『世界の約束』
 倍賞千恵子

 
2004年(平成16年)

恋に落ちました。
何故でしょう?
世の中には
沢山のひとがいるのに。
  (5月になれば )

木漏れ日の中の別れのあとも
決して終わらない世界の約束

恋に落ちました。
私50代半ば。相手は30歳既婚者です。
何故でしょう?
世の中には沢山のひとがいるのに、
よりによって息子と同い年に…

でも世界が輝きはじめました。
自分に、まだ恋する力があったんだと
嬉しくなりました。

勿論、片想いです。
そんな気持ちはおくびにも出さず、
仲の良い友人同士のように、色々な話をしました。

その彼が仕事の都合で、
新年度から遠くに行きます。
寂しいです。

でも糸井さんが先日ダーリンコラムで
『終わる事は救いでもある』
と書かれたのを読み、その通りだと思いました。

本当は苦しかったんです…
楽しくて楽しくて、苦しかったんです。
家族や彼の奥さんやお母さんに、このような
気持ちでいる事を申し訳ないと。そして、
行き着く先のない想いを抱えている事に。

彼にいいことが沢山ありますように。

でも誰かにまた、恋する事があるんでしょうか?

いえ、今は3月。
永遠の3月。
このときを大切に過ごします。


(5月になれば)

恋は不意の事故に似ていると
言われることがありますけれど、
そうなのかもしれません。
幸運な出会いであれば、
それを縁と呼び、感謝するけれど、
なぜ、いま、あなたなのかと、
問いかけたくなるような恋に落ちると、
神様、なんて意地悪なんでしょうかと、
かなしみを伝えたくなります。
出会ったことの意味を問いたくなる。
そして、思いが募るほど、重くなる心。
それを背負うのは、つらいですよね。

投稿を送っていただいたのは、3月。
まだ桜の季節でした。
(5月になれば)さんは、
きっとかなしみに包まれた4月を過ごすけれど、
“5月になれば”きっと、と、
ペンネームに、あたらしい自分を
託していらっしゃったんだなと思いました。

そして、いまは、6月。
どんなふうに過ごしていらっしゃるかな、と、
ぼんやり想像しながら、このコメントを書いています。
(5月になれば)さんにも、
いいことがたくさんありますように。

これは映画『ハウルの動く城』の
エンディングテーマですね。
谷川俊太郎さんの作詞です。

歌の『世界の約束』というタイトルがすてきだなぁと
思いながら、私は劇場で映画を観ました。
映画では、ソフィーがハウルに向かって
こう叫ぶ場面があります。

「きっと行くから、未来で待ってて」

約束という言葉を頭に残しながら観たものですから、
私はこのシーンで
涙をぼろぼろぼろーとこぼしてしまいました。

今はだめだけど、いつか会えるから、
結ばれるから。
おばあちゃんのソフィーが若い姿のハウルに
約束を求めるシーンが、
今回の投稿に重なって、せつなかったです。

終わる事は救いでもある。
恋をするのはしょうがないけど、
行き場のない思いを抱えていると、
その終わりはやっぱりホッとします。
からまった鎖をかたまりでポーンと海に投げる気分。

それでも、ソフィーのように
叫びたくなる時間は、あると思います。

なんだか『ハウル』が
観たくなっちゃったなぁ。

そういえば、この「恋歌くちずさみ委員会」、
ほんの時々ですけど、
ジブリ作品の話になりますね。

「恋する力」というのはなんなんでしょう?
若さと関係するものなのか、
あるいは、生物としての力に因るものなのか。
もしくは、現代の既婚者や年長者は
きりがないから理性でおしとどめているのか。
正しくはどうなのかわかりませんし、
正しさを求める気もありませんけど、
ひとつ、思うのは、「恋の物語」や「恋の歌」は、
年齢を重ねてもずっと好きでいられる、ということ。
だから、年齢とともに、なにもかも枯れていく、
なんてことはないんじゃないかなぁ。

そうそう、よく問い合わせがあるので
書いておきますけれど、
この投稿は、以前、
「恋歌くちずさみラジオ」をやったときに、
武井さんが朗読したものと同じです。
「なんかこれ知ってるんだけど!」っていう方、
もやもやしてたら、そういうことですからね。

とてもきれいな投稿です。
自分の気持ちに戸惑いながらも、
人々への思いやりに満ちています。
自分を大切にしたい気持ちも、希望も、ちゃんとある。

そしてそう、ぼくもやっぱり、
映画『ハウル』で感じた気持ちを重ねながら
この投稿を読みました。
倍賞千恵子さんの
やわらかくやさしい声も一緒に思い出しました。
観たくなりますね‥‥切ないな。

人はいつまで恋をするのか。

50をこえた自分が
恋のことをこんなにいろいろ考えているなんて‥‥。
若いころの自分が知ったら
びっくりすることでしょう。

「想う」ことはきっとこのまま、
ずっと一生、なのだとぼくは思います。
枯れるどころか、
おじいちゃんおばあちゃんになるほどに
想いはしっとりと湿度をもってくるような。
‥‥というのは自分の希望でもあるのですけれど。

もうすぐ梅雨ですね。
しっとりとした季節、
恋のお話に曲を添えてどうぞお送りください。

また、水曜日にお会いしましょう。

 

2013-06-08-SAT

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