『カレーの歌』
 くるり

 
2001年(平成13年)
 アルバム『TEAM ROCK』収録曲

本当に離れるその日まで、
その寂しさが
想像できなかった
(チームロック)

カレーの香りは君と同じで
やさしくて小さくて忘れてしまいそう

大学時代に付き合っていたのは、
カレーが大好物の、ひとつ年下の彼でした。

大学時代、わたしの手料理に
リクエストするのは「カレー」。
ご飯が終わるとルーだけおかわりしてしまうような、
カレーさえ作っておけばOKな彼でした。

学生でお金がなく、
いつも鶏のひき肉のカレーだったのですが、
誕生日はブロックの牛肉にしてみたのに
「いつものがいい」と言われガックリ。
翌年の誕生日も鶏のひき肉のカレーを作りました。

だけど楽しい大学時代はたったの4年で終わります。
就職氷河期で泣きながら就職活動を続けていたわたしを
じっと横で見てくれていた彼は、
就職で東京に引っ越してしまうことに
文句は言いませんでした。
だからなのか、ずっと一緒にいたせいか、
本当に離れるその日まで、
その寂しさが想像できなかったわたしは
本当にバカだったなあと思います。

自分のアパートはすっかり引き払い、
大学近くの彼のアパートでのんびり過ごしている時に
初めて聞いた曲が、くるりの「カレーの歌」でした。
理由も分からないまま急に涙が溢れてきたわたしを見て
彼は笑いながら、何度も何度もこの曲を再生していました。

結局彼とは遠距離恋愛でわかれてしまい、
なんとなくずっと「カレーの歌」を避けた状態に。
だけど、数年前に地元に戻ってきたにも関わらず
今度また東京に引越すことになって、
ふとあの頃のことを思い出し、聞いてみたんです。
すると、(ロフトがあって)
すごく高い天井を見上げながら号泣したことや、
彼の着ていた服のにおい、
日差しに透けたホコリまで、溢れるように思い出し、
わたしにもこんな小説みたいな思い出が
あるんだなあと驚きました。

寂しさのせいで彼と別れたことは
しばらく後悔していたけれど、
あの頃の自分に彼にやさしくできる余裕があったとは思えず、
どちらにせよ別れていただろうと、今は思っています。
ただ、新卒時代に作った通帳やクレジットカードの
暗証番号がことごとく彼の誕生日なので、
完全に忘れるのはまだ先になりそうですが‥‥(笑)。

そして今も、我が家のカレーは鶏のひき肉です。

(チームロック)

掲載のために、
投稿文のちょっとした漢字を直したり
改行位置を変えたりしながら、
じわじわと涙がこみ上げてきました。

泣ける投稿が多いのはこのコーナーの
大きな特長のひとつなのですが、
こんなに、日常的な思い出が泣けることって
あんまりないことです。

離れるその日までわからなかった別れの寂しさ、
理由もなく流れはじめた涙、
よみがえってきた部屋の天井やにおい‥‥。
いや、ほんと、全体が素敵な投稿です。

「わたしにもこんな小説みたいな
 思い出があるんだなあ」
という一文がありましたが、
小説みたいな思い出があるかどうかは、
思い出そのものの特別さとかではなくて、
思い出を感じるその人によるのかなと思いました。

「今夜は、カレーよ」
「さぁさぁ、カレーができましたよ」
「みんなー、カレーだぞー!」

誰かさんと誰かさんがなかよくカレーを食べるという、
その光景を想像するだけで、
なんだかわけもわからず目頭が熱くなる自分がいます。
ちいさいけれど、あたたかい、
かげかえのないしあわせをひとつのかたちにしたような、
そんな景色だからでしょうか。

(チームロック)さんの投稿も、
やっぱりじんわり目頭が熱くなる文面でした。
またひとつ、名作が加わりましたね。
(もう、ほとんどすべてが名作なのですけれど)
クレジットの暗証番号が彼の誕生日‥‥。
ここに、なぜかいちばんグッときたのでした。

くるりの『カレーの歌』。
この投稿ぜんたいに漂う切なさに
とてもよく似ている名曲ですね。
その状況でこの曲を聴いたなら、そりゃあ泣いちゃうよぉ。

「彼の着ていた服のにおい」
っていうのがとても印象的で。
光景や風景を思い出したり、
声や音を思い出したりするよりも、
機会は少ないことだけれど、
とつぜん、鼻腔の奥で再現される、
はっきりとした「そのときの、あのにおい」は
あまりにも強烈で、立ち止まったり、
くらくらしちゃうことがあります。
なんだろう、より官能に近い記憶、
なのかもしれません。

きっと、(チームロック)さんのつくる
「鶏のひき肉のカレー」も、
忘れられないようないいにおいがするんだろうな、
って思いました。
彼は、いまでもカレーを食べるたびに
そのにおい、味を、思い出しているのかも。

ところでパスワードを恋人関連の数字や
キーワードにするのは危険ですね!
あとあと、ちょっとつらい。
そういえば社内にそういう同僚がいたなあ。
だれとは言わないけど!

忘れてしまいそう、と歌詞は言ってるけど、
あんがい忘れていないものなんですね。
記憶に残っている素敵な場面がいくつもある、
すばらしい、あたたかい、
恋だったんだなぁと思います。

私は、好きな男の子といたときや
好きなペットとすごしていたときに、よく
「ああ、このときのことを忘れずにいたいなぁ、
 目に焼きつけておこう」
と思っていました。
それがいつか去っていく存在だということを
わかっていたのかなぁ?

投稿の中でいちばん涙腺がゆるんだのは
「彼は笑いながら、何度も何度も
 この曲を再生していました」
というところです。
離れてしまうさみしさを感じているのは
両者同じですが、
彼は、彼女が悲しがっている気持ちまで抱えて
笑ってくれていたんだというところが、
もうダメ(涙)。

むしむしする毎日ですが、
懐かしの恋歌を聴きながら
シナモンティーをアイスにして

召し上がるのはいかがでしょうか。
夏は恋の季節です。
みなさまの投稿、お待ちしています!

2013-07-27-SAT

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