『Good-bye days』
 YUI

 
2006年(平成18年)

ああ、失恋って、
すごいんだな。
(花)

できれば 悲しい想いなんてしたくない
でもやってくるでしょ?
そのとき 笑顔で Yeah Hello!! My friend なんてさ
言えたならいいのに...

たくさんの、きらきらした恋のお話を読んでいたら
ちょっと私も投稿したくなりました。
私の、きらきらした、たったひとつの宝物みたいな恋の話。
ちょっと恥ずかしいけど書いてみます。

私が高校生になってすぐのころ。
生まれて初めての恋をしました。
負けず嫌いでストイックで、
でも本当に穏やかに笑う、やさしい男の子でした。

遠目から見た、彼の携帯の待ち受けは可愛い女の子の写真。
ちょっと複雑な気持ちで、
「待ち受けの女の子、だれ?」と尋ねると
「歌手のYUIだよ〜! 俺、すごい好きでさ」と、彼。
私も私も! Good-bye days が一番好き!
そんなこんなで会話が弾み、トントン拍子に仲良くなり
生まれて初めての「彼氏」をゲットしたのでした。

少し話は変わりますが、
中学時代にクラスメイトからいじめを受けていた私。
そんなときに、この歌を聴いて、
自分を励ましていた思い入れのある歌でもありました。

 できれば 悲しい想いなんてしたくない
 でもやってくるでしょ?
 そのとき 笑顔で Yeah Hello!! My friend なんてさ
 言えたならいいのに...

このフレーズが、
当時の私の心にどんなに響いたかわかりません。

そして、私は彼からの着信音を
Good-bye daysに設定しました。

大好きなひとからの、
大好きなコトバが、
大好きな歌にのって届いてくる‥‥。

女子高生だった私は、携帯を握りしめて、
ドキドキしながら、彼からの返信を幾度となく待ちました。

ある日の学校の帰り道。
ふざけて目の前の彼にメールを送ったら、
なんとGood-bye daysが鳴り出すではありませんか。
ちょっと照れ臭そうにする彼。
「この歌が流れるとさ、花から返事がきた!って、
 嬉しくなるように、設定してみたんだよ」と。
その言葉がうれしくて、うれしくて。

そんな、可愛らしい私たちの恋は高校の間ずっと続きました。
彼が笑えば、本当に、なんでも出来る気がしました。
けんかをしたときは、本当に、そのまま身体ごと崩れ落ちて
なくなっちゃうんじゃないかという気がしました。

私は、はじめての恋に一喜一憂し、泣いて、笑って。
楽しかったです。
あどけない私は、このまま彼のお嫁さんになるの!
なんて家で無邪気に話していました。
彼が何をしても、どんなふうになっても、
私だけは、彼を守ってみせるんだ。
なーんて、17歳の私は一生懸命、真剣に考えていました。

それから、時間は流れて、私はもうすぐハタチになります。
今、となりに彼はいません。
高校を卒業し、新しい環境で、
新しく好きな女の子を見つけて、
私のもとを去って行ってしまいました。

「ごめんね。本当にごめんね」

最後までまじめな彼でした。
二股でも浮気でも何でもすればいいのに、
消え入りそうな声で、
でも、はっきりと、謝り続けるんです。
そんな風に言われたら、わたし、怒れないよ。
幸せになってね、としか言えないよ。
強がることしかできないよ。
ああ、失恋って、すごいんだな。
失恋するとこんなに涙が出るんだな、苦しいんだな‥‥。
私、どうなっちゃうのかな‥‥。
半年、泣き続けました。

私を支えてくれた歌は、
皮肉にも、やっぱり、Good-bye daysです。

 できれば 悲しい想いなんてしたくない
 でもやってくるでしょ?
 そのとき 笑顔で Yeah Hello!! My friend なんてさ
 言えたならいいのに...

悲しい想いをしても、
それすら「友だち」にして、
受け入れて、進んで行くしか、ない。

今、アプローチしてくれる男性がいます。
来週、デートしてきます。
昔の思い出に、バイバイをして。

(花)

とにかくもう、ラスト3行にスカッとしました。
いいなぁ、すてきな「今」が膨らんでいますよね。

このラストの3行は、
「今、好きな人がいます。」
で書き始められる展開でも、
もちろんハッピーに成立するんです。
でもやっぱり、
「今、アプローチしてくれる男性がいます。」
のほうが、なんだかすばらしい。
誰かに今、「想われている」わけですものね。
大失恋の話を書いてきた(花)さんが
読者たちに向かって、
「心配しないでください、わたし大丈夫なんです。
 ちょっとモテたりもしてるんですよ」
と笑顔で手をふるような、
そんなエンディングになっていると思いました。爽快です。

全力投球で誰かを好きになったり、
大失恋で涙枯れるまで泣き続けたり、
そういう経験はしっかりとコヤシになるものですね。

いまふりかえって、
とてもとてもつらい瞬間までふくめて
この思い出を、宝物」って言えるって、
(花)さん、よかったぁ!
“悲しい想いをしても、
 それすら「友だち」にして、
 受け入れて、進んで行く”
ほんとうにすばらしいと思います。
歌って、そいいうときに、
ちゃんとそばにいてくれますよね。

恋の歌が、いじめを受けていたときに
自分をはげましてくれた歌だった、
というのも、いい。
「あの歌がなかったら」と思う歌やミュージシャン、
ぼくも、十代の思い出のなかにあります。
もちろんいまも大好きです。

いじめを受けていたとき、
アツアツだったとき、そして
彼とお別れしたときにも
同じ歌に支えられる。
そんなことってあるんだなぁ。
同じフレーズなのに
ちがうふうに心に届いて
響かせることができるんですね。

この「恋歌くちずさみ委員会」には
自分じゃあ考えられないほどの
すてきなカップルが何組も登場します。
今回の彼も彼女も、とても健気で爽やか。
おふたりとも正直で
まっすぐな方々なんでしょう。

20歳、アプローチしてくる人。
女性はひと目惚れではなく
「だんだん好きになる」のが得意ともいいます、
次の恋もまた、たのしい毎日になるといいな。

投稿のなかに
「それから、時間は流れて‥‥」
という一文が登場すると、
このコーナーでは平気で十年とか二十年とか
時が流れてしまうのですが、
二十歳の方からの投稿では
3年が過ぎただけでした。

しかし、としみじみ思います。
17歳から20歳までの3年間だものなぁ。
それは、「時間は流れて‥‥」という
表現に相応しい、濃密な時間です。
大切な時間の大切な思いを
送ってくださって、ありがとうございます。

印象深いフレーズがたくさん登場しましたが、
「ああ、失恋って、すごいんだな。」
というひと言が、とりわけ胸に残りました。
そう、「失恋」ってすごいですよね。
で、その悲しくてたまらない出来事が、
かならず本人の人格の栄養になる、
というのも「失恋」のすごいところ。

「来週、デートしてきます。」
っていうのも、いいですね。うらやましい!
それでは、次回の更新で、また。

2013-08-14-WED

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