『歩いて帰ろう』
 斉藤和義

 
1994年(平成6年)

 私たちは、
 フラれて、フって、
 元通りに戻れるほど
 大人ではないから。
  (背伸びの高校生)

誰にも言えないことは
どうすりゃいいの? おしえて


年上女子と、年下男子の恋、
みなさんはできると思いますか?
私は今の自分の年では厳しいと思っています。

私は今年の春、高校一年生に、
彼は中学三年生になりました。
私が中学二年生だったときに
同じ委員会の仲間でした。
それからは、ほとんどメールでしか話していません。
時々、元委員会メンバーの集まりで
三回ほど逢っただけです。
なのに、私は完全に彼を信頼しています。
彼も、そうだと思ってくれていると言えます。
なぜこんなにも仲がよくなれたのか、
自分でも不思議なくらいです。

それなのに、私は彼に恋をしました。
私の、おそらく初めての男友達に。

そして高校生になった今、小さな決断をしました。
気持ちを伝えて彼から離れることです。
私には、彼が「好きなんだ。」と
薦めてくれたこの曲があります。
だから、離れても平気だと信じて
精一杯の気持ちと『さよなら』を言おうと思います。
私たちは、フラれて、フって、
元通りに戻れるほど大人ではないから。

このセリフを恥ずかしいと思った頃、
この恋が『幼かった頃の思い出』に
なっていることを願っています。
(背伸びの高校生)

高校一年生の女の子から。
なんてまっすぐなんだろう。
そして、こういう切実さを、
ぼくらはもう、感じられないんですよね。

「私たちは、フラれて、フって、
 元通りに戻れるほど
 大人ではないから。」
「気持ちを伝えて彼から離れる」

いい加減な理想論や
軽はずみな主人公願望なんて
ひとかけらもない。
高一と中三という、
途方に暮れるような「1学年の差」が、
「両想いになれたら」という
ロマンティックさえ吹き飛ばしてしまう。

その、ひりひりするような切実さが
読んでいると泣けます。

うーん、なんていうか、女の子って大人だなあ。
くるりの名曲『男の子と女の子』を思い出した。

行き場のない気持ちを、
こんな文章に表すことができる、
高一のあなたを尊敬します。

年下の方からの投稿を読むと、
自分が同じ年だった頃のことを
思い浮かべてしまいます。

高校1年生のとき、私は自分を幼いと
自覚できていなかったし、
大人との差が
「1年差を飛び越えることができない自分たち」
というようにはわかっていなかった。
すごいな、と思います。
何度もそのことを考えたのだろうな、と思います。

彼は、『歩いて帰ろう』が好きなのですね。
うちの(ちょうど同じ)中3の息子も、好きなようで、
よく歌っています。
20年ほど前の歌なのですが、最近流行っているのかな?

おとなになったいまでは、
どんな間柄でも恋はできると思えるようになりました。
ほっっっっっっっんとに、どんな間柄でも、です。
それが恋ならば恋です。

でも、中学生や高校生だった頃はどうだったんだろう?
じつはよく覚えていません。
そういうシチュエーションになったことがないから
考えもしなかったのかもしれません。
たぶんアイドルを好きになるとか
スターに憧れるということとは
ぜんぜん違うことなんですよね。
生身の恋って。

それでもなお後半の「決断」の部分は、
べつに「離れる」前提じゃなくていいのにって思う。
別れたいと強く思っているのなら別れればいいけれど、
好きなものどうしが離れなくてはいけない、
ほんとうにほんとうにどうしようもない理由がないなら、
「厳しいと思っています」というのは
あんまり理由にならない気がするんです。

‥‥こんなことを書いてもせんないことなんだけど、
「私たちは、フラれて、フって、
 元通りに戻れるほど大人ではないから。」
ってね、大人も同じだと思うよー。
ごまかしかたが上手になるだけで。

冒頭3行の問いかけに
「それは十分できると思う」
と心の中で答えつつ読みはじめるのですが、
次のブロックですぐに
「ああ、その限りではない」と思い直します。

すごくすごく、仲良くなったんですよね。
深い深い、信頼とともに。
それが恋になるのは当然だと思います。
その恋をできて、よかったですね。
それはかならずいい思い出になります。
この文章を書けている(背伸びの高校生)さんなら、
それはかならずそうなると感じました。

‥‥若い恋ということに対してぼくは、
無条件に「あまずっぱくて、いい!」
などと思いすぎていたのかもしれません。
若い恋の当事者たちは、
「どうすることもできない」
「どうしたらいいかわからない」
身を切るような辛さに陥ることも多いわけで。
振り返れば自分もそうだったのに、わすれていました。

うちの子はいま大学1年。
こういう道を歩いてきてるのかなぁ。

「誰にも言えないことは
 どうすりゃいいの?」
よろしければ、
私たちにメールで聞かせてください。
何かを解決するような
大それたことはできませんが、
しっかり読んで受け止めるだけでしたら
できますので。

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この機会に、ぜひこのコンテンツの本やCDを。

それでは、また。
次は水曜日にお会いしましょう。

2013-11-30-SAT

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