『エイリアンズ』
 キリンジ

 
2000年(平成12年)

「普通」の夫婦と
 違っていてもいい。
  (ナイーヴな嫁)

まるで僕らはエイリアンズ


職場で出会った8才年上の先輩と
2年交際した後に結婚しました。
結婚してすぐに旦那はうつ病と診断されました。
想像してた漫画みたいな甘い結婚生活はなくて、
休職して平日も休日もずっと寝続ける旦那、
私は偏見が怖くて誰にも相談もできず、
多分一生私も付き合うことになるだろうこの病気を前に、
結婚して1年はどれだけ泣いたか分かりません。
その度に旦那には、
「迷惑かけて本当にごめんね」と言わせてしまいました。
週末に一緒に近所のスーパーに
買い物に行くことすらもできず、
この結婚はよかったんだろうかという思いが
何回もよぎりました。
辛い時は元彼に連絡をとることを何度も想像しました。
でもそうしたら多分歯止めがきかなくなりそうで、
できませんでした。

この曲は新婚旅行の帰り、
空港から家までの車の中でラジオから流れてきました。
まるで僕らはエイリアンズ。
仕事の帰り道、空を見上げながらこの曲を何度も聞きました。
「普通」の夫婦と違っていてもいい。
他人の目や評価を気にしてばかりの自分が
そう思えるようになるには随分時間がかかりました。

でも、出かけられる時はいつも
優しく手をつないでくれる旦那と
ずっと一緒にいると改めて誓いました。
あれから5年、
私も旦那も一緒にいる時は笑顔が多くなりました。
旦那の病気は良い方向に向かっており、仕事も復帰、
近所のスーパーにも行けるようになりました。
これからも辛いことは沢山あると思いますが、
二人で「楽しいことは二倍に、辛いことは半分こ」
で生きていきます。

(ナイーヴな嫁)

すこしずつすこしずつ、上向きに。
ちょっとずつちょっとずつ、明るく。
そうやって積み上げてきた毎日のなかで、
ふとこぼれる旦那様の笑顔。
そのうれしさ、かけがえのなさは、
当事者にしかわからない大きなものなのでしょう。

「近所のスーパーにも行けるようになりました。」
この一行を読んだところで、
こみあげていたものがあふれます。

月並みな言い方ですが、
「前向き」であることの力強さを
このやわらかな投稿文からあらためて教えてもらいました。
(ナイーヴな嫁)さん、ありがとう。
キリンジ、気持ちのいい音楽ですよね。
仕事のときによく再生するアーティストのひとつです。

ぼくもときどき「ふつうっていいなあ」って
逃げるみたいに言いたくなることがあります。
でも、ふつうってあんがい、
ないものなんじゃないかなあって、
自分のことも、たとえば自分の親のことも、
まわりの友人カップルのことも、
いろいろと見ていて、思うのです。
人の数の組み合わせだけ、
「ふたりのありよう」はあるという気がします。

だんなさんに笑顔をつくってあげられたのは、
きっと(ナイーヴな嫁)さんですよ。
元彼に連絡をとらなくてよかった!

小さなことから、大きなことまで、
なにかを乗り越える人たちがいて、
そういう人に触れるたびに、
いつでも感心したり尊敬したりするのですが、
「乗り越える」よりもまえに
「受け入れる」があるように思います。
その意味では、「乗り越える」と「受け入れる」は
同義というか、溶けちゃってるかもしれない。
「受け入れる」瞬間に「乗り越える」が
はじまっている、みたいなことかな。

いただいた投稿を読んで、
やはり感心し、尊敬しました。
そして、ぼくも見習おう。
「乗り越える」ことに途方に暮れるより、
「受け入れる」気持ちを保てるように。

で、最後に、とってつけるけれど、
こういう投稿や感想が、
「恋歌」を軸に交わされるっていうのが
いいところだよね。

私はときどき
「世の中にひとりぼっちだな」と思うことも
「どうしてこんなことになったんだろう」と思うことも
あります。
しかし「そんな人たちだらけなんだ」と
いつも思うようにしています。

「普通」と違っていてもいい、という言葉で、
どれほど救われてきたかわかりません。

自分がどうしたいか、ということに
どう責任を取ってどう納得していくのか。
それしかないのだと思います。
(しのぐ、という知恵もありますが、それも
「自分のしたいこと」のほうを向いているといえます)

救いなのは、旦那さまが
笑顔でいてくれること。
しんどいときももちろんあるでしょうけれども、
笑顔を向けたいと思ってくれる気持ちがある。
そこにあたたかな前進を感じます。
誰かが笑顔でいてくれたら、やっていけると私は思う。

ほんとうにすてきな投稿を、
ありがとうございました。

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それではまた、土曜日に。

2013-12-04-WED

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