『3月9日』
 レミオロメン

 
2004年(平成16年)

こいつ不器用なんだと
気がついた頃には
私はもう3年生でした
  (あつぴょん)

瞳を閉じれば あなたが
まぶたの裏に いることで
どれほど強くなれたでしょう

私の通っている高校の吹奏楽部は
某アイドルグループのように恋愛が禁止です。
恋なんてしたことなかった私が
恋をした相手はホルンパートの同級生。
ちょっと意地悪でかなり苦手だったのに。

苦しい時気がつくといつも見守ってくれたり、
泣いてしまいそうな時
そっと背中で私の涙を隠してくれたり、
かと思えばお礼を言うとぷいっと無視したり‥‥。

あぁ、こいつ不器用なんだと気がついた頃には
私はもう3年生でした。
そしてそんな彼が好きだと確信したのもこの頃です。
暖かい優しい春でした。

でも恋愛が禁止の部活で人を好きになった私は、
いつもと違った心の痛みを知りました。
何かがざくりざくりと私を刺すのです。

君の彼女になりたいなんて言わないから一緒にいたい。
「好き」という気持ちをぐっと抑え、彼の言葉や笑顔、
何年たっても色あせず思い出せるように
しっかりと心に刻みつけました。
刺される痛みに耐えながら。

今日3年間で最後のコンサートで
『3月9日』を歌った後、
こんなことを言われたんです。

「お前がいてくれたから3年間頑張れたよ」

‥‥それ私のセリフなのに。

私の通っている高校の吹奏楽部は
某アイドルグループのように恋愛が禁止ですが、
卒業してしまえば関係ありません。
私の恋は今まさに走りだそうとしているのです。

(あつぴょん)

わあ。
最後の一行で読んでるこっちに身体が
ふわっと軽くなったようでした。
いいぞ、若人。瑞々しいぞ。

このメールが届いたのは半年前。
いまはきっと、ふたりとも大学生かな?
現在進行形の新しい恋、
読んでうれしく思いました。

それにしても、つい思いついて、
いや、そういうことじゃないだろうと
書くのをやめて、またやっぱり書いちゃうけど、
ちょっと、このふたりの感じって、
アキちゃんと種市先輩みたいじゃない?
あ、『あまちゃん』の話ですけどね。

チームワークがたいせつな場所では、
メンバー同士の恋愛オッケーになると
さまざまな問題が浮上しますから、
禁止になるのもわかります。

そして、その3年が
ゆっくりゆっくり
ふたりのあいだをあたためたんですね。

目を閉じれば、いつもそこにいてくれた。
そして、いまは、目の前に、しっかり。
さあ、走りだせー。

禁止って言われても
落ちちゃうときは落ちちゃうもんね。
恋。
そして
“「好き」という気持ちをぐっと抑え、
 彼の言葉や笑顔、
 何年たっても色あせず思い出せるように
 しっかりと心に刻みつけました。”
これが(あつぴょん)さんの恋を
さらに深いところへ
進ませることになったんですね。
彼もまた同じだったみたいだから
「先生、恋愛禁止にしてくれてありがとう!」
とすら言えるんじゃないか。

ほんと、最後の一行にきゅんっとなります。
疾走感、浮遊感、爽快感。
恋にひた走る女の子。
かっけー!
ねー、ねー、
「あまちゃん」のことを
どうしても連想しちゃいますよね。
でもそのことを書き出すと止まらなくなるので
やめておきましょう。

ちなみに(株)東京糸井重里事務所も
社内恋愛がご法度です。
その理由については糸井重里の名言があります。
「会社の仲間っていうのは、
 いつわりの絆で結ばれたものなんです。
 各自がほんとにいちばん大事なのは、
 やっぱり自分の家族とか恋人でしょう?
 仲は良くても会社の仲間がいちばん大事ではないはず。
 だからこそ、いつわりの絆だからこそ、
 同じ船に乗る者同士、
 しっかりと信用でつながってないと危ない。
 そこに『恋愛』が混ざると不安定になるんです。
 なんていうか‥‥しらけるんですよ」
 (山下の記憶で記しました)

(あつぴょん)さんの吹奏楽部は
きっと強い吹奏楽部だったのでしょうね。
なんとなく、わかります。
本気の演奏だったんだろうなぁ。

夏が終わります。
みなさん、この夏の恋はいかがでした?
思い出に限らず、
現在進行形のお話もお寄せくださいね。

もう、入手された方も多いと思いますが、
せっかくなのでCDと本をおすすめしつつ
今回はこんなところで。
水曜日にお会いしましょー。

2013-08-24-SAT

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