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 『夜明けのレジェンド』
 錦織一清

 
1994年(平成6年)

準備なんかしちゃうと
泣けないもの
なのかもしれません。
(みちこ)

(歌い出しの前に
 うっすら聞こえる
 息を吸う音)


私は錦織一清(以下ニシキ)という人が
30年来大好きでして‥‥。
恋歌世代のみなさんなら、
何となく「少年隊のリーダー」として
ご存知かと思いますが。

つま先や指先まで細やかな神経が
行き届いたしなやかな踊り
(まるでフレッドアステア!)、
憂いを含んだ色っぽい目元、薄い唇、
照れを隠すように早口でしゃべる江戸っ子口調、
少し高めの歌声、くしゃっと笑う笑顔‥‥。

彼も今では若い頃の王子様のような
美貌ではなくなりましたが、
変わらず大好きでいられるほど魅力的です。
  
で、去年の夏、錦織一清演出・主演の
『熱海殺人事件』を見に行きまして、
久しぶりに心はニシキ一色!
そこで、私は昔ニシキのソロ曲を中心に
CDでMy Bestを作ったことを思い出しました。

そのCDを聞き直してみると、
1995年から2000年までの錦織一清、
および少年隊の歌が入っておりました。
うっとりと聞きながらふと思ったのが、
「私、なんでこのCD、
 作ろうと思ったんだっけ?」
  
「CDでベストを作れるってわかって、
 やってみたくなったんだっけ?」
「でも、そうだとしたら
 なんでこの中途半端な5年間なんだ?」
「この5年‥‥」
「この頃のPLAYZONE
(少年隊のオリジナルミュージカル)、
 泣ける作品が多かったなぁ」
「若い頃、『夜明けのレジェンド』
 聞いても泣いたわねぇ‥‥」

「!!!」

「泣くために作ったんだ!!!」

2000年、私は初めて転勤を経験し
(教員なので転勤族です)、
転勤した先で初めて一目惚れをしました。
向かいの席に座っていた先生
(しかも、初めて年下を好きになりました)。
ちょっと垂れた目がニシキに似てた気がします。

ちょこちょこアタックしているうちに仲良くなって、
家に帰ってからもメールのやりとりをしたり
休みの日に2人で出かけたりするようになりました。

「あら、うまくいっちゃう?」
なんて思い始めたある日、
彼が携帯の着信音を一生懸命入力していました
(自分で入力してましたよね、昔は)。
その曲は浜崎あゆみ。そのちょっと前に、
「いつも行ってる美容院に、
 浜崎あゆみに似てる子が受付にいたんすよぉ」
なんて話をしていました。

「これは、私、振られるぞ」
そう思った私は、その日が来たら思い存分泣くために、
ニシキの吐息を感じる『夜明けのレジェンド』を
1曲目にしたCDを作りました。

そしてCDが完成した後、
「彼女できた?」とだけメールしました。
返事は「なんでわかったんですか?」

さぁ、CDの出番です。
ラジカセにヘッドホンをつないで、
ベッドの上で体育座り。
でも、なぜか意外と泣けなかった記憶があります。
準備なんかしちゃうと泣けないものなのかもしれません。

今でも旦那(ニシキとの共通点は薄い唇‥‥だけ)と
けんかをしたり冷たくされてさみしくなったりすると、
このCDをカーステレオで大音量にして聞いています。

しかし、果たして恋歌なのだろうか?

(みちこ)

途中からの急展開に
どんどん引き込まれてしまいました。
こんなことを言うと失礼かもしれませんけど、
いやぁ、おもしろい投稿だなぁ。

「泣くための準備」というと
ちょっと風変わりな印象がありますけど、
「感動しているときに
 ジャマされないようにする」
と言い換えると、自分にも心当たりがあります。

個人的には、いいRPGを終える瞬間とかに、
誰にも、何にも、ジャマされないように
いろいろ準備したなぁ。

あ、失恋と遊びをいっしょにして
語っちゃって、すみません。
でも、「こころの話」としては、
通じているような気がしたのです。

いやほんと笑ったらわるいんですが
おもしろくておもしろくて。
そもそも、

(歌い出しの前に
 うっすら聞こえる
 息を吸う音)

が、恋歌ポイントというところから好きです。
そして展開の期待にたがわぬおもしろさ。
少年隊、フレッドアステア、熱海殺人事件、
というキーワード、
そして「ベスト盤をつくる」っていう行動。
(ぼくのときはカセットテープ〜せいぜいMD)

あと、恋の舞台が学校の職員室、
っていうのもいいな。
先生もにんげんだもの。

ところで「熱海殺人事件」は
なんとことしの公演では
ニシキが演出をしているんですね!
なんだかすごいなあ。

その自分編集CDはきっと、
(みちこ)さんにとって
悲しみの感情を増幅するものではないのですよね。
しみじみ泣きたくて編集したはずなのに泣けないのは、
錦織一清さんという、きらめく存在が
悲しみのためにあるのではないからだと思います。
「ニシキが大好き!」
という気持ちが、
なんと実生活の恋愛を超える勢いで、
投稿文に込められていますよ(笑)。いいなぁ。
だから、
悲しいとき、さみしいときに聴くと、
そのCDは回復の役割りを果たすのかもしれない。
泣くんじゃなくて、元気になっちゃう。

明るい投稿をありがとうございました。
きっといまの幸せがあるから、
失恋の記憶もたのしく振り返ることができるんですよね。
旦那さまと、仲良く、お幸せに!

「泣くために作ったんだ!!!」
というくだり、自分も忘れていたという現実、
とても好きです。
たーしーかーに、
用意しちゃうことってありますよね。

中2のとき私は
「◯◯さんがあなたのことを好きらしい」
と、友人の恋の仲を取り持つ役をさせられたのですが、
あえなく敗退。その友人が電話をしてきて
「ふられるってなんとなくわかってたんだよね。
 いっしょに聞こうと思って用意してた歌がある」
と、受話器を通してテープで流したのが
薬師丸ひろ子さんの
『元気を出して』(竹内まりやさん作詞作曲)でした。
1番はでしんみり聞いてたんですが
2番から可笑しくなっちゃって、
ふたりで「何やってんだろ」と
吹き出したことがあります。

中3になって、ひそかに気になっていた人を
友だちも同時に好きで、
またまた取り持ち役をさせられて、
とても落ち込んで学校から帰り、部屋に飛び込んで
用意していた曲
『私のなかの私』(イルカさん作詞作曲)を
制服も脱がないままギターをかき鳴らして歌い
(自分に嘘はつけないという歌詞)
ぜんぜん泣けず、大笑いしてしまった記憶があります。

その後、長じてからもですね、何かあれば
髪切ったり酒飲んだりやけ食いしたり
いろいろやりました。なぐさめられたりもします。
でも、泣けないです。
型通りに演じたら、おかしくなっちゃう。
人はうまく泣けないものだし、
悲しみというのは、じわわーんと、先にあとに、
不思議な形でやってくるものなのかもしれません。
唇がニシキそっくりの
旦那さまの胸で泣くのがいちばんですね。

「これは、私、振られるぞ」
その予感のぴたりさ加減、
女の勘というのはすごいものですよね。
それではまた、土曜日の恋歌で!

2014-11-05-WED

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