『秋桜』
 山口百恵

 
1977年(昭和52年)

もう私は前を
向いているのでしょう。
ただ、母に、言い出せません。
 (こめ)

明日嫁ぐ私に 苦労はしても
笑い話に時が変えるよ
心配いらないと笑った


離婚することになりました。
夫が、5年以上ひとりの女性と
お付き合いを続けていることが原因です。

私が知ってから5年間、
遠回りしたけれど、やっと決心がつきました。
もう私たちは元に戻れない、と理解したので。

10年間恋人で、14年間夫婦でした。
この24年間に後悔はありません。

自分だけの稼ぎで食べていかなくちゃならないから、
理不尽なことがあるたびに、
「いつでもやめてやる」と
心の中で啖呵を切っていた仕事も
もうやめられなくなっちゃうなぁ。
そんなことが思い浮かぶのだから、
もう私は前を向いているのでしょう。

ただ、母に、言い出せません。

離婚することになったよ。
引っ越しもするよ。実家には帰らないよ。
四十過ぎて、ひとりで何もかも切り盛りする
初めての生活の負担を少しでもかるくするため、
職場の近くに住むことにするよ。

苦しんだりもしたけれど、私はもう大丈夫。
心配かけてごめんね。

‥‥泣かれるんだろうなぁ。

ごめんね。

(こめ)

これまで、たくさんの投稿に泣かされてきましたが、
こんなふうに泣けたことはありませんでした。
強い決断をようやくくだした、
すでに前を向いている女性が、
ごめんね、と言う相手が、お母さんなんですね。

なんというか、
お母さんという存在の大きさをあらためて知って、
いろんなことに泣けてしまいます。

もう、十分に、現実の日々を
切り拓いてらっしゃると思いますが、
わかっていてもつい、エールをおくりたくなります。
毎日、どうぞ、がんばって。
きれいな投稿をどうもありがとうございました。

音楽って不思議なもので、
歌詞の世界とぴったりリンクしなくても、
気持ちが強く投影できることがありますよね。
(こめ)さんのように、
「ただ、母に、言い出せません。」という気持ちが
「秋桜」とつよく響いちゃうことも。
原曲の「秋桜」は、嫁いでゆく娘の、
年老いた母との大切な時間を歌ったもの。
あの母娘のように、
(こめ)さんのお母さんも、
(こめ)さんの選んだ道を、
きっと応援してくれるんじゃないかなって
ぼくはそう思います。
根拠はないけど、
お母さんってそういうものだと、
ぼくは思いたいのでしょう。

うん、私も
お母さんはわかってくれていると思います。
娘さんがどういう子だったか、
とてもよく知っていて、
がまんしたことも、決心したことも、
後悔がないことも
知ってるんじゃないかなぁと思います。

でもね、
親にだけは言えないなぁ、
悲しむだろうなぁ、ってこと、あります。
結局わかってくれるだろうと思っていても、
やっぱりいつまでも安心してほしいと思っちゃうのが
「子どもである私たち」ですよね。

いつか両親と、ぱかっと心を割って
話せたらいいのになぁ。
そんな照れくさいこと、できないか。


ぼくもそう思います。
たくさんの悩みや迷いや怒りなどと向き合って、
何通りもの考えをめぐらして(こめ)さんが選んだ道を
お母さんはきっと
肯定的に受けとめてくれるのではないかと。
そんなふうに思いたいです。
(こめ)さんがお母さんに話すときは、
「心配かけてごめんね」ということばといっしょに
それは伝えられるはずなわけで‥‥。
おかあさん、泣いちゃうかもしれないけど、
娘からのその気遣いはきっとうれしいと思います。

いい投稿でした。
ちからになります。
(こめ)さんがんばってください。
ぼくらももろもろがんばります。あかるくがんばります。
ありがとうございました。

今回はこのあたりで。
次は水曜日にお会いしましょう。

この投稿のメールの冒頭に
本文とは別に、このような書き添えがありました。

「突然の別れでしたが、
 当時の楽しい日々はこの歌を聴くと
 今でも思い出されます」

玉置浩二さんの『メロディー』、聴いてみました。
やぁ、涙が出ます。

この回で書いた、高校の先生のことを
思い出しました。
とつぜん引き裂かれたら、
しかも引き裂いた相手が何かわからなかったら、
どこに気持ちを訴えればよいかもわからなくて
途方に暮れると思います。

そうですよね、原因がわからない。
映画やドラマだったら、
彼女がいったいどうなったのか、
何が理由だったのか、
いまどうしているのか、
どんな気持ちでいるのか、
丁寧に描かれるところなのでしょうね。
でも現実はなにひとつ教えてくれない。
わからないから自分を責めるわけにもいかないし、
といってなにかに当ることもできない。
ただただ、つらいのだと思います。

そんななかで、この曲を聞くと
幸せな時間を思いだすことができる、
ということが、読んでるぼくにも救いでした。
音楽ってすごいなあ。ほんとにすごいなあ。

ああ、ドラマみたいだけど、
つくづく、現実の恋なのだなぁ、と思いました。
ドラマや映画なら、
彼女がいなくなる理由は
明確じゃないにしても、
かならず暗示されますものね。

わからないんだなぁ、
いなくなった理由は。

その終わりを理不尽と憤るのではなく、
静かに静かに受け止めてらっしゃることが
とても印象的でした。


 ♪メロディ〜〜 泣きながら〜〜〜〜〜

ぐぐぐぐーーーっと琴線に触れてくる艶やかな歌声。
しみいります。
玉置浩二さんは「切ない方面」のスペシャリストだと
ぼくは勝手に思っています。
切ない名曲がいっぱいですよ。激しいのもバラードも。

繰り返しの感想になりますが、
理由がわからない恋の終わり‥‥つらいですよね。
理由を知ったところでどうにもならないにしても、
やっぱり知りたいです、「なぜ」なのかを‥‥。

「うれしい」と言って満面の笑みをうかべていました。

この一行に、じんとしました。
人生はすばらしいと言える一行。
悲しい投稿ですが、その中にこの笑顔があったから、
「その恋をしてよかったですね!」
って言ってもいいのだと思いました。

スガノさんの先生の話も
あらためて読んでいいなぁ、と。
本当のことをちゃんと言える人ってかっこいいですね。

しかしまあ、名作投稿が次々と‥‥。
みなさんすばらしい。
発売から時間が経ちましたが本とCDもよろしければ。
何度読んでも、何度聴いても、いいですよ〜。
ではでは、次は土曜日に〜〜〜。

2014-02-08-SAT

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