと思います。

名付けるならば、
「そんな彼は今私の横で、
 そっくりな息子と一緒に眠っています」パターン。
いいなぁ。

私はミスチルの演奏する『糸』で
この曲を深く知ることになりました。
いい歌だ、ほんとうに。

これまでどこにいたの? と
手を取りたくなるような出会い、ありますものねぇ。
「逢うべき糸に 出逢えることを
 人は 仕合せと呼びます」
そう、いちばんのしあわせは
出会えたことなんだな。

いろんなことで迷ったときは
そんな人たちとの出会いに
感謝することにしたいと思います。

恋歌くちずさみ委員会は、
今月いっぱい毎日つづきます。
またあした!

 

2013-05-28-TUE

最新のページへ
感想をおくる ツイートする ほぼ日ホームへ
(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN