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 『One more time,
 One more chance 』
 山崎まさよし

 
1997年(平成9年)

彼からの返信が
ぴたりと来なくなりました。
(臨月のママ)

いつでも捜しているよ どっかに君の姿を
交差点でも 夢の中でも
こんなとこにいるはずもないのに


10代最後の恋でした。

高校時代からの友達で、
当時は何とも思っていなかった彼を好きになったのは、
短大に進学してからです。
彼は地元に残り、私は都会に出て。
長い休みになると帰省しては、
友達グループで集まるうちに
だんだん惹かれていきました。

休みが終わって学校に戻ってからも、
毎日メールのやりとりをしていました。
内容は日常のたわいないことでしたが、
1字1文ドキドキしながら
メールを打ったり読んだりしてしました。
少し口の悪いシャイで優しい彼に、
メール越しに励まされたり笑わされたり。
遠距離片思いはゆっくり深くなっていきました。
帰省して会うたびに、
高校時代に気づかなかった素敵なところを
たくさん見つけました。

そんな遠距離片思い生活を始めて
8ヶ月ほど経ったころ、
用事のため帰省することになりました。
そろそろ、「好き」だと言おうとも思っていました。

しかし帰省する1週間前、
ぴたりとメールの返信が来なくなりました。
いつも朝起きると届いていた返信が
届いていませんでした。
夜中に突然体がビクリとして
目が覚めたのを思い出しました。

夕方、地元の友達からの連絡で、
彼が夜中に他界したのを知りました。
心臓発作だったそうです。
お通夜もお葬式も出席しました。
亡くなって初めて「好き」だと言えました。

それ以来、誰とも恋に落ちることはなく
淡々と日々を過ごし、就職し
仕事にのめり込む生活でした。
彼のことが忘れられず、
気付いたらその辺に彼がいないか探していました。
でも、彼は夢にすら
1度も現れてはくれませんでした。

そんな生活を7年ほどしていた2年前、
一人の男性と知り合いました。
とても素敵な人でした。
好きになるかもしれない、と思いました。

そしてある夜、初めて亡くなった彼が夢に現れました。
笑って一言「もう大丈夫だよ」と言っていました。

やっと次の、そして人生最後の恋を
始めることができました。

(臨月のママ)

うぅへぇええ、だめじゃあ。
目から何かが流れるよ。

気付いたら彼をさがしている、
でも、夢に出てきてくれない。
出てきたのは、自分を応援してくれる彼だった。

うぅへぇえ。

ハンドルネームで、わっと
こころがあったかくなっております。

夏で、お盆ですので、私は最近亡くなった友人のことを
ちょこちょこ思い出します。
これまではその人のことをしのび
心配したりしていましたが、
そんなことはないのかもしれない、
もう大丈夫だよ、それよりそっちがしっかりしろよ、
と言ってくれるような気が、最近しています。

ぼくも、夏はとくに、
会えないともだちのことを考えます。
わりといつも考えているんだけれど、
ひとりは亡くなったのがまさしく夏の終わりで、
だからかな、夏の夕暮れはいつもせつないです。
夢に出てきたら、突然いなくなっちゃったこと、
「なんでだよー!」と文句を言いたいんだけど、
なかなか出てこないんですよね。まったくもう。

失恋を歌った歌って、
人を亡くしたときの気持ちと
ぴったりだったりします。
『One more time, One more chance 』を
そんなふうに聞いたことがなかったので
こんどあらためてひとりで、
聞き直してみようと思いました。

とうとつですが、ひとつのイメージを書きます。

 亡くなった人は、暑くもなく寒くもない穏やかな気候の下、
 丘のような場所で静かに目を閉じて眠っている。
 (そこは天国というところなのかもしれない)
 この世で生きている人が、
 亡くなった人のことをふと思い出す。
 すると、思い出された人はパチリと目を覚ます。
 生きている人が思い出しているあいだだけ、
 亡くなった人はその穏やかな場所を散歩したり、
 美しい景色をながめたりすることができるのだ。

たしか、何かの小説でずいぶん前に読んだものです。
なんという本なのかも忘れてしまったので、
ディテールは自分でかなり作り変えていると思います。
(それとも本じゃなくて夢で見たのかな?
 曖昧なんです)

思い出す。
どこかでその人がパチリと目を覚ます。
むっくり起きあがる。
これを考えるのは、なんだかたのしい。
いつもこのイメージで、
ぼくは去っていった人たちを思い出しています。

そうですね‥‥お盆がやってくるからかな。
今回は妙なことを書いてしまいました。

彼は、夢に出てきてくれて、
生きていくあなたを
お祝いしてくれたんでしょう。
そういうことは、あるんだよ、
と言いたいです。

ぼくもついでに妙なことを書きます。
若いころ、ぼくの悪夢のパターンというのは
「部屋にひとりでいると、
 『なにか』がこの部屋に
 間もなくやってくることがわかる。
 『なにか』はなんだかわからない。
 ぼくは恐ろしいので、
 部屋から出ようと思うが、
 出るときに鉢合わせになるのも怖くて、
 出ようか留まろうか迷い続ける」
というものだったんです。
しばしば、この手の夢を見ました。

ところが、結婚して家族ができたら、
この夢を見なくなったんです。
ある日、夢のなかで、
どうしてその夢を見なくなったかわかりました。
自分がいる部屋に家族がいたので、
「ひとりの部屋に『なにか』が来る」
ということが、成り立たなくなったのです。

なんというか、夢がちゃんと
なにかを表すというのは、
ほんとうに、あるんだと思う。

投稿のちからに引っ張られて、
妙なことを書きました。
送ってくださって、どうもありがとうございます。

2014-08-09-SAT

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