実はきのう、鰹節削り器を購入しましてね。
もうずいぶん前から欲しかったんです。
やっと手に入れて、
きのうの夕飯に、削って食べました。
おいしかったぁぁぁぁ。
大学生のとき、親戚のおじさんが亡くなりました。
「さっきまでまったく元気だったのに、きゅうに」
という亡くなり方でした。
夫婦ふたりだけの家でした。
そこの家の削り器のなかに、
さっきまでおじさんがカッカッと削っていた削り節が
残っていたんです。
「みんなで、この鰹節でダシとって
うどんでも食べよっか」
残された嫁(おばさん)はこう言いました。
親戚一同、
「おっちゃんのダシのうどんおいしい。おいしいな!」
と、半泣きですすりました。
ほんとうに、おいしかった。
その日から、いつか、鰹節削り器を‥‥と
思っていたのです。
脱いだ靴や歯ブラシ、ひげそりなど、
おじさんが生きていたことを物語るあらゆるものが
そのままいきいきと活動しているようで
胸が苦しかったです。
糸井重里がよく、
「その人がいなくなっても、鋳型は残る。
その鋳型こそが、その人です」
と、言います。
くちずさみ歌となったそのベースラインも、
「彼そのもの」の鋳型ですね。 |