『チェリー』
 スピッツ

 
1996年(平成8年)

とりあえずチェリーは
先輩の曲
ってことにしました。
  (こたあゆ)

君を忘れない
曲がりくねった道を行く


高校に入学してすぐ1個上の先輩に告白され、
付き合い始めました。
先輩はとにかく目立ちたがり屋で
校内で知らない人はいないくらい。
学校でベタベタしてたわけじゃないけど、
隠してるわけでもなく、
先輩の彼女というだけで先生も全校生徒が知っている。
ワタシが知らない人もワタシのことを知ってる。
ちょっとした有名人。そんな状態でした。

行きも帰りもいっしょ。
帰りに先輩の家に行って、帰りは必ず送ってくれて、
なおかつなぜか毎日手紙のやりとりまでして。
先輩のクラスの時間割を入手して、
移動教室で通る廊下に行ったり、
そのすれ違い様に手紙を交換したり。
先輩との思い出はワタシの青春そのものでした。
でも先輩が卒業する2週間前に些細なことでケンカし、
仲直りできないまま自然消滅。

でも最近FBで先輩と繋がって、
連絡をとるようになった日のこと。
「今、スピッツのチェリーがテレビで流れてるよ、懐かしいね」
「今日車乗ってたら、ラジオからチェリーが流れてきたよ」
とチェリーを聞くたびに
その報告のメールがくるようになりました。

でもワタシ、先輩とチェリーを聴いた思い出がないんです。
たしかに高校時代流行ってたけど、先輩と聴いた覚えもない。
あまりに熱心にメールくれるので、
「そうだね」と話あわせました。
思い入れはないけど、
とりあえずチェリーは先輩の曲ってことにしました。

だけど先輩のおかげで、
ワタシは知らなかったけどワタシを知ってた
1個下の後輩君と結婚しました。
あざっす!

(こたあゆ)

な、なんじゃこりゃ?!
あ、失礼しました。
‥‥でもやっぱり、なんじゃこりゃ?!
たいへんおもしろい投稿です。

前半は甘ずっぱい系のお話で、いいなぁと読んでいました。
卒業とともにお別れして、久しぶりにFacebookで再会、
という展開もふむふむと読みました。
さぁ、そこからです、
なんじゃこりゃは、そこからです。
「先輩と一緒に聴いた覚えがない」のに、
「とりあえずチェリーは先輩の曲ってことにしました」って!
‥‥かつてないタイプの「恋歌」、登場?
まあ、でもこれは、
「話を合わせてあげる」というやさしさですよね。

では、そのやさしさで接した彼と、
再会したあとどうなるのか、と思ったら‥‥
「1個下の後輩君と結婚しました」って!!
「先輩のおかげ」って書いてあるけど、
先輩はなにをしたんだろう?
どういうこと? 詳しくきかせて!
などとこっちがあわあわしているうちに
(こたあゆ)さんは「あざっす!」と退場。

うーーーん。
こんなに「なんじゃこりゃ?」な展開なのに、
読後感がモヤモヤしてないのがふしぎです。
最後、カラッとしあわせそうだからかなー。

そりゃあもう
「あざっす!」が気持ちいいからでしょう。

「先輩のおかげ」というのはですね、
先輩とつきあうことで
学校じゅうに自分が知られていたので、
という意味だと思います。
おかげでひそかに思ってくれていた人ができて
その後輩くんとゴールイン!
先輩は、出自不明の「チェリー」で
たのしい思い出にひたっているというのに‥‥。

きっと「チェリー」も、なんかあったのでしょう。
すーぐ、すーぐ、忘れちゃうことが、
女は多いのですが、
それでも、感謝はしています。

あざっす!

いや、何度読んでも、
後半の急展開で笑っちゃうなあ。

天然っぽい、目立ちたがり屋の先輩の
「それ、私じゃないんですけど」な
恋歌の話もおもしろくて。

そしてすべてを吹き飛ばす
「あざっす!」。

しかも、つき合いはじめたじゃなくて、
あっさり結婚までしてるのがいいよね。
いや、狙っては書けないおもしろい投稿、
こちらこそ、あざっす!

わはははは。たしかに
「なんじゃこりゃ」でした。
途中までは
「先輩の彼女」
っていうことばに
すなおにぽーっとしておりました。
同級生が一足先に、
ひとつ上の階段をのぼる。
そんな感じがして、
なんだかいいぞと思って読んでましたよ。

でもまあ、いろいろありますよね、人生。
じつはいま出張先にいます。
外国の人とお話しを
いっぱいしてきたんですけど、
そのかたが自分と同い年でですね、
まあこれがみごとに
「そういう人生もあるんだ‥‥」
の連続でした。
ほんといろいろありますよ。
ふーっ。

ということで次回恋歌は
土曜日の更新でーす。

2013-11-20-WED

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