『ROCKIN' MY HEART』
 矢沢永吉

 
1982年(昭和57年)

私は大人のふりを
していただけで、
彼は正直なだけだったのかも。。
  (MM)

歌詞ではなく、このポスターが
彼の部屋に飾られていました。


彼とは高校1年生の16歳から
21歳までつきあっていました。
当時の私は高校性からコムデギャルソンとか
最先端のファッションに憧れを抱き、
東京をめざして精一杯頑張っていました。
彼は高校生からパンクバンドをしていて、
ファッションや世間体ばかりの
嘘くさい世の中クソくらえと退廃的な泥臭い考えでした。
最初はそれがかっこいいな〜と思ってたと思う。

でも大人になっていくうち
社会へでていく狭間にゆれはじめ
早く自立して最先端の世界へ行きたかった私は、
感情的にならないスマートな考えを大人とし、
ビッグマウスな彼のことが
どんどん理解できなくなっていきました。
それでも彼のことがなかなか突き放せず、
だらだらとつきあっていたと思います。
20歳になってファッション系の専門学生だった私は
その当時の女友達と、
学校を辞めて東京へ行くことを計画します。
そんなこと反対されるのもわかるから、彼にも内緒で。
東京から電話をして、彼とはそのまま結局会わず
一方的に終わらせてしまいました。

その後、他の仕事を経て、結婚もしました。
一時は諦めたファッションの仕事でしたが、
いろんな縁で32歳で地元でお店をはじめることに。
わからないことだらけで日々勉強、
今ではその昔憧れだった
コムデギャルソンなどを扱うお店になりました。
13年がむしゃらに走った反面、派手な世界の表と裏、
悔しいことやつらいことが沢山ありました。

そんな仕事の方向性で悩んでいるある時、
偶然矢沢永吉さんの若かりし頃、80年代の、
世の中に対してもの申すインタビューシーンを見て
衝撃が走ったというか、とても救われたというか、
ああ自分も間違っていないなと勇気をもらえたんです。
でもそれより驚いたのが、
大昔、私が突き放してしまった彼が
話していた内容も雰囲気も似ていて衝撃でした。

わずかな記憶をたどると彼の西日があたる部屋には、
パンクバンドのほかに、
この矢沢永吉「ROCKIN' MY HEART」の
ポスターが貼ってありました。
(インタビューもこの時代の頃のものみたいでした)
車の中でたまに永ちゃんもきいてたと思います。
考え方とかも好きだったんでしょうね、きっと。

でも当時の私は、まったく受け付けず
逆の方向を向いてました‥‥。
私は大人のふりをしていただけで
彼は永ちゃんみたいに正直なだけだったのかも。
突然消えてごめんなさい。
人として酷いことをしてしまったと思います。
今の彼の消息はまったくわからないのですが、
どうかハッピーでいて欲しいなと思います。

それからこのポスターとこの曲、
当時の永ちゃんの曲を聞くと
彼のことを思い出し切なくなります。
時代や年齢を重ねてずいぶん周り道したけど
人ってそうそう好きな人の原点は変わらないんですね。

(MM)

矢沢永吉という人の音楽や行き方が、
自分の人生にはっきり影響しているという人、
けっこう、多いんですよねぇ。

うちのボスが矢沢さんと
古くからの知り合いということもあって、
ご本人のいる場に居合わせることがあるんですが、
ほんと、惹きつける力がすごいんです。
場に居る全員がポーンと持ってかれちゃう。

そして、投稿を読みながら、
しみじみと思ったのですが、
矢沢永吉さんご本人も、
ほんとうに「正直な人」なのです。
だからこそ、多くの人に影響するのでしょうね。

壁にポスターって、よく貼りましたよね。
昔はアルバムを予約したり買ったりすると、
レコード屋でポスターがもらえる
っていうパターンが多かった。

コム デ ギャルソン的なものと
矢沢永吉的なものは
どうにも相性がよくないと
個人的には思っていたのですが、
うちのボスは両方好きです。
ぼくは高校生のときから憧れたクチで
(コム デ ギャルソンに、です)
年をとるにつれてより好きになり、
いっぽう縁あって矢沢永吉コンサートに行き
同じく苦手だった野球場で
野球を観たりもできるようにはなりましたが
積極的に好きはなったわけではありません。
ただ、ほんとうにすごいものにたいして
「すげえなあ」という理解は
できるようになって、それはよかった。
「まあそれはそれとして」
という感じで納得できるようになることが
年を重ねるとだんだん増えるみたいですね。
逆に「許せん」と思うことも増えたりして。

恋愛において
人として酷いことをしたという経験は
ぼくにもあります。
ほんとうに酷いことをしました。
考えられない。
いまでも思い出すと胸がいたみますが
「若かったからなあ」とも(正直)思います。
いまさらどうしようもないです。
もう会えないし会うつもりもないし。
こうして時折思い出しては
「いてててて」と感じることが
せめてもの罪滅ぼしになってるといいなと思います。

ポスター、貼ったなぁ〜。
ものすごく貼りました。
あこがれのスター、アイドル、スポーツ選手、
そしてビートルズ。映画のポスターも貼りました。

アイドルの女の子のポスターを
はじめて自分の部屋に貼ったときには、
「よおし!」と気合いを入れたことをおぼえています。
親が見ますからね。
ある意味それは、カミングアウトでもあるわけです。
親に何か言われるかもしれないけれど、
「言われてもいいから貼るっ!」
‥‥あれはひとつの、青春のブレイクスルーだったなぁ。

恋愛において、
相手に理不尽なことをしてしまったことがあります。
自分がされたこともあります。
恋愛の理不尽は、辛い。厳しい。
でも、理不尽なほうが親切なのかもしれません。
相手に期待をさせたまま長引かせたりするよりは。

永ちゃん好きの彼のことですから、
(MM)さんが急にいなくなっちゃって
それはそれは悲しんだことでしょう。
でもちゃんと、ナイスな思い出に変えていると思います。
永ちゃん好きの彼のことですから。
あとは、そう‥‥ハッピーでいてほしいですね。
「みんな元気かな、ハッピーでいるかなぁ」
というのは、最近ぼくも思う頻度が増えてきました。

このレコードジャケットの人‥‥これ、永ちゃん?
すごっ、かっこいいぃぃぃっっ。
この歌、出だしがアカペラみたいな感じで
なにかのCMで流れていた気がする。
当時中学の私も、しびれる楽曲でした。
いまさらですみませんが、聴き返してみると
「時間よ止まれ」も「I LOVE YOU, OK」も
すっごいいい歌。
矢沢永吉さんは、キャラクターのインパクトが
強かったんだけど、自分がこの年になって、
改めて音楽性に対して感動してしまいます。

そんな矢沢さんと
「話していた内容も雰囲気も似ていて衝撃」な彼。
さぞや、かっこよい人なのでありましょう。

男の人というものは、だいたい子どもっぽく見えるし
カッコつけたりしているせいもあって
「女が男子離れ」する時期が
あるような気がするんです。
つきあってらんないわ、もー、みたいなカンジ?
(逆もあるんでしょうけども)

でも、ぐるっと一周まわって
彼らは結局、いっしょうけんめい
ほんとうのことを言っているだけだった、と
気づくときがある気がします。

男を毛嫌いしていてはだめだわ、と思うこと、
正直言って、いまもございます。
ときどきは女どうしでリラックスしたいのですが、
男の人のバカな力があるからこそ、
社会が動くともいえる。
来週も、恋歌、くちずさんでまいりましょう。
みなさま、よい週末を!

2013-11-16-SAT

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