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 『おだやかな暮らし』
 クラムボン

 
2006年(平成18年)
 アルバム『LOVER ALBUM』収録曲

彼では、だめなのです。
私たちは、
とても似ているから。
(ユキ)

欲しいものは
おだやかな暮らし
あたりまえの
太い根をはやし
好きな人の
てのひらがすぐそこにある
そんな毎日


ほぼにちは。私の恋のお話を、聞いてくださいませんか。

彼は、職場の同期です。
ハンサムで人当たりのいい、人気者の彼が
しきりに話しかけてきた時に感じたのは、
「うれしさ」ではなく、「こわさ」でした。

私には、彼が小さな子どものように見えます。
それは、彼の小さな頃の辛かった話を聞いたからでしょうし、
私が彼に惹かれているからでもあると思います。

一晩中話していた夜、
いつも飄々としている彼が涙を見せました。
深い傷跡を見た時に、
もう傷ついて欲しくないと心から思いました。
私が、守ることが出来たらと。

だけど、私には夢があります。
家族が欲しい。
なんでもない毎日を、
大切な人とよりそって、おだやかに暮らしたい。
虐待を受けて育った私には、
それは一生かけても叶えたい、大切な夢です。

彼では、だめなのです。
私たちは、とても似ているから。
傷を持ったもの同士では、
いつか暗いところへひっぱられてしまう。

今週末、彼ではない男の人と初めて二人で会います。
あたたかくて、おだやかなひとです。
その人といると、なにも怖くないような気持ちになります。

彼といる時は苦しくて、怖いです。それでも。

時間をかけて、想いに、砂をかけていこうと思います。

(ユキ)

おおはた雄一さんのナンバーを、
クラムボンがカバーした一曲です。
いい曲ですね。いい曲。

(ユキ)さんというかたが送ってくださった、
これは「決心」の投稿なのかなと思いました。
(ユキ)さんは、考えて、悩んで、
自分の夢を叶える道を選ぶことを決めた。
それは、とても立派な決心だと、
他人のぼくが申し上げるのも妙ですが、
そんなふうに感じました。

彼が涙を見せながら
(ユキ)さんにたくさん話した時点で、
もう、その彼はずいぶん救われていたのではないかと、
これについても勝手にそう思います。

「想いに砂をかける」ということばが印象的です。
さっと水に流せるような、
そういう思い出ではないのですね。

しっかりつかまえないと掌からすりぬけてしまう。
まちがってつかむと、とんでもないことになる。
「そっちに行ってはだめだ」っていうアラームが、
ほかのひとよりも敏感に反応する。
あたりまえ、ということが、
じつはとても手に入りにくいものだということ、
(ユキ)さんのようにではありませんが、
ぼくも、ほんのすこしだけ、わかる気がします。

『おだやかな暮らし』ぼくのiTunesにも入ってた!
(忘れてた。)
このアルバムの一曲目の、矢野顕子さんのカヴァー
『Prayer』もとても好きです。

似ている者同士がいっしょにいて
だんだんつらくなるのは、わかります。
私は自分が繊細というわけじゃないけど、
おそらくそういうことによって、
にぶい人が好きです。

でも、似てる人には
いっしょにいるしかないよ、という
必然的ななにかも感じますよね。

この人をしあわせにしたいという思いは
とてもだいじだけど‥‥私は結局、
自分がここちよいほうがいいのかな、と思います。
(つまり、自分がしあわせになるほう)
あたまで望んでいるものじゃなくて、
感覚で、足のむくほう。
恋は、自分勝手でいいと思います。
それだと、自分のせいにしかならないから。

若い頃の恋愛は、もう、
その瞬間、瞬間がすべてで、
いま、恋しかったりうれしかったり
切なかったりというようなことが、
ぜんぶの気持ちを
動かしていたように思います。

年齢を重ねると、
たとえば、つき合っている人と
実際に長い時間を過ごすようになりますし、
いまよりも先にある「もっと長い時間」が
どうしても視界に入るようになります。

そういうときに、この歌は、この歌声は、
(おおはたさんのオリジナルも、
 原田郁子さんの歌うバージョンも)
心の深いところに、ゆっくりと、
染み込んでくるんですよね。

ほしいものは、おだやかな暮らし。

それは逃げているわけではなく、
ことさら高望みするわけでもなく。

たくさんの投稿をありがとうございます。
すでに投稿の募集は締め切っているのですが
まだまだ素敵な投稿があるので
コンテンツは続いていきます。

2014-09-13-SAT

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