『ランデヴー』
 YUKI

 
2009年(平成21年)

名前を呼べば、
すぐ触れてくれる
距離にいたかった。
 (アオミドリ)

例え暗い星の見えない夜でも
その名前呼ぶから


「実はバツイチで、子供が二人いる」
三ヶ月間デートを重ねながらも
煮え切らない態度だった彼には、
何か思うところがあるのだろうな
とは感じていました。
でもまさか、そんな理由だったとは。

バツイチはともかく、子供‥‥しかも二人。
なかなか恋愛スイッチの入らない私が、
数年ぶりに心を動かしたのに!
よりにもよって、
そんなハードルの高い人だったなんて!
偽りのない正直な思いでした。
でも、私は、彼と手を繋ぎたいと
思ってしまったのです。
生まれてしまった熱を
見過ごすことはできなかったのです。
覚悟を決めて、飛び込むように、飛び降りるように、
一緒にいることを決めました。

彼の心の中には、いつも二つの想いがありました。
ありがたいことに、
私を大切に包み込んでくれる想いと、
二人の子供たちへの親としての愛情です。
子供たちの話をするときの彼の表情を、
私は何よりもいとおしく感じました。
彼が大事にするものならば、
私にとっても大事なものです。
そんな風に受け入れていきました。

一方で、辛い思いも重ねていくことになりました。
時々、彼は子供たちと休日を過ごしました。
元奥さん、言うなれば、
私以外の女性のいる家に泊まるのです。
余計な心配をしていたわけではありません。
ただ、そこにある「家族のかたち」に決して
踏み込めないことに動揺し、
文字通り身悶えするような時間をやり過ごすことが、
いつしか難しくなっていきました。
そして、彼との未来は見えなくなっていきました。
私がそこにいなくても、彼の幸せは
成り立っていくように感じられてしまったのです。
立っている足元がグラグラするような感覚になり、
彼と一緒にいるときの安心は、
彼と離れた直後から不安に変わりました。
深まるばかりの想いが、自分を苦しめていきました。

そんな頃に、YUKIのライブでこの曲を聴きました。
何度となく聴いたことのある、
好きな曲のひとつです。

私は彼の名前を呼ぶのが好きでした。
好きだと言う代わりに名前を呼べば、
苦笑して、わかってるよと言う彼の表情が好きでした。
名前を呼べば、すぐ触れてくれる距離にいたかった。
いつでも。

このフレーズをYUKIと一緒に口ずさんだ後に、
不意に涙がでました。
慌てて口を押さえなければ、声が出そうでした。

いつか、名前を呼んでも応えてくれなくなる時が来る。

確信に近い予感でした。
いま思えば、最初に決めた覚悟とは、
このことだったのかもしれません。

周りの人たちはYUKIの愛らしさと歌声に
心躍らせているというのに、
悲しい気持ちで膨れ上がった私は、
その落差にまた息を詰まらせました。

その日の電話で、彼は私に尋ねました。
ライブは楽しかった? と。
私は、彼の名前を一度呼び、
何? と言われてからもう一度、名前を呼びました。
そして、あなたに会って早く、大好きだって言いたい、
と伝えました。
どうして泣いてるの、という言葉には答えずに。

(アオミドリ)

この投稿で印象的だったのは、
ラストシーンです。
結ばれるとも、別れるともわからない。
電話をかけたあとに
そこが描かれるのかなと思ったら
電話の場面で終わってしまう。

なにかに似てるなと思ったら
『ノルウェーの森』でした。

実際にどうなったかはさておき、
ぼくはこの投稿の終わり方がとても好きです。
そして、なんとなく、勝手に、
この恋はずっと続いていくように
ぼくは感じました。

好きになるだけで不安なのに、
そういう状況はますます
不安をあおりますよね。
単純に(そうする理由もあるのだろうけど)
「‥‥泊まるなよー!」って思いますけど、
当人たちには言いづらいところでしょう。
ていうか、その別れた奥さんもだな、
「そこは線引きしましょうよ」って
考えていただきたい!
なんてぼくがいきどおってもだめですね。

(アオミドリ)さんは、その後、
彼に、ほんとうの気持ち、
いまかかえている不安を、
ちゃんと話すことができたのかな‥‥。
ひとりじゃ解決できないことも、
ふたりでなら解決することができる。
きっとそういうことじゃないのかな、
って思います。

悲しい投稿です。
「切ない」を超えて、
めずらしく悲しい投稿だと思いました。
元妻のところへ泊まりに行くって‥‥。
なんでそんな‥‥?
事情があってそうなっているとしても、
なんで泊まりに行くことを(アオミドリ)さんに
知らせなくてはならないのでしょう?
‥‥他人のぼくが勝手に思うのは、
ただ(アオミドリ)さんがかわいそうということです。
うーーーん、かわいそうだ!

(アオミドリ)さん、
ここにこうして想いを書くことで、
すこしでも何かが楽になるのであれば
またいつでもメールをくださいね。
‥‥うーーーーん‥‥彼はなぜ泊まりに行くのか?!

そこのところの解せなさはさておき、
この曲、ぼくも大好きです。
ミュージックビデオのyukiさんが
ほんとにもう、かわいくて。
(アオミドリ)さんはライブで聴いたんですね。
うらやましい。
泣いちゃったとしても、うらやましいです。
そのとき涙をたっぷりと流させてくれた
「ランデヴー」は、
(アオミドリ)さんをずいぶん助けているんだと、
ぼくは思います。

ん?
んんんんん?
嘘ついたりコソコソしたり
ごまかしたりしてるわけじゃないんですよね?
何がいけないんだ?
わからん。
あ、そっか、泊まるのが、か。
それは、彼が、「いかん」ということに
気づいてないだけだ。
きっとそうです。

子どもがかわいい、それはしょうがない。
めっちゃかわいいことでしょう。
親が大切とか、縁ある人に親切にするとか
好きな仕事をやりぬくとかと同じだと思います。
しかも、子どもは巣立ちます。

それと、恋とは別。
前妻のことは、なーんも思っちゃないですよ。
前妻も、子どものうれしさくらいしか考えてません。
無意識だから、そんなことするんですよ。

いまの彼女が、大切な人が、身悶えしてるんです。
「YUKIちゃんの歌聞いて、泣いちゃってるんだよ」
そう彼に伝えれば、もう、泊まらないと私は思います。
だいじょうぶ。
ひとりで泣いてさよならするのはよくないですよ〜。
「数年ぶりに心を動かした」人なんですから。

思っていることを、ときには
はっきりと告げたほうがいいと思います。
「相手にとってそんなに痛手だったんだ!」
と気づくことって、少なくないから。
だから泣かないで〜。

私、極端な意見かなぁ‥‥と思いつつ、
来週もこの恋歌くちずさみ委員会で
お会いいたしましょう。
おたより、お待ちしていま〜す。

2013-09-07-SAT

最新のページへ
感想をおくる ツイートする ほぼ日ホームへ
(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN