『I Love you, SAYONARA』
 チェッカーズ

 
1987年(昭和62年)

好きになる要素
満載じゃないですか、
そんなの。
(瑞記)

馬鹿だね 女って


恋というほどの気持ちではなかったのですが、
ずーっと覚えていることがあります。
中学1年生の時、出席番号が近かったので、
常に席が近い男の子がいました。
教室は定期的に席替するのですが、
理科の実験室、美術室、技術家庭の作業室、
わいわいとおしゃべりしながら作業する授業のときは
いつも同じ作業机。
何の気なしに喋っていたのですが、ある時ふと、
「あ、この子と話すときはなーんにも話すことに困らないな」
と気づきました。
中一と言えば思春期の始まり、
なんとなく男の子と話すことに意識し始めたころだったのですが、
彼相手だと、後から後から話すことがわいてきて、楽しくて。
周りから夫婦みたいだと言われた覚えもあり、
それくらい、掛け合い漫才のような
会話をしていたのではないかと思います。

家庭科の実習の時間に私が作っていたお弁当袋を
思いがけずほめてくれて嬉しかったり、
たまたま一緒に図書委員をしていた時には
当番はサボってばっかりだったけど
HRで連絡事項を伝えるときは
堂々としてわかりやすくて見直したり。
もし、あれが中一ではなく高1の時だったら、
絶対好きになってただろうと思うのです。
好きになる要素満載じゃないですか、そんなの。
でも、私が中一の時って好きとかつきあうとか
そういうのって漫画の中の世界のお話だったんですよね〜。
彼は“なんか話すの楽な男の子”のまま、
中二でクラス替えとなり、その後、
中学校自体が二つに分かれて離れ、
もう会うこともありませんでした。

彼と話した会話で覚えていることがひとつだけあります。
チェッカーズのフミヤファンだった私は、
これ以上身長が伸びたらフミヤを追い越してしまう!
と思い、ある時、
「これ以上背え伸びたら嫌やねん」
と彼に話しました。
「何で〜」
と聞く彼に
「好きな人より身長高いの嫌やん」
と答えたのですが、言った途端に、あ! と思いました。
彼はわりとおチビさんで
その時点で私のほうが背が高かったんですよ。
これって遠まわしに告白してるみたいやん!
とちょっとドキッとして、彼は別にそう受け取ったふうもなく、
「ふーん」
と、答えて会話はそこで終わったんですが、
あの時ちょっとドキッとしたから、
今もこうして覚えているのかもしれません。

I Love you, SAYONARAは
その年の文化祭にクラスで歌った曲です。
馬鹿だね男っての部分を女子が歌い、
馬鹿だね女っての部分を男子が歌うという
趣向で歌ったんですが、
フミヤのライブに行くと今でも時折歌われることがあり、
それを聞くたびに、あの時は意味もわからんと歌ってたな〜、
あの時の男の子は元気かな〜と思いだします。
中学が途中で分かれたから卒業アルバムにも載っておらず、
どこの高校に行ったのかも知らないし、
もう会うこともないと思っていたのですが、
先日、中学の同窓会のハガキが届きました。
なんと二つに分かれた中学校合同で
同窓会が開かれるというではあーりませんか!
出席に丸をして返事を出したのですが、
もし彼が出席したら、
会えるかもしれんな〜と、にわかにドキドキ。

果たして彼は出席するのか?
もし出席してたとしても彼が彼だとわかるのか?
わかったとしても、がっかりしたらどうしよう、
思い出は思い出のままとっておいたほうがいいのかしら?
トドメに、もしかしたら今も私のほうが背が高いかも〜!

突然過去と現在が足並み揃えてしまって、
新年早々落ちつかない気持ちです。
アホやな〜私。
ドキドキ。
(瑞記)

「お弁当袋をほめてくれたから」
「HRで連絡事項を伝えるときは堂々としているから」
そして何よりも決め手は、
「話していてすごくたのしいから」
ああ‥‥ほんとうに、好きになる要素が満載!
かわいいなぁ。
仔犬がじゃれあうようなころの異性とのやりとり。
「切ない未満」の明るい思い出。すばらしいです。

どさくさにまぎれて言うと、ぼくはフミヤと同い年です。
‥‥すみません。
「フミヤ」と呼び捨てにしたこともすみません。

ぐいっと話を戻して、と。
投稿の最後にあるように、
こちらはことしの新年早々にいただいたメールでした。
‥‥同窓会、どうだったんでしょう?
そのどきどき、うらやましい!
会えたのだとすれば、
きっと明るい再会になったんでしょうねー。

「なんか話すの楽」のまま、かー。
それが恋に発展するとしたら
そうとう大人のふたりですよね多分。
思春期の恋って、
「顔も見れない!
 名前聞いただけで失神寸前」
みたいに、つまり経験がないぶん、
一気にどかーんとメーター上がっちゃう気持ちに
日々、おどらされていたような気もします。

男子は突然背が伸びることもあるから、
同窓会で会ってももしかしたらわからないかも。
あるいはとんでもなくおっさんに
なってることもあるし。
(瑞記)さん、その後どうだったか、
ぜひ教えてください!!

わかるー。
なぜか、親近感をおぼえる人って
いるんですよね。
「親近感」✕「信頼感」+「容姿が好み」
が、けっこういい恋愛のはじまりな気がする。
若さゆえ、それに気づかずにゆきすぎちゃうのは
くやしいですね。

同窓会での再会はどういう展開を迎えるのかな。
人間はもしかしたら、40歳をこえたあたりで、
動物としてのワイルド成分がくわわって
「彼はライオンだったんだ」
「この人はあざらし‥‥」
というように、
なにかがあらわになっていく気がする。
それが、ドキドキとはまた別の意味で
いとおしいんですけれどもね。
年をとっても、きっと気が合うのは同じだと思う。
また、なかよくできたらいいですね!

「あれが中一ではなく高1の時だったら、
 絶対好きになってただろう」
っていうのは、いいですねー。
たしかに、恋愛のステージにおいて
中一と高一は、ぜんぜん違う。
もう、果てしなく違う。

恋における二人の関係は
「いつ出会うか」というのが
ほんとうに重要なのかもしれませんね。
あれがお互い社会人だったら、とか、
学生のころなら、とか、
あのときじゃなくいまなら、とか、
言い出すときりがないけれど、
「お互いに好き」だけじゃ進まないのが
恋愛というものなのかもしれない。

恋愛以前の甘酸っぱさと
いままで残っている思い出と、
そして、そこに鳴っている恋歌と。
まさに「恋歌くちずさみ委員会」における
見本のような投稿でした。
どうもありがとうございました。

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2013-10-23-WED

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